八重桜 5
お口直しにみんなで普通に巻いて食べた。エビ、カニ、キュウリ、玉子焼きに紅ショウガ、わさび少し。醤油を少しつけながらかじる。
幸いにも死傷者はでなかった。ある意味全員大怪我だが。
はー。美味しい。ちなみに撮影した映像は仁の広報に使うというので許可しておいた。サヨリさんの知り合いに見せるらしい。仁の常連になれるお金持ちということだ。
今きてるお客様は珍しいもの見たさが多いからなぁ。一回来たらもう来ない。常連さんが圧迫されるならいらないや。もちろん来たお客様には全力で接客させてもらうけど。
「夕方までお昼寝かな?」
「アカネちゃん、ビール飲もう」
「あれ、そんなにおつまみの袋どうしたの?」
「大谷さんがすごい楽しかったらしくてくれた。あの人あんな笑顔になるんだな」
どんな笑顔だろう。ちょっと見てみたい。そしてこの山のような珍味である。ビールサーバーはなぜかナオコさんについて移動している。光里家鉄壁の構えである。
「おつまみ特集またやらないと」
「どれからいく?」
「チータラ」
「まあアカネは好きそうだな。私はスルメからいく」
「かんぱーい」
「おう、かんぱーい!」
ビールはスタッフが用意してくれた。お金持ちって楽は楽だよね。なにもできなくなりそうだけど。
「そういえば、みんなどこへ?」
「バラバラだな。アイちゃんはコノミとスズちゃんと遊びにいったしアンナは池を見にいった。サヨリは夜の手配とか言ってたな。明日は職場や学校に送っていくとか言ってたからなんか泊まるとこセッティングしてるんだろ」
民宿かな? この辺りホテル無いし。チータラ美味しいなぁ。ビールも。もぐもぐごくごく。
「サラミもーらおっ」
「サラミうめえよな。黒胡椒利かせてるやつが好き。スルメはなかなかなくならないな」
「これはなかなかスパイシー」
ビールが合いますね。もぐもぐ。きゅうっ。ごくごく。花を見ながらのんびり一杯。いいものです。
はあ、しかし見事な花ですね、八重桜は。スカートみたい。幾重にも花びらが重なって八重桜。花の量がすごいですね。
うー……ん、風が気持ちよくて寝てしまいそうです。酢イカ食べよ。もぐもぐ。きゅうっ。
「チビチビいくな」
「夕ごはんで飲むよ」
「寿司か」
「期待していいと思うよ」
「包丁使いはすごいよな」
「目もいいしね」
「へえ。つぶ貝くお」
スズちゃんはしっかり修業してるからね。目利きだって習ってるし、魚の絞め方から寿司に適切な切り方まで覚えてる。もう下地はできている。いつか仁の主力メニューは寿司になる、そんな日が来る気がする。
「さきいかください」
「ほいよ」
もそもそ。きゅっ。こくこく。うん。美味しい。花見はいいなあ。きれいな花を見上げ、青空の深さに胸を打たれる。枝の黒さも明暗がくっきりしていい。下を見れば芝生の緑。鮮やかに光をはねかえし地上の波が巻き起こる。
「カルパス食お」
「分けてー」
「はいよ、これ形が悪いのまとめたお徳用だ。どこで買ってきたんだろう?」
大量に入ってるおせんべいとか多少割れてても気にならないよね。
「あー、お姉ちゃんまたいいもの食べてる!」
「あらま、ナオコさんずるいっすよ。先に飲んでるとか」
「え、私ですか? え、ああ、わかりました、行きますね」
ん? スズちゃんどうした? 電話?
「なんかサヨリさんに呼ばれたので行きます。またあとで合流しましょう」
「ああ、うん、いっておいで」
どうやら夕ごはんのセッティングが整ったらしい。ワクワクしてきた。
「寿司かー、久しぶりだな!」
「そういえばだいたい自分で作るわ」
「チートめ」
「そんなチートあるの?!」
「確かにチートレベルですなぁ」
「ニンジャは?」
「美味しそうな魚釣ってたよ」
アイちゃんなんでも食べようとするのね。あとニンジャで伝わるのね。
「ブラックバスは泥抜き大変だし今の時期はプリスポーンで味は落ちてると思うよ。煮付けはいけるかも?」
「ブラックバスまで調理できるやつがチートじゃないはずがない」
「チートですねえホンマ」
チートちゃうわ。
食べるって面白いんですよね!




