梅の花の咲く頃 5
接客はお店とお客のつながりです。
「それじゃ、コノミちゃんの研修明けを祝って乾杯!」
「かんぱーい!」
仕切りはナオコさんに任せて注文しますか。
「すみませーん、注文お願いしまーす」
「はーい!」
「みんなビールでいい? 生中五つ、刺身大、串盛り、唐揚げ大、天ぷら三種ふたつ」
「はい、ご注文くりかえします、……、以上でよろしいですか?」
「お願いします」
「はい、少々お待ちください!」
さすがにスズちゃんベテラン。まあ自分ちだしね。スズちゃんはたぶんテレポートしてる。
「お前が言うな」
「あんな動きできませんわ」
「うーん、でも特別速くは動いてないですよ。早歩きだしすぐに立ち止まれる速さですから」
「あれでですかー」
「うちもあこがれてます」
「はいお待たせしました生五丁」
「五丁でいいんすか?」
「決まりはないよ?」
「はいこちら突き出しです」
「は、はやっ……」
「スズちゃんもたいがいだよなあ」
「この店はこれが人気ですからね」
「え? 普通の接客ですよ?」
(出たよ無自覚)
(小説の主人公みたいですわね)
(私はいつも脇役でーす!)
(うちもがんばるッス!)
またこそこそと。今日の突き出しは、小さいけどスズキのみりん焼きだ。贅沢な突き出しだなあ。大将にしてみるとついでに作れるってことだけど。うん、小さくてもパリふわだ。ビールビール。……んごくっ、ごくっ、ごくっ、……っ……くうぅー!
「アカネさんは美味しそうに飲むッスねー」
「ししょーは自分が楽しむことには余念がないですよー」
「師匠?」
「ひとパ師匠でーす。今度うちに来るといいですよー」
「??」
「まあ、みりゃわかる」
「見ないとわかりませんわね、ごくごく」
「わからないからな! うんうん、って言ったとかわからないからな!」
「だんだん飲み音会話を極めてきたのでーす」
お、恐ろしい人だぜサヨリさん。ついに伝わってしまった。
「はい、刺身盛り大になります。ほかのメニュー少々お待ちください!」
「唐揚げー、六番」
「あいよー!」
「唐揚げ揚がってきたな。酒を決めとくか。うーん、変わり種はやめとこ、ライムで」
「レモンでお願いします」
「ひいぃっ」
「トラウマか! ほかは」
「私もレモンでーす」
「うちはライムで」
「私もライムでお願いします」
「そういや誰もサワー頼まねえのな」
私もあんまり注文取った記憶がないけど、居酒屋の常連になるような人が今さら弱い酒は頼まないよね。カクテルならわかるけど。
「はい、天ぷら三種盛りふたつです。こちらでよろしいですか? 串盛りは少々お待ちください」
「あ、しまった、各種盛りにするんでした」
「あー、五人だと串盛りはちっと少ないよな」
「いくらでも頼めばいいですよ」
「お財布にして申し訳ないでーす」
「おお、この方が噂の神様仏様サヨリ様!」
「やめてください?」
なんか彼女の中ではサヨリさんはもう成仏してそうである。さて、どんどん飲もう。
これは仕方のないことだけど、氷が入ってる分サワーや酎ハイはすぐに空いてしまう。やはり家飲みをしたくなるんだよね。
「またうちで集まりますか」
「当然?」
「貯金してるお酒をおろしに行きますわ」
「飲んだやつは返せませんよ?!」
「そんな野暮なことはいいませんわ」
「サーバー四台も送るとかすごすぎるでーす」
「は? サーバー四台も? うちもついに幻覚が?」
「事実なんだなあ……」
札束ではるどころか潰れるまで札束を流し込まれそう。
そうだ、やることがあるんだった。
「ほら、刺身、焼き鳥、唐揚げ、全部食べてみて」
「は、はい。……うまっ!!」
「自分がなにをする者か、は知っておいた方がいい。これをこころよくテーブルにお伝えするのが私たちの仕事だよ」
「う、刺身も、焼き鳥もうまい。天ぷらも唐揚げも」
「飲め、そこだ!」
「飲まなければここにいる意味はありません!」
「う、うおお、ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、っっ……ぷっはあー!! このために生きてる!」
居酒屋としてはそれが正解だよ、コノミちゃん。
「んでんで、ここだけの話時給いくらになったんだ?」
「え、え、いやあ。ここだけの話ッスよ? ……1000円ッス」
「? 多いのかそれは」
「微妙ですわね。いきなり1100円もおかしいですけど」
「スキルとしてはスズさんのはるか下ッスからね……むしろもらいすぎな気がします」
「アカネ基準が変だからな? こいつは戦士だから」
「そうねえ。むしろ適正なのかも」
「私も先生やめてここで働きたいですー」
まあお給料のことは私は言えません。1500円にしようか聞かれたとか言えませんね。たくさん入りたいから断りましたが。ぶっちゃけ正社員待遇ですし。
そのあと家飲みの予定を立ててパーティーは終わ……らずに飲み会が閉店まで続いた。
「ブラックカードスラッシュ!」
「やた、タダ飲みやー! ありがとうございますサヨリ様!」
「今度はコンシェルジュを召喚して見せますわ」
「うわっ、めっちゃ会いたい!!」
それは私も見てみたいです。
さて、あとはSSとなっております!




