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ひとパ☆  作者: いかや☆きいろ
接客しよう!
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梅の花の咲く頃 4

 仕事を楽しまないのはただもったいないですね。



「で、どうなんだそいつ、使えそうなのか?」


「まだまだ研修ですよ。だいたい私が何年勤めたと思ってるんです。棚の裏の小瓶の位置まで覚えてるんですよ? 一週間でまねするとか不可能ですから」


「いや、誰もアカネレベルは求めてない」


「無理があるわよねえ」


「ししょーは全面的に天才肌なのでーす」


「あ、あの子か」


「クスッ……なんか強気そうなのにおどおどしてるわ」


「お二人なら明日からアカネさんと働けって言われてもそんな感じでいられますでーす?」


「……私三日目にハゲてると思うわ……」


「……私は胃に穴が空いて即日入院だと思う……」


「そんな話はいいから飲みましょう」


「誰の話をしてるのかと」


「だから積み重ねですって」


 私の場合ここ以外に行くところがなかったから集中してたし、その状態で六年積み上げたんだから、普通と同じだと逆に困る。それにこのお店空間が広くて動きやすくて働きやすい。今からよそに行っても私は同じには動けないですよ。


「そういうもんか。すいませーん」


「はい、あ、アカネさん」


「自分からお客に話しかけない」


「す、すんません、えーとお決まりでしょうか?」


「とりあえずビールでいいよな? 生中四つ、あと刺身の大と串盛り、唐揚げ大、天ぷら三種盛り」


「お、オーダーくりかえします、……。以上でよろしいですか?」


「早めに頼むぜ」


「は、はい。オーダー入ります!」


「あいよー!」


 うん、まだたどたどしいけど手になる。私なら彼女とでも土曜夜シフト行ける。一度荒行で入れてみたいけどお客様に迷惑かかるからな。


「ふふ、リーダーの顔してる」


「え? そんな顔はしてませんが?」


「ライオンとか虎ってよりパンサーかな?」


「スマートな感じですねーです」


 はいはい。あ、カズコさん帰るのかな? お手洗いか。珍しくおしゃべりしてない。壁の置物ーズも新人を観察してる感じか。やめてあげて、めちゃあがるから。私は自分は舞台装置と思ってるけど。コノミちゃんに効きそう。


「お、お待たせしました、生中四つです」


「きれいに注げてるよコノミちゃん」


「っ……ありがとうございます」


「唐揚げと刺身ー。四番」


「あいよー!」


 うん、しっかり接客をするか配膳をするか切りかえられた。そういう細かい機敏さが積み重なって流動的な動きになるんだ。空間把握とかはもっとあとの話だ。まずは入店からオーダーをとるまでをきっちり覚えないとね。


「じゃ、かんぱーい」


「かんぱーい!」


 私たちは飲むだけである。


「お待たせしました、刺身盛り大と唐揚げ大盛です。ほかのメニューはもう少しお待ちください」


「はい」


「……」


「ん? なんかミスしたのかな?」


「見てもらえてるか確認してたのよ」


「は、はずっ」


「ししょーにメロメロですねーあの子」


「あ、レモン酎ハイお願いします」


「ひいぃっ」


「……?(大将?) あ、追加オーダーですね。酎ハイレモンをおひとつ、ほかにはございますか?」


「ライムチューください」


「! あ、はい、酎ハイライムがひとつ」


「私も同じのですー」


「日本酒の葉茶芽茶ってやつ」


「? そんなメニューあったんだ……」


「日本酒や焼酎は在庫で変わるから気をつけてね。頼むのナオコさんくらいだけど」


「は、はい。酎ハイレモンをひとつ、ライムをふたつ、葉茶芽茶、以上でよろしいですか?」


「はい」


「少々お待ちください!」


 いい感じ。いやあ、やれるもんだね。料理の盛り付けも崩さないし。


「お待たせしましたー、酎ハイレモンをひとつ、ライムをふたつ、葉茶芽茶でーす。ごゆっくりどうぞ」


 唐揚げ食べよ。かぷっ。もぐもぐ……。うーん、このうまさ。例えようもないね。コショウとショウガとニンニク……。これだけでこの香りを? いや、お醤油もあるな。


 ライム酎ハイごくごく。ぶふー。満足。


「もう少ししたらあの子誘ってもいいですか?」


「いいぜ、でも座敷占領は不味くね?」


「宴会席ってそういうものじゃない?」


「大丈夫ですよ。うちはお客様最優先ですから。貧乏神様は追い出していいって大将も言ってましたけど」


「そりゃなんでも言いなりなわけねえよな」


「悪質なクレーマーはそれが犯罪行為なのを気づいてないのですわ」


「ここはいいお客さんが多いので感じ悪いのはNOなのでーす」


「飲みましょう」


 悪質クレーマーなんて思い出したくもない。ねぎれない店なのにしつこく安くしろって言ってきた客は女将さんが止めてくれたけど、こっちが下だと思ってどうとでもなると思ってるのは本当にバカだ。それは立派な恐喝だ。忘れよう。ごくごく、カラン。氷しかなくなった。


「お待たせいたしました。天ぷら三種盛りのお客様は」


「真ん中置いといて」


「はい、ご注文はお揃いでしょうか」


「レモンを追加ですわ」


「まだ飲むからね、ライムを」


「こちらもおねがいしまーす」


「っ……はい、酎ハイレモンをおひとつ、ライムをおふたつ、以上でよろしいですか?」


「お願いします」


「少々お待ちください!」


「あの子、言い方を少し変えましたね。そういう教えですか?」


「いや、私もだけど自分で思い出したんでしょ、接客を受ける側の記憶を」


「連鎖的に思い出すのは大事でーす」


 焼き鳥の串を一本取ってかじる。肝だ。コクがあって美味しいなあ。安いからよく使う。


 練れば練るほど良くなる。それがわかると楽しくなってきちゃうんだよね。








 楽しくなってきましたね、接客!



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