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ひとパ☆  作者: いかや☆きいろ
接客しよう!
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激闘の日々

 現実物なのにほんのりファンタジーやSFが入るお話が大好物なんです。



 ここは荒野。向かい合う女と男。勝負は一瞬だった。


「……唐揚げ定食で」


「はい、ご注文をくりかえします、唐揚げ定食ひとつでよろしいですか?」


「お願いします」


「少々お待ちください! オーダー入ります! 唐揚げ定食ひとつ!」


「あいよ!」


(仁じゃねえか!)


 仁ですが? なぜかナオコさんの声が……これが幻聴か。


 いやー、最近まだ忙しいんですよね。連日忙しくてくたびれております。


 まあ大将や女将さんに比べたらましでしょう。あの二人日曜以外ほとんど働いてるはず。


 仁は11時開店、11時閉店なのでほぼ半日働いてるわけです。アイドリングタイムはありますけど。鉄人か。鉄人だった。年末年始の地獄はさすがにこたえてるみたいだけど、儲かってるからいいらしい。


 せめて接客は私だけでこなす。


「すみません」


「はい、ただいま!」


 オーダーを入れたら空いてるテーブルを片づける。


「いらっしゃいませー! 二名様ですか? こちらのお席へどうぞ!」


 来たお客様にテーブルを指示してお冷やを取りにいく。お客さんが腰をおろす前を目指し、すぐにもお冷やのコップと熱々のおしぼりをお盆にのせて運ぶ。


「ご注文お決まりになりましたらお声お掛けください!」


「唐揚げ定食あがり」


「あいよ!」


 唐揚げ定食をゲットしてお客様に配膳。


「ご注文以上でよろしいですか?」


「はい。君すごいな」


「ありがとうございます!」


(どっかから人が恋に落ちる音が?!)


(なに言ってんですか先生。内科医が幻聴ですか? 外科病棟の光里先生についたらよかった……)


 なんか聞こえるー!! 知らない知らない!


 はー、お客がたまたま途切れてよかった。


「すみませーん」


「はーい! ご注文お決まりですか?」


 定食の時間はまだ楽なのだ。定食一品で終了の人が多いからね。これなら暇な時は二人でも回せる。大将が表に出ることもあるよ。丁寧にオーダーをとる店長は半分になってるね。妖精かな?


 定食の時間は二時に終わり、アイドリングタイムになる。お客も来ないので居酒屋開店まで休んだり仕込みをしたりする。


 お正月の時も店長は一日前に仕込みをしていたし、当日朝も仕入れと仕込みをしている。忙しいのである。夕方は五時からになる。タイムカードは切ってあるので家に帰って寝るのも自由だ。ここは駅前通りだしね。帰ったことないけど。まかないの海鮮丼をいただく。お米が寿司向きじゃないから少し粘るけど悪くない。すし酢が上手くいってる証拠だ。


「やっぱ寿司は無理だわな」


「ブレンドがですね~」


 一応これも大将の研究である。しっかり感想を伝える。おためごかしとか意味がわからない。ここでは自分の利益より店の利益だ。もう6年もお世話になっている。小学生だって卒業だ。


「スズ次第かあ……」


「ええ、本物は炊き方も違いますからね」


 いずれ機械は最高級の一品をまったく同じように作るようになるだろう。しかしそこにこういったやり取りをした経験はない。人間が機械に負ける時は、永遠にやってこない。人間は人間で完全だ。


 夜の営業はポツポツ始まる。まあ五時から飲む人もいなくない。今も入ってきた二人は飲み客の常連だ。


「いらっしゃいませー!」


「アカネちゃーん!」


「今日も可愛いなあ!」


「もう、お世辞ばっか。二名様でよろしいですか? 一番奥のテーブル席へどうぞ」


 奥には団体用の座敷席が二つある。六人用座卓二つだ。その手前に二人掛けのテーブルがある。他はテーブル席が四つ、カウンター席が五つ。座敷の左奥はおトイレだ。ちなみに店員がトイレに行く時は「一番行ってきます」という。席の方は一番テーブル。一番さんオーダー待ちです、というので簡単な隠語だけどわからない。従業員用トイレは裏手側だ。


 お、あの二人は……。


「いらっしゃいませー!」


「ちゃーっす!」


「来たわよ」


 ナオコさんたちだ。この二人が来たのでそろそろスズちゃんが降りてくる。すぐに裏から顔を出した。上がりだ。


「スズちゃんあとおまかせ!」


「はい!」


「お先に失礼しまーす!」


「おう、お疲れ」


「お疲れ様」


 挨拶が終わったら音速でタイムカードを切る。黒いバンダナとエプロンをバッグにしまったら裏口から出て表に回る。


「いらっしゃいませー!」


「飲むぞー!」


「たくさん飲んでください!」


 ちなみに今入ってるのは全員が常連である。これを茶番という。


「お待たせ」


「待ってねえ」


「どうしたんです?」


「なんか幻聴が聞こえるんですって」


「私もですよ、奇遇ですね」


「……マジかよ。なんかつながってんのか?」


 そか、それならいいです。


「なにニコニコしてんだよぉ」


「いいえ、なにも。それより、飲みましょう!」


 というわけでバラバラに注文する。私はごはんはつけるとして、焼き鳥から。飲み物はいつもの生ビール。


「ところでお聞きしたかったんですが、実はお医者様ってほとんど休みが無いらしいですね」


「!」


 二人ともビクリとしました。あれ? ホントに繋がってた?


「うちは企業の病院だからそうでもないのよ。研究医はかなりフリーなの。まあ二年は普通に臨床で仕事をしないとダメなんだけどね」


 二人はそれってこと? なら今年から仲良くなれたのも不思議じゃないのか。でもそれ研究のための時間なんじゃ……。ま、まあ素人が立ち入ることじゃなかったね。


「忘れてください、飲みましょう!」


「そーだそーだ、飲むぞー!」


「生ビール中くださいな!」


「ちょっ、注文決まってねえってば!」


「生中と串盛りー」


 まあ、二人と友達になれたのは良かったと思ってます。それは本当だよ。


「いらっしゃいませ!」


 あ、アンナさんも来た。明日も休みだ、飲むぞー!






 一日十四話更新ってやってるのは私ですけどハンパないですね。



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