表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏祭り

作者: ときのん

火華は悩んでいた。屋台にあるのは2つの飴。片方は赤くて大きなりんご飴。大きくて食べ応えがありそうな真っ赤な果物。りんごはそれ程好きではないが、飴にした時は別だ。隣にはこれまた真っ赤ないちご飴。こちらは小さめだが食べやすそうだし、3つ入り。大きくない分数がある。いちごは好物だし、いちご飴の方がいいかもしれない。


「お嬢ちゃん。さっきから飴をじっと眺めてるが、買わないのかい?」

「あ、えっと、え、うっ、こ、こっちの…いちご飴ください……」


屋台の店主に声を掛けられ、消えかかった声でいちご飴の方を指す。


「いちご飴ね、はいどうぞ」

「あ、ありがとう……ございます…」


受け取ったいちご飴を持って足早に離れる。顔に付けたお面を口元まで外し、飴を1口食べる。甘い。幸せ。あっという間に1つ目を食べ終わり、2つ目に手を伸ばした所で隣を歩いていた人とぶつかり、いちご飴が宙を舞った。

あっと思ったのも束の間落下した飴はそのまま人混みの中に消えて行った。


「わたしの……私のいちご飴が!!!!」


火華はフラフラと道の端に寄れて座り込んだ。

座ってから食べれば良かったのに……はぁ……最悪だ…


お祭りとは言えども、そもそも火華はあまりお金を持っていない。それにさっきの所まで戻って飴を買い直す勇気は火華には無かった。暫くしてからお面を付け直し、また屋台を回り始める。


今更ながら、火華の格好の説明をしておこう。今日の火華は祭りという事で浴衣を着ている。ついでにお気に入りのケツァールのお面(自作)と鹿の角やらなんやらが付いたカチューシャを付けている。これのおかげで羽人の見た目を隠す事もできるし、周りの人達に溶け込むことも出来る。


「でも……人混み怖い…帰りたい……」


座り込んだのも間違いだった……周りに人が集まってきてる……羽人ってバレたのかな?やだな。帰りたいな。


「ちょ、ちょっと……通ります…」


立ち上がって人混みを掻き分けながら前に進む。横道の屋台エリアを抜けて大通りに出ると一気に人が減る。


「……楽になった…」


火華は散々な目に遭ったと思いながら帰路についた。二度と祭りなんか行かない。あ、でも飴は食べたい…………また今度祭り行こ、今度は屋台の終わり際に………あ、でも時間ズレたら……帰りにお菓子屋さんにでも寄って行こう………


お菓子屋に寄った火華は呼羽のみんなの分もお菓子を買ったが、結局誰にも渡すことが出来ずに1人で食べることになったそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ