6月23日 5区(聖淮戦)
淮南高校の選手とは約40秒さという展開。もう、ほとんどの人が諦めているだろう。一方で、呼びにいった若林は、全く諦めていない。立ち姿からは、話しかけれないくらいオーラが漂っていた。今まで、こんな若林は見たことがなかった。俺がエースだと言わんばかり。もう間もなく5区を走っていた山笠が帰って来ようとしていた。一足先に、淮南高校の選手が帰ってくる。"ラスト!!"。大きな声が入ってくる。しかし、それは聖徳高校に向けられたものではなく、淮南高校の選手に向けられたもの。決して、私たちにとっては気分がいいものではなかった。そういった雑音は、若林には全く聞こえてないんだろうな。
ー6月19日ー 19:00
山﨑「珍しいな、お前から連絡するなんて」
私 「そう?」
"聖淮戦"を終えた私は、
山﨑「どうしたんだ?」
私 「篠木のこと聞きたくて」
山﨑「篠木?」
思わず聞き返してきた。たしかに、私たちにとっては、だいぶ昔のことだった。
私 「聖徳の篠木。覚えてるでしょ?」
山﨑「ああ、アイツかぁ」
私 「うん」
私服で会う山﨑は、どこか新鮮だった。
山﨑「何が聞きたいんだ?」
私 「私、あの人のこと詳しく知らないんだ」
山﨑「なんで知りたいんだ?」
私 「この前、少し話す機会があって」
表情は、変わらなかった。変な疑いをかけられたくはないから、ちゃんとした説明にならないか不安だった。
山﨑「何を話せばいいの?」
私 「どんな性格かとか」
スマホを触りながら話し始めた。
山﨑「性格かぁ。結構、こだわりが強いイメージはあるかな。負ける勝負にはのらない。やるって言ったことはどんなことをしてでもやり続ける。そんな感じかなぁ」
たしかにそれはあるかも。この前の打ち合わせの時もそんな感じはした。あの日のリレーの時もそうだった。あの時、やめてれば、今も走れたかもしれないのに。
私 「やっぱりそうなんだ。あの日のことは、バレてないんだよね?」
山﨑「ああ。バレてないよ」
私 「バレることはないの?」
鋭い目つきで私の方を見てきた。
山﨑「誰かが言わなきゃ、バレないだろ?」
私 「だって、バレたら犯罪と言われても仕方ないでしょ?」
山﨑「バレなきゃいいんだよ」
もし、バレたら?山﨑は、そんなことを考えているのだろうか?




