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6月19日 1区(聖淮戦)

 時刻は、もう間もなく11時になろうとしていた。1区を走る二宮はスタート開始の合図を待っている。坂の上にいるのは、二宮ともう一人。なんていう名前だろうか?私はスターティング表に目を向ける。山井という人だった。誰だかわからないけど、私たちとしては勝ちたい。私たちは、二宮、藤井、吉見、野中、山笠、若林という布陣。長距離は、二宮、吉見、若林の3人だけ。あとは、中距離と短距離の選手も。陸上部なんて、他の部活と比べると、メンバーは充実していない。

 私は、二宮を見ていた。二宮は、体を動かしながらスタートの位置についている。緊張した面持ちでスタートの合図を意識していふようだった。二宮の表情は、いつもより堅いような気がした。レースの興奮と不安で高鳴っているのだろうか?私たちの周りには、野球部やバスケ部の生徒たちが何人かいるようだった。グラウンドでは、サッカー部が熱戦を繰り広げていることが伝わっていた。同じ"BIG3"の真波は練習をしているけど、颯希はどこにも見えなかった。何をしているのだろうか?

 そんなことを考えていると、陸上部顧問の若山先生のスタートの合図ともに、二人は走りだした。走り出したとももに、生徒からたくさんの声がかかった。勢いよく、二宮はスタートを切った。淮南高校の山井をあっという間に差をつけて前を走っていく。いつも寡黙な二宮だったが、とても真剣な眼差しに私は本気さを感じた。


 若林「篠木!!」

 私 「どうしたの?」

 

 いつもとは、違った表情だ。


 若林「中間地点にいてよ」

 私 「中間地点?」


 ゆっくり頷いた。


 私 「なんで中間地点なの?」

 若林「俺が中間地点で給水したいからだ」


 そっかぁ。給水はあるんだ。わずか3キロだから、てっきり給水しないかと思った。


 私 「わかった。何持っていったらいいの?」

 若林「これ持っていって」


 若林の右手からは、キンキンに冷えたペットボトルが出てきた。


 私 「これ、何入ってるの?」

 若林「普通の水だよ」


 どう考えても水っぽくはない。


 私 「わかった。じゃあ、これ渡すよ」

 若林「頼むわ。ちゃんと真ん中にいろよ」

 私 「わかってるよ」



 若林は、ゆっくりと私から距離を離れ、ストレッチをし始めた。今日の若林は、いつもより話しにくい。それだけ、負けたくないということなんだろうな。

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