6月11日 施設
もうすぐ夕方。この部屋にいるのは、私だけだった。窓の外には、涼しい風が吹いており、窓ガラスを叩く音が響き渡っていた。時折、"きしっ"という音が響き、教室のドアが開きそうだった。私は、シャツの裾を少し折、手に雑巾とバケツを持っていたのだった。私は、ドアを強く閉め開かないようにしていた。明かりが窓から差し込んでいるのを見ると、なんだか眩い光だった。私は、目を閉じて深呼吸をしながら手に持っていた道具を床に置いた。
教室には、いくつもの机と椅子が整然と並んでいた。私の前方には、黒板があり、消し忘れられたチョークの文字がかすかに残っていた。もう、黒板なんてなくして、映画館みたいなスクリーンをつけて授業したらいいのにな。伝統ある聖徳高校の施設に対して文句をつけたかった。私たちは、よく聖徳高校と対比して、淮南高校を例に上げることが多かった。淮南高校は、ここ最近できた高校だから、制服も含めて全てが新しい。昨年行われた"聖淮戦"で初めて淮南高校に行ったが、聖徳高校との違いに愕然としてしまった。1番は、パソコンとタブレットが教室に備え付けられていることだった。こんなに進んでいるのかと私は思った。私も、淮南高校だったら、もっと勉強したいと思えるようになるんだろうなと思った。
みんな制服がカワイイとかいう理由で選択するけど、私はあの設備がいいかな。私が聖徳高校に行ったのは、自宅に近いから。それだけだった。淮南高校だと電車に乗っていかないといけないから、約1時間くらいかかるけど、聖徳高校だったら、自転車で15分くらい。1日で換算すると、往復になるから約1時間30分も違う。それが3年間になると、相当差ができるだろう。その時間が欲しかった理由としては、弟たちの存在が大きい。私の時間は、彼らに注ぐのが1番だと思っていた。今年の聖徳高校に来たら、淮南高校の生徒はみんな驚いてしまうだろうな。それを考えるだけでも、笑ってしまう。そういえば、今年の"聖淮戦"ももうすぐだな。今年は、どちらの高校が勝つんだろうか?楽しみだけど、、、、、。本当は、私もプレーヤー側で何かしたかったのが本音だった。おそらく、陸上部のリレーと駅伝の時はプレーヤー側にはいるけど、基本は生徒会側の手伝いもしないといけなかった。床には、生徒たちの落としていった紙くずや消しゴムのカスが落ちていたので、掃除機を使いながらとって行くことにしたのだった。




