6月10日 最後
お父さん「アイツら、もう寝たのか?」
私 「そうじゃない?」
二人が自分の部屋で何をしているかはわからない。けど、もう12時を過ぎている。普段だと、もう寝ている頃だろう。私も普段なら寝ていると思う。今日は、お父さんが帰ってきてなかったから、特別に起きていたのだった。
お父さん「そっかぁ」
私 「ご飯食べた?」
もう、さすがに食べているだろう。でも、とりあえず聞いておくことにした。
お父さん「いや、今からだ」
まだなのか。さすがに、働きすぎだろう。こんなに働いて何になると言うのだろうか。
私 「なんかしようか?」
お父さん「いやいいよ。ある物食べるから」
私 「あっ、そう」
ネクタイを緩めたお父さんは、疲れた様子を見せずにテーブルの椅子についた。
お父さん「アイツら元気だったか?」
私 「二人とも野球に熱中してるよ」
冷蔵庫からお茶を取り出し、お父さんのコップに注ぐ。お父さんは、コップを取り口の中に入れる。
お父さん「そうか。蒼大は、もうすぐ大会だもんな」
私 「うん。気合い入ってるみたい」
いつも弟たちのことを見る時間がないお父さんに、少しでもわかるように伝えた。
お父さん「そうか。それは楽しみだな」
私 「蒼大の試合見に行かないの?」
私にも見に来て欲しいとは思うけど、1番はお父さんや亡くなったお母さんだろう。お父さんは、野球を終えてくれた人。蒼大にとって、1番自分のプレーを見てほしい存在なんじゃないかと思う。たしかもともとピッチャーだったけど、お父さんの影響でキャッチャーをやり始めたのだとか。
お父さん「空いてたら行くさ」
私 「たまには、観に行ってあげてよ」
蒼大の気持ちを代弁して伝えてあげた。蒼大は、聖徳高校で野球をやる予定だから関係ないのだろうけど、この夏の結果次第では、他の高校からもスカウトが来るんじゃないかと思っていた。そもそも、お父さんはスカウトがきていることも知らないんじゃないか。私は、そんな気すらしていた。
お父さん「そうだな。次が最後の大会になるんだろ?」
私 「そうなのよ」
意外と落ち着いている。最後か最後じゃないかというよりかは、もっと広いスパンで蒼大のことを考えているのかもしれない。私は、空いたグラスに再びお茶を注いだのだった。




