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6月9日 タイミング

 静寂した台所で、私は丹精込めて弁当を作っていた。包丁と人参が軽快にぶつかり合う音が響き渡っていく。私は、慣れた手つきで食材を扱っていた。昔は、こんな簡単にはいかなかった。けど、やればやるほど慣れてくる。早起きは、好きじゃなかったけど愛する弟たちのために作る弁当は、頑張れた。私にとって彼らの弁当は、単なる食事の準備ではなく、彼らの命を預かっているような気持ちだった。

 私は、ひとつまみの塩をまぶした鶏肉をフライパンでゆっくりと焼き上げた。そろそろ、弟たちが起きてくるころだろう。いつも先に起きてくるのは、蒼大だった。一方、雄大は、朝に弱い。朝ご飯を食べている時もちゃんと目が覚めていないことが多い。

 ジュージューという音と香ばしい香りが、台所に広がっていることを焼き上がった鶏肉を薄くスライスしていく。高校1年生の頃は、こんなに上手にできなかった。最初は、一人分のお弁当ですら、とても時間がかかった。私たち4人分の弁当をよく作っていたお母さんは、さすがだった。すると、ガチャと扉が開くような音がした。私は、後ろを振り返り時計を確認した。時刻は、6時前。もしかしたら、起きて勉強していたのか?蒼大は、聖徳高校に行くとは言っていたが、一応受験生になる。真面目だから、起きて何かしらの勉強をしていたのかもしれないな。我が弟ながら、感心させられていた。

 私は、醤油とみりんを合わせたタレで味付けをしていく。すると、炊飯器からお米が炊けた音が鳴り響いた。ふっくらと炊き上がったご飯を丁寧にほぐし、混ぜていく。熱々のご飯を弁当に入れるとよくないと聞いたから、少し冷ましておくことにした。一方、ゆでたカボチャとニンジンを、お弁当箱の仕切りに収まるように切りそろえていく。鮮やかなオレンジ色が、お弁当に彩りを添えるような気がしたのだった。先ほど作った卵焼きを端の方に入れていく。今日、1番苦戦したのが卵焼きだった。いつもなら、パリッとした食感があったのに、今日はなくて私は作り直したのだった。おそらく、フライパンに流し込んだ時の火加減がいつもと違った状態でくるくると巻いてしまったのが原因だったんじゃないかと思っていた。できたての玉子焼きから甘い香りが漂っている。私は、先ほど冷ましていたご飯を弁当に入れ、ご飯の上に海苔を敷き弁当が完成したのだった。そのタイミングを見計らったように、ドンドンと歩いてくる音が聞こえた。おそらく、蒼大だ。

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