6月7日 レース
トラックの端で、マネージャーである私は、ストップウォッチを手に真剣な表情でスタートラインを見つめていた。やっぱり、選手っていいよなぁ。普段は思わないことを今日はなんとなく思ってしまっていた。選手たちたちは、私のスタートの合図を今か今かと待ち構えている。30秒前!!大きな声を出した。今日は、6月19日に行われる"聖淮戦"前のラストレースだった。
長距離の選手たちは、みんな走ることになっていた。練習同様、二宮と若林が上位になるんだろうなとなんとなく思っていた。10秒前!!走らない私だったが、心拍数は上がり、手に汗がにじむような感覚があった。このレースで、"聖淮戦"のメンバーが決まる。彼らたちランナーが自己ベストを更新することを私は静かに期待していた。私のスタートの合図でランナーが一斉に走り出した。選手たちは、ブロックから飛び出し、トラックを駆け抜けていった。私は、ストップウォッチのボタンを押し、ランナーのタイムを計測し始めた。
針が高速で動いている。私は、ランナーたちの力強い走りを目で追っていく。やはり、先頭争いは、二宮、若林たち4人だった。4人いれば、それぞれの走り方がある。ストライドも人によって違う。誰が最初のゴールへ飛び込んでいるだろうか。選手たちは、裏門へと向かって走って行くため、一旦私のところからは見えなくなっていた。誰が勝つかは私にもわからない。どこの部活も活発にしている。野球部もサッカー部も大きな声を出しながら練習をしている。サッカー部の練習には、これまでいなかった宝来が顔を出していた。ようやくやる気を出すようになったんだ。なんとも微笑ましい光景だった。
そんなことを考えていると、裏門から選手がやってきた。1位は、、、、、、、。よく目を凝らして見てみると、二宮と若林が先頭に立ち、後続のランナーとリードを広げていた。さすがだなぁ。私は、ストップウォッチをにらみつけ、針の動きを確認した。ここまで、約3分。ここから、レースはどういう展開になるだろうか?二宮、若林が私の前を通過し、先ほどのコースを残り1周となる。レースの後半に差し掛かったこともあり、別のランナーも徐々にスピードを上げているように見える。しかし、先頭集団とは差が縮まらない。一方、先頭集団は、僅差で争っていた。私は、全員1周目を通過したこともあり、1周目のタイムをすぐに計算し、タブレットに記した。




