6月2日 紅白戦12(投入)
中間テストが終わり、今日からテスト返却が始まっていた。数学は、87点と勉強していないわりによく、安心した。4時間目に返ってきた国語でも82点をとり、最低ラインを守っていた。
ー5月22日ー
監督が立ち上がり、レフトから走ってくる。それは、蒼大の姿だ。ここまで、3安打打たれている蒼大をあえて投入する意図は何だろうか?監督に疑問を抱いた。
私 「なんで、蒼大なの?」
橘 「詳しいことはわかんないけど、それだけ信頼されてるんじゃないの?」
私 「ふーん」
そんなものなのか?
橘 「蒼大が打たれて負けたら仕方がないみたいな感じじゃないかな」
私 「なるほどね」
それだけ、チームにとって欠かせない存在ということか。
橘 「俺たちで言えば、橋本とか川中なんだよ」
私 「なるほど。山城くん、大丈夫かな?」
マウンドから降りた山城は、タオルをかぶってベンチに座っていた。
橘 「あれだけ、後輩に打たれたんだからショックだろうな」
マウンド上にいた蒼大は、何やらキャッチャーと話していた。そこに橘の弟もやってきた。絶対に負けられない。3年生の蒼大たちからは、そんな意気込みを感じたなのだった。グローブを変えた蒼大は、投球練習を開始した。5回無失点。最高のピッチングをしたのだ。また、抑えてくれるだろうという期待が強いみたいだ。蒼大は、リラックスした姿で投げ込んでいく。一方、バッターの雄大は、蒼大と違って、とても顔がこわばっているように見えた。
私 「この対決どうなると思う?」
橘 「蒼大が勝つんじゃないか?」
私が想定していない返答が返ってきた。
私 「ここまで3安打打たれているのに?」
橘 「どれだけ本気出してるか怪しいしね」
本気?
私 「あれ、本気出してないの?」
橘 「可能性はあるかな」
やっぱり、野球部とかだったら、蒼大が本気出してるか出してないかもわかるのか?
私 「なんでそう思うの?」
すぐに理由が聞きたくなっていた。
橘 「だって3打席ともランナーなしだぜ?怪しくないか?」
私 「たしかに、そうだね」
そう言えばそうだ。その理論で言えば、蒼大が本気を出す理由は見つからなかった。投球練習をし終えた蒼大は、マウンドをふみ、キャッチャーとサイン交換を始めた。バッターの雄大は、蒼大を見つめる。二人の第4ラウンドが始まろうとしていた。




