5月19日 熱くさせるもの
いつものように蒼大の素振りを見ながら、ユニフォームを干していた。
私 「次、いつあるの?」
蒼大「次は、7月かな」
この前の大会で勝ち進んだ八代北中学校は、7月の大会にコマを進めていた。
私 「県大会?」
蒼大「うん。負けたら、もう終わりだよ」
バットを持った蒼大は、まるで高校生のようだった。
私 「ふーん。大変だね」
蒼大「勝つから大丈夫だよ」
私 「すごい自信ね」
蒼大ってこんな自信家だったけな?
蒼大「当たり前じゃない。そのためにしてるんだから」
私 「へぇー。言うようになったね。アンタも」
蒼大は、何も動揺していない。もしかしたら、心の底からそう思っているのかもしれない。
蒼大「姉ちゃんの弟なんだから、仕方ないでしょ」
私 「お前が言うな、お前が」
蒼大がどれだけ野球にかけているかはわからない。練習量だけみたら、中学生の中でも頭一つ抜けている。しかし、最後は団体スポーツだから、一人だけ上手くても勝てない。
蒼大「ハハハハ」
私 「何笑ってんのよ」
木製のバットをもち左でスイングし始めた。
蒼大「俺、今年の県大会でさらに注目集めるから見といてよ」
たしかに、上にいけばいくほどスカウトはみに来るだろう。
私 「そんなに?」
蒼大「うん。たくさんの高校からスカウトきたら自慢できるじゃん」
自慢って、、。
私 「でも、スカウト来ても、聖徳行くんでしょ?」
蒼大「まぁ、優聖さんいるからね」
この前から出てくる田中優聖とやらは、そんなに凄いのか?それとも野球だけで進学先を決めるコイツがバカなのか?私にはわからない。
私 「その人、そんなに凄いの?」
蒼大「凄いかどうかっていうより、俺にはない能力が多いかな」
私 「ふーん、よくわからないけど」
蒼大の説明では全然理解できない。私もお父さんもどこの高校に行ってほしいというのはない。だから、おそらく本人が決めたところに行くのだと思うけど。
蒼大「でも、学費全額免除だったら、私立もいくかもしれない」
私 「そっかぁ。じゃあ、やっぱり私立いきたいんじゃない?」
あえて煽るように言ってみせた。
蒼大「お姉ちゃんは、わかってないな」
私 「何がよ」
蒼大は、私立にも聖徳にも行きたいわけじゃない。もっと自分を熱くさせてくれるものを望んでいる様子だった。




