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5月10日 準決勝

 前の方では、ベンチに入れなかった1.2年生と3年生の保護者が大きな声で声援を送っていた。私は、祈る様に手を握りながらバッターボックスを見つめた。昨日、雄大の体調は、ほとんど回復した。今日も36.8℃と部活動に参加できるくらいだった。

 しかし、念のため、今日は休んでもらうことにした。本人は、相当行きたい様子だったが、私と蒼大で必死に抑えたのだ。なかなか、説得に応じない雄大はめんどくさかったけど、ゲームはしていいと伝えるとあっさり応じてくれた。相変わらず、何考えているか理解ができない弟だった。

 昔から、弟はよくわからなかったのに対し、蒼大は、分かりやすかった。自分の想いを全面に出すタイプではなかったけど、こういう風に思っているんだろうなと近くにいる私にはわかったから、なんとも言えない気持ちになっていた。

 蒼大は、聖徳高校に進学する予定らしい。本来なら、たくさんスカウトが来るらしいから、他の学校にもいけるはずなのにその話をまったくしない。たしかに私学は高い。でも、お父さんの給料なら出さないことはない。でも、それを蒼大に言っても頑なに聖徳高校だと言うだろうな。どうせやるなら名門校でしたらいいのにという気持ちが強かった。

 打席には、蒼大が入った。7回表2死満塁。ここで打てば、同点に追いつける。しかし、打てなかったら、負けてしまう。まさに、絶対絶命だった。少しずつ気温も上がっていた。打席にたつ蒼大が熱くないか心配になっていた。

 蒼大がいる八代北中学校と道和中学校の一戦は、序盤から点の取り合いだった。先に主導権を握ったのは道和中学校。1回に4連打を含む打者一巡の猛攻でいきなり6点を先制。2回にも2点を追加し、8点のリードを許してしまった。しかし、そこから、八代北中学校も反撃を見せる。

 3回に蒼大のタイムリーヒットで2点を先制すると、4回には、細見のタイムリーヒットで3点目をあげた。そして、5回には、再び、蒼大のタイムリー二塁打で2得点を追加していた。道和中学校相手にこれだけいい試合をしたのだから、見に来たかいがあったのだ。まだ、終わってない。ここから、どうなるか楽しみだ。

 打席に入った蒼大は、ツーストライクと追い込まれてしまった。ピッチャーは、エースに代わってから点が取れていない。どうするんだろ、蒼大は?道和中学校のピッチャーは、この日最後となるボールを投げ込んだ。そして、次の瞬間、大きな歓声が上がったのだった。

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