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5月7日 大会初戦

 キレイな打球音がグランドに響き渡っていた。私は、他の応援席の保護者と混ざりながら見つめていた。いい天気だなあ、今日は。青い空に澄み渡るような雲。寒すぎず暑すぎず。5月ということもあり、気温も適切だった。こんな天気の中、弟を見守れるのはとても心地よかった。あれだけ小さかった弟も、もう立派な中学生をしていたことに気がついた。

 6回終わって、9対0。弟の蒼大がいる八代北中学校は、大量リードで最終回を迎えていた。今日の蒼大は、4打数3安打。3回の第二打席。真ん中に来たボールは高々と飛んでいく。昨日、私に宣言していたようにホームランをきっちり打ってみせた瞬間だった。グランド一周しながらガッツポーズをしていた蒼大は、とても輝いていた。最終回、マウンドには蒼大が投げようとしていた。

 昨日は、投げないと言っていないのに。投げるんだな。ベンチから走ってくる背番号2の姿。プレートに着くなり、ボールを受け取った。私は、ペットボトルを持ちながら蒼大を見つめていた。負けている高田南中学校の選手も大きな声を出していた。最後の投球練習をしたボールはキャッチャーに届き、キャッチャーからセカンドに渡った。

 蒼大は、後ろをふりかえり指を指した。高田南中学校の攻撃は、8番の選手からだった。蒼大の投球フォームは、まるでムチのようにしなっていた。想像以上の球のせいかバッターはボールに当たらないみたいだった。

 こんな蒼大の姿を見ていたら、頑張らないとと思ってしまう。辛いことや苦しいことは毎日たくさんある。でも、私の支えである弟がいる限り、こんなところでは終わらない。8番バッターは空振り三振となった。

 続いては、9番バッターが打席に入った。お母さんが生きていたらきっと蒼大や雄大のプレーを見たかっただろうな。こんなにハツラツとプレーする蒼大の姿は家で見られない。弟の雄大は、スタンドから応援していたのだった。雄大は、応援に飽きていた様子で蒼大のプレーを眺めていた。たしかに試合を見るのは楽しくないだろうな。9番バッターは、ボールを見逃したが、ストライクの判定でバッターボックスから戻っていたのだった。

 今日の蒼大は、相当調子がいいみたいだ。最後も、腕を精一杯腕を振りボールを投げ続けた。結局、この回は、三者連続三振で試合が終わったのだった。外野に選手たちは走っていた。あのグラウンドでプレーするのはどういう気持ちなのだろうか?私も蒼大のようになってみたかった。

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