5月4日 旅館
私たちの旅行は、2日目の朝を迎えていた。もう少しで、ホテルを出ようとしていた私たちは、荷物の整理をしていた。
私 「久しぶりだね、こんなゆっくりしたの」
傑 「そうだな。中学生以来かな?」
私は、昨日着ていた服をたたみ直していた。
私 「あれだよね、鎌倉行った時だよね?」
傑 「そうそう。あの時、あの時」
指差して、私の方を見た。
私 「傑が2日目に、熱出したんだよね」
傑 「あの時、めちゃくちゃしんどかったんだよ」
たしか、あの時は、ずっと傑の看病をしていた様な気がする。
私 「結局、2日目って何もできなかったんだよね」
傑 「というか、16時まで部屋から全く出なかった気がする」
私 「そうだったけ?」
あの時は、あまり覚えていなかった。というより、覚えれる状態じゃなかったからだ。
傑 「七海が旅館の人に話し合ってくれたんじゃなかったけ?」
私 「なんか、そんなんだった気もする、ハハハ」
傑 「でも、あの時ホントにつらかったな」
傑は、スマホを触りながら、今日行く場所を探していた。
私 「あの後、病院行ったよね」
傑 「そうそう。ただの風邪ですって言われた時は、ホントにウケたよね」
寝転びながら、手を叩いていた。
私 「いや、ホントだよね」
傑 「こっちは、あれだけしんどい思いしたのにな」
私 「だよね。懐かしいな」
あの時は、私の脚が完治してたけど、走ることが難しいと言われて、メンタルだけ怪我した時のまんまだった。そんな時、傑がデートを提案してくれたのだった。
傑 「今は、メンタル回復したの?」
私 「うるさい、そっちこそ大丈夫なの?」
当時のことを知っている傑は、私の回復した姿は、驚いただろう。
傑 「うーん。走れないことより、夢中になれないものがないことの方がつらいかな」
そんなものなのか?
私 「今、何してんの?」
傑 「遊んだり、バイトしたり。でも、面白いもんが見つからなくてな」
大学生になっていない私には、傑のことは、よくわからない。
私 「大学生って、そんなもんなの?」
傑 「うーん、皆んながそうじゃないけど、、。どうだろうな?」
やっぱり、傑は、何かに迷っている様子だった。今度は、私が傑のことを助けてあげる番なのに、、、。私は、それ以上に自分の進路でいっぱいだった。




