4月25日 残酷
諏訪は、今日もやってきた。
諏訪「今日は、空いてるでしょ?」
私 「今日は、家帰って、手伝いしないといけないの」
諏訪「何の?」
私 「明日から、合宿なんだって」
諏訪「弟?」
私の弟は、野球部に入っていた。
私 「うん」
諏訪「八代北だよね?」
私 「そうそう」
諏訪「大変だね、七海も」
私 「そんなことないよ。ただ、今は、みんな忙しくて、弟の準備できないのよ」
母親のことは、素直に言えなかった。
諏訪「そっかぁ。七海って、弟二人いなかった?」
私 「そうかんだよ。中3と中1の二人」
諏訪「両方とも野球部?」
私 「そうなんだよね。ユニフォーム洗うの大変なんよ」
諏訪「大変そう、、、」
私 「めちゃくちゃ汚れてるしね」
野球の土まみれのユニフォームは、なかなか落ちない。
諏訪「野球は、上手いの?」
私 「どうなんだろうね?私は、あんまり詳しくないけど、そこそこ上手いのかな」
諏訪「ポジションは?」
私 「んとーねぇ。中3の子は、ピッチャーとセカンドかな。で、中1の子は、キャッチャーかな」
私は、野球のことをあまり知らなかった。
諏訪「そっかぁ。聖徳くるの?」
私 「なんか迷ってるらしいよ」
諏訪「どこと?」
私 「確かね、江陵高校からスカウト来てるらしくて」
諏訪「めっちゃスゴイじゃん。私の弟も行きたいって言ってたわ」
私 「そうだ。諏訪も弟、野球部かぁ」
諏訪も弟がおり、野球をしていた。
諏訪「うん。まぁ、クラブチームだけどね」
私 「中学校からクラブチームって相当上手いんじゃない?」
諏訪「どうなんだろう。でも、話を聞いている感じだと、結構残酷らしいよ」
諏訪は、俯きながら答えた。
私 「何が?」
諏訪「試合に出るの」
私 「そうなの?」
俯いた諏訪に話しかけた。
諏訪「やっぱり、上手い人がスゴイ集まるらしいんだよね。で、うちの弟とかはあんまり試合出られないんだよね。出てる人は、どんどん上手くなるし、スカウトもたくさん来るらしいよ。でも、出られない人は、上手くならないし、ただベンチから見守るしかなくなるらしいのよ」
どの世界にも上手い人は、なんでも有利に働くようになっている。そう考えると、諏訪の"残酷"という表現は、正しい。
私 「そうだよね。上手い人が集まるとそうなるよね」
諏訪「うちの弟もさ、最初は、試合出れなくて、ずっとふてくされてたよ」
この後も諏訪の話は続いた。




