4月11日 1学期
今日は、1学期の初めての登校日。始業式の日だ。高校生活もいよいよあと1年となった。私は、3年2組の専門学校や就職する生徒が入るクラスとなっていた。真波がいる国公立クラスや颯希がいる私立クラスに入ることもできたが、そこには入らなかった。
2月頃に行われた進路選択には、本当に迷った。真波や颯希には、何度も相談し、これからについて話し合った。彼女たちは、何度も一緒に受験しようと誘ってくれたが、その意見を受け入れることはなかった。
自分で言うのもおかしいが、国公立や私立に入って、いい成績をとれる自信はあった。というのも、勉強だけでいえば、学年トップ5に入っていたからだ。
しかし、私の家に大学に行く余裕はなかった。高校1年生の冬に、父が急死してしまい、働き手が母のみになったからだ。私には、弟が2人いる。その弟が大学に行けるようにしたい。一人は、中学3年生。もう一人は、中学1年生。両方とも、野球部に所属しており、それなりにお金がかかる。今年ぐらいまでは、父の貯金でなんとかできそうだが、来年度以降は、どうなるかわからない。
大学だけ行くのであれば、奨学金や親の貯金を使うことも可能だった。だが、大学に行くことは私の目的ではなかった。高校1年生の頃は、大学に行って運動力学について学んでみたいという思いが強かった。しかし、父が亡くなったことで大きく変わざるをえなかった。
私の進路は大学から就職へと切り替わった。大学に行く4年間で、弟たちが大学にいける学費をためることが目標になった。しかし、タダ働いても給料は低い。真波や颯希といろいろ話している中で、エンジニアの仕事にたどり着いたのだった。
今は、高卒でも入れるシステムエンジニア会社に就職することが私の進路になっている。現在は、これまで行ってきた勉強にはほとんど手をつけず、独学でひたすらプログラミングをしていた。
3年生が始まったばかりということもあり、仲の良い友だちはクラスにはいなかった。3月までは、「BIG3」の真波、颯希たちとずっと一緒だったから、退屈することはなかった。しかし、今年のメンバーを見ると、クセが多い。野球部の、橘や八幡。バスケ部の中村や横山。女子も佐藤や諏訪などヤンチャな生徒がいた。
今日は、教科書の配布や進路についての説明を受けただけで、授業は行われなかった。私は、窓側の席ということもあり、外を見ることができた。窓の奥には、青空が広がっていた。すると、いつものような真波や颯希のことを考えてしまっていた。真波や颯希とは、去年から仲良くなった。球技大会のバスケットボールでは、優勝することもできた。
真波とは、高田真波のこと。「BIG3」の1人で、真面目で優しい性格だ。男子の人気も高く、私たちのクラスの橘と付き合っている。みんなは、知らないらしいが。昨年の球技大会決勝では、ブザービートを決め、学校中の人気者になっていた。そんな真波は、国公立の大学を目指しているらしい。
そんな真波と同じ「BIG3」と言われているのが颯希だった。矢田颯希だ。明るくリーダー性がある。真波同様、男子の人気が高く、他校の生徒と付き合っているらしい。私たちが仲良くなったのも、彼女が球技大会に誘ってくれたからだ。今は、私立クラスにおり、私立の医大を目指しているらしい。
真波、颯希、そして私を含めた3人が、聖徳女子BIG3だった。ニックネームや通称をつけられた呼び方は好きではなかったが、彼女たちと並列で並べられていたのは、少し嬉しさもあった。
そんな彼女たちをめぐって、これからあんな出来事が起こるとは思いもしなかった‥‥。