7話 1番隊隊長ベニー
【 デ・ルー騎士団1番隊隊長ベニー 】
「ベニー、見てくれ。」
「なんだ?」
「盾がなくなっている。それに剣もだな。」
「こっちもだ。」
「なるほど。骸骨剣士が装備として奪ったか。」
ここは、16番通路だ。
20年前に起きた大規模な魔獣の群れとの戦いに参加した騎士団の亡骸が収められている場所だ。
30人ほどの装備が荒らされ、半分ほどが紛失している。
では、敵の骸骨剣士は15人もいるのか。
これは、
「罠だな。誘い込まれた。」
「そんな事は承知だぜ、ベニー。罠なら力づくで突破するまでだ。」
「そうだな。この狭い通路ならば奴らも一対一の勝負は避けられん。ならば、こちらは負けん。」
「一人3体か?楽勝だな。」
「俺が先頭だ。ドットの分は俺が貰うぞ。」
「おいおい、ランプ係は後ろに下がってくれよ。」
「待て。ゴーストだ。」
青白い浮遊体が通路の先にいる。
15番通路から奥にはこいつらが出没する。
ゴーストには好戦的なモノと、そうでないモノがいる。
こいつの様にその場にただ存在するだけのモノならば、比較的安全に駆除できる。
だが、触れれば魂が汚され、意欲を失い、その場に昏倒する場合もある。油断はできない。
「俺が聖水を使う。ドット、ランプを持ってろ。」
タワーが腰ベルトに括り付けた壜を取り出し、その中身を剣に振り掛ける。
そして、その剣をゴーストに突き刺した。
オオオォォォォーーーー。
ゴーストは最後の怨嗟の声を上げて消失する。
この声を聞くと、嫌な気持ちになるな。
さて、この先の14番通路が問題だ。
これまでの通路は新しく、直線の通路が整然と作られている。
しかし、この14番通路から先は鉱石採掘場だった旧道だ。
曲がりくねり、複数の交差点がある。
待ち伏せするなら、この先だろう。
それに、空気穴が開いているのも12番通路までだ。
11番通路から先は空気が悪い。
「ここからは、気合いれろよ。お前ら。」
「了解だぜ。」
「交差点ごとに確認をしていく。影に気をつけろ。」
タワーを先頭にドット、サンシャ、メイヤー、マルクトー、が続き、殿は俺だ。
1つ目の交差点が近付く。
その時、左側で何かが光った。
俺の持つランプの光を反射した、それ、はマルクトーの腹に突き刺さった。
「マルクトー!」
そうだった。
敵は骸骨だ。
通路の側壁には亡骸が安置されている。
屍人操者によって、それらが操られる可能性を考えていたのに、俺は、安置されている亡骸への注意を怠った。
敵は通路の先にいると、思っていた。
「くそ!」
「サンシャ、下がれ!」
「タワー、どこだ!」
「駄目だ、囲まれた。くそったれ!」
ランプが壊れた闇の中、仲間の声が聞こえる。
マルクトーは倒れて動かない。
俺も動けない。
俺は自分の腹を見た。
剣が突き出ている。
背中から突かれたらしい。
何が悪かったのか。
駄目だ。もう、考えられない。
目の前が暗くなり、周囲の音も聞こえない。
「吸魂」
低い声が、頭の中に響いた。
■■■
騎士団の隊長6人が地下墓地に来てくれたのは、大きな戦力アップだ。
彼らの魂は、安置されている骸骨に「授魂」させた。
空いた墓所に彼らの亡骸を寝かせる。
彼らの肉体が朽ちれば、良い骸骨になるだろう。
そして、彼らの腰には1本の壜が括り付けられていた。
聖水のようだ。
これは使えるな。
さて、彼ら6人の最初の任務は、入口部屋にいる神官と騎士8人の排除だ。
ラムデスと14人の骸骨騎士をその場に残し、新たな6人と共に、入口に向かう。