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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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5話 騎士団寮廊下

寮内に入ると、寝ていると思っていた宿直当番の男二人が起きていた。

「サイクス。声が聞こえたが、何か・・・。」

「お前、その血は!」


サイクスの皮鎧は胸に穴が開いているぐらいだが、オルガは首から滴る血が上半身を赤く染めている。

血塗れの姿に驚いた隙に、サイクスとオルガの剣が二人の男の胸を突く。


「ぐぅ。」

うめき声を上げて倒れる二人。

「吸魂」

「授魂」


さらに宿直室で就寝中の二人を加えて、6人の下僕を入手した。


順調だ。


では、2階、そして3階の部屋を攻略しよう。



侵略は静かに、確実に、進んで行く。

騎士団の寮ではあるが、それぞれの部屋には剣などの装備は持ち込んでいない。

あっても短剣ぐらいだ。

そして、多くの騎士が昼間の疲れで、深い眠りに就いている。

攻撃はサイクスら6人の下僕に任せ、俺は「吸魂」を使い魂を集めていく。


「血の匂いがしたから来て見れば、オルガ!てめぇ、魔物に堕ちたか!」

廊下の先で声が響いた。

どうやら3階の人間が様子を見に階段を降りてきたようだ。

3階から足音と声が響く。

「起きろ!」

「魔物だ!」

「何だと!」

「逃げるぞ!」


部屋の窓から逃亡を試みるようだな。

すでにサイクスとオルガの二人は3階で逃げ遅れた者に切り掛かっている。

俺は、まだ階段にいた4人の下僕を外の庭に出し、逃亡を阻止するように指示した。


俺は3階に向かう。


廊下に3人の死体があったので「吸魂」しておく。


サイクスとオルガは3階の廊下の先で攻めあぐんでいた。

どうやら部屋のベッド数台を廊下に出し、バリケードを築いた様だ。


バリケードは2人の男が支え、他の者が逃げ出す時間を稼いでいる。

ここは、俺が突破口を開こう。

「サイクス、オルガ、避けるのだ。」

下僕の二人を左右に避け、盾を構えた俺は、廊下を走り、そのままバリケードのベッドに激突する。


バキッ、メキィ。

木板が割れて軋む音がするが、破壊には至らない。


俺は剣先を木の割れ目に挿し込み、力一杯振り下ろした。

メキベキィ。

割れ目が広がる。

サイクスとオルガも俺に(なら)って、木板の割れ目に剣を挿し込み、割れ目を広げる。


立て掛けているベッドの底板が割れていく。

その割れ目から、支えている男と目が合った。


「骸骨剣士!貴様が魔物か!

アルベル、お前も逃げろ!逃げて骸骨剣士の事を皆に伝えろ!」

「しかし。」

「命令だ!アルベル。」

「はっ!御武運を、メイヤー隊長。」


そんな会話がバリケードの向こうから聞こえてくるが、こちらはガシガシとベッドの底板の割れ目を広げていく。


バキィ!

やっと、ベッドの底板が割れた。


「ふっ、十分だ。」

割れた状況を見て、メイヤー隊長と呼ばれた男が廊下を奥へと走り出した。

サイクスとオルガもベッドを越えて追う。


俺はバリケード脇の2人の死体を確認したので、「吸魂」しておく。


どうやら、アルベルとメイヤー隊長は窓から飛び降りたようだ。

サイクスとオルガも後を追った。

俺の下僕となり、その身体が屍人となった二人は、飛び降りても大丈夫だろう。

俺は、この高さでは足の骨が砕けるな。


寮内に人が残っていない事を確認する。

そして、階段で一階まで降り、入口から外に出た。


入口前の庭内に6人の下僕が揃っている。

その足元には8人の死体が置かれている。

サイクスは右足が砕け、オルガも両足が砕けて座り込んでいる。

無事では無かったか。

まぁ、一日寝れば、元に戻るだろう。


「吸魂」

8人分の魂が、俺の左手に吸い込まれた。

これで31人分の魂のストックとなった。


アルベルの死体はあったが、ネイマー隊長には逃げられたな。

他にも逃げた者がいるようだ。


寮の周辺が騒がしくなった。


この街の騎士団の情報は吸魂した魂の記憶から読み取れる。

隣の建物も騎士団寮だが、その各部屋から明かりが見える。

我々を確認し、討伐の為に騎士団本部へ向い、装備を整え出てくるだろう。


騎士たちならば、この私と6人の下僕で対抗できるだろう。

だが、ネイマー隊長ら6人の隊長と2人の副団長と騎士団長。

彼らは厄介な存在だ。

この知識が事前にあったなら、隊長クラスを最初に狙うべきだったか。


さて、どうしたものか。


31人分の魂を死体に戻しても頭数が増えるだけで、武器が無い。

素手では、蹂躙されるだろう。

それに、屍人部隊を率いるのも、違う気がする。

やはり、俺が率いるのは、骸骨軍団だろう。


よし、今夜はこれで引き上げる。


俺は6人の下僕に仮眠を指示した。

燃やされたり、浄化される危険が迫るまでは、普通の死体として倒れていろ、と。


そうすれば、彼らもあの地下墓地に安置されるだろう。


庭に横たわる6人を確認し、俺は裏口のラムデスと合流した。

こちらに来た騎士はいなかったようだ。


ラムデスの案内で夜の街を走り、北門から森を通り抜け、元の地下墓地に戻った。



地下墓地に戻った俺は、供えられている剣の回収をラムデスと共に行った。

その結果、錆が無いか、あっても使えそうな剣が14本あった。

サイクス達が使っていた6本の剣も回収するべきだったか。


回収した剣を地下墓地の奥の白骨体の寝所に持ち込み、14体に「授魂」した。

変色したり一部欠けている骨もあったが、それら小さな傷は修復し、骨は美しい白い輝きを取り戻した。

黒い眼窩に赤の瞳を持つ14人の骸骨騎士の誕生である。


騎士の魂だからな。骸骨剣士ではなく、骸骨騎士だ。

いつかは骸骨馬も手に入れたいものだ。

それに騎士団に採用された人間だけあって、この魂たちは武技を持っている。

戦力として大いに期待できる。


その後、ラムデスに外の様子を確認させるが、地下墓地出入口周辺の森は静かだ。

サイクスたちの魂も開放された気配が無い。


人間共がここにやって来るとしたら、朝を迎えてからだろう。


魔物は太陽の光の下では能力が半減してしまう。

だが、この地下墓地の闇の中は別だ。


俺たちは通路に隠れて、奴らが来るのを待つことにした。


チュウ。

通路の隅を鼠が走っていく。


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