4話 騎士団寮入口
ラムデスを下僕にした事で、俺の中にラムデスの記憶の一部が読み込まれた。
この街の名はデ・ルー。
ル・ゴール帝国ノールデア領の第三の都市。
執政官はルー伯爵。
そして、伯爵直属の騎士団員が150人ぐらいいる。
これは良い情報だ。
魂を吸い取り、我が骸骨軍団を作り上げるのだが、やはり魂の質が問題だ。
その点、騎士や兵士の魂は戦闘向きだ。
ラムデスは元々はこの街の守備隊に所属していた。
彼の魂も中々に質が良い。
片足を失い、扉番として暮らしていたが、その魂は腐っていなかったようだ。
俺の下僕の屍人となり、痛みを感じなくなった足で、颯爽と俺の前を進んで行く。
ラムデスの案内で、騎士団寮の裏口まで辿り着けた。
寮内の1階には明かりの点いている部屋がある。
大きな音は立てたくないが、裏口の木戸は鍵が掛かっている。
ふむ。
「ラムデス。お前はここで裏口を押さえていろ。」
「はい、マスター。」
俺は建物に沿って庭を通り抜け、正面に廻った。
◇
正面の入口前には2本の魔光灯が周囲を照らし、2人の男が見張りに立っている。
槍を杖代わりに使い、腰には片手剣を提げている。服装は皮鎧の軽装備だ。
「ん?誰か居るのか?」
どうやら手前に立つ男が俺に気付いたようだ。
「どうした。」
「庭に誰かいるようだ。おい、誰だ貴様!」
距離は15歩ぐらいか。
俺は盾を上げ、剣先を向けて駆け寄って行く。
「なに!?」
「だ、誰だ!?」
対応が遅いな。
このような状況は初めてらしい。
手前の男は手に持った槍を捨て、腰の剣に手を伸ばした。
後ろの男は槍を水平に構えた。
「なっ、骸骨!?」
「ま、魔物が、なんで。」
驚いて動きが止まった。
魔光灯の明かりが、俺の白い骨を闇の中に浮き出す。
俺は進路をやや左に逸らした。
手前の男がこちらに向くが、後ろの男の槍先が邪魔になる。
俺は盾で槍の柄を抑えると、手前の男に剣を突き出す。
「くっ。」
手前の男は咄嗟の横移動で避ける。
俺の剣は、奴の右肩に切り傷を刻む。
その剣を、大きく右に振る。
手前の男は、そのまま横移動で剣先を避け、地に倒れ込む。
俺は、その勢いのまま、身体を廻し、剣の横撃を槍の男に食らわす。
剣先は、やや前屈みになっていた槍の男の首に食い込んだ。
その切り口から盛大な血しぶきが上がり、槍の男は膝を突いて、前のめりに倒れる。
「吸魂」
すかさず、俺は魂を吸い取り、
「授魂」
魂を死体に与える。
「くらえ!」
手前の男が剣を上段に構え、俺に迫る。
が、その時には、槍の男が既に目覚めていた。
槍を持つ人間の名はオルガ。
こいつはスキルとして武技「槍の速突き」を持っている。
加速した槍先が、手前の男の胸に突き刺さる。
「な、なんで。」
男は剣を取り落とし、胸に刺さった槍と、それを握っている仲間の顔を見た。
俺は、槍に突かれたまま、まだ息のある男の胸に剣を刺す。
「吸魂」
「授魂」
サイクスとオルガ、二人の屍人騎士を得た。
彼らは、剣を手にする。
二人の瞳は血の様な赤い光を放っている。
彼らの記憶では、今夜の夜警当番は6人。
残りの4人は1階の宿直室で仮眠中だ。
そして、2階と3階の各部屋に騎士団員が眠っている。
都合の良い事に、各部屋の扉には鍵が付いていない。
「では、二人とも良いか。」
「はい、マスター。」
俺は二人を前衛に、騎士団寮に侵入した。