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骸骨軍団  作者: ブルーベリージャム
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3話 北門の扉番ラムデス

【デ・ルーの街・北門の扉番、ラムデス】


くそ、今日はやたらと左膝がうずきやがる。

義足の木の手入れは毎日しているが、そろそろ新しい棒に交換する頃か。

放っておくと腰を痛めるからな。


農民を救った名誉の負傷だが、その後に続く長く不自由な生活と比べると割りに合わない。

まったく、なんであの時、俺は油断してしまったのか。


街の守備隊に入って6年目、22歳の時だ。

分隊長だった俺には3人の部下がいた。

その日、畑の先の森に・・・。


「遅かったなじいさん。足の調子でも悪いのかい?」


昼番のジョセフが声を掛けてきた。

気付けば北門脇の小屋に着いていた。


「お前が気にする程じゃない。次の休みにでも道具屋に行くさ。」

「そうかい。じゃあ、夜番頼んだぜ。」

「おう。」


俺は北門の両開きの木製の大扉を確認した。

閂はされている。

右扉についている通行人用の小扉も閂がされている。

小屋の前に置かれた記帳台にある台帳には本日の通行人の記載はなし。

小屋の中の木机の上の連絡帳にも、神殿からの埋葬予定の連絡は無しだ。

もっとも、この北門の先の墓所に埋葬されるのは街のお偉いさんか騎士団の騎士たちだ。

俺たち一般人は東の山の共同墓地行きだ。


さて、今夜もゆっくりとするか。


俺は椅子に腰掛け、持参した鞄の中から一冊の本と一通の手紙を取り出した。

この手紙は俺の甥っ子の一人、ノーランから届いた物だ。


ノーランは俺の一族の中では数十年振りに出た魔技使いだ。

そのお陰で帝国騎士団選抜試験に合格し、今では立派な帝国騎士として活躍している。


この街にも騎士団はあるが、毎日魔獣たちを相手にしている帝国騎士団とは、出来が違う。

まぁ、騎士団長さんだけは違うが。


俺はノーランの手紙を開いた。


帝国騎士団での生活、頼もしい仲間の事、信頼できる上司。


希望に満ちた言葉が文面に綴られている。


その手紙の最後には、こう書かれている。


「帝国北方騎士団への配属が決まりました。次は前線での活躍をお伝えしますね。」


ああ、お前が活躍するのは分かっている。

今日も何匹もの魔獣を倒していることだろうさ。


人には魔力が備わっている。

普通の人間は、それでちょっとした魔法が使える。

優秀な者は、その魔力を身体強化を応用して手に持つ武器に与える事で、武技というスキルを使える。

さらに優秀な者は、その魔力を形にして魔法陣を作りだし、強力な魔法を使える。神官や魔導士達だ。

選ばれた何人かは、その両方を同時に扱える魔技使いとなる。

彼ら魔技使いは帝国騎士団に呼ばれ、北方の前線に送られ、魔獣と戦う事が義務付けられる。


ノーランからの手紙は今日も来なかった。

名誉の戦死の連絡も、来ていない。


何百回と読んだ手紙を丁寧に封筒にしまい、鞄に入れる。


さて、夜食の用意をするか。

俺は奥の台所に向かった。



今夜は雲が多く赤の月も青の月も姿を隠している。

街の通りには魔光灯の明かりが灯っているが、家々の明かりは消える時間だ。

街外れの北門周辺はすっかり闇に包まれている。


ドッドッ


何だ?

小屋の外だ。

北門の木扉から音が聞こえた。


それも何かがぶつかった音じゃない。

明らかに、今のはノックの音だ。


森で迷った奴が帰ってきたのか?

数年に一度ぐらいは、そういう間抜けな奴が来ることがある。


やれやれ。


俺は木扉に近付いた。

一応、『周辺検知』スキルで周囲を確認するが、魔物の反応は無い。

人の反応も無い。

だが、何かが木扉の向こう側に居る。


何だ?


俺は木扉の覗き窓を開けた。


■■■


俺は右手の剣を突き込んだ。

「ガッ!ァァ・・・」

ドサッ。

お見事、手ごたえありだ。


「吸魂」


木の扉を通り抜けて、青白い輝きの魂が俺の左手に吸い込まれた。


「授魂」


左手から輝きを失った青黒い魂が揺らめき出て、扉の向こうの死体に吸い込まれる。


ガタ、ゴト。

閂が外され、木の扉が開く。


扉を潜り抜け、俺は街への侵入を果たした。


扉の横には、左目から上の部分に剣先の切れ込みがある、血塗れの男が立っていた。

俺の最初の下僕だ。

左足の膝から下に木の棒の義足を着けている。

それで、扉番をしていたのだろう。


「吸魂」した時に、魂の記憶の一部が俺の中に読み込まれた。

この男の名はラムデスだ。


「ラムデスだな。」

「はい、マスター。」

「俺の目的を理解しているな。」

「はい、マスター。」

「案内できるな。」

「はい、マスター。こちらです。」


ラムデスは夜の街を進み、俺は彼の背中を追う。

夜の闇に包まれた街に人影は無い。


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