TURN.9 『魔王・嘲笑う』
少し時は遡って・・・
レオ&シャーリーと別れて行動していた、ユリエルとサザンデルは今後の方針について話し合っていた。
「私はこの王都スターティアを脱出して、ネクスティアまで移動するのが賢明かと思います。」
「ネクスティア・・・我がファストランド王国2番目の都市か・・・。」
「はい、ここを放棄してネクスティアを新都とし王国を建て直すのです。王都はこの有様・・・陛下さえご無事ならばいくらでもやり直せるはずです。」
「ふむ・・・その案が良さそうだな。このまま王都と民達を見放すのは心残りだが・・・」
「お気持ちは分かりますが・・・民を救うには体勢を立て直さなければ。」
「この度の襲撃で王国騎士団は壊滅。先ほどから切り捨てている魔物共の数、この王都全体が魔物に蹂躙されていると見るべきでしょう。」
騎士団長サザンデルはユリエルと会話しながら、拾い物の剣で魔物を次々と切り捨てている。
レオ、シャーリーが別行動をした後、デモリウス配下の魔物達がユリエル達に気付いて襲撃をかけてきている。
今は魔物の群れに襲撃されている真っ最中であった。
「サザンデル騎士団長。あまり無理はするな。そなたも先の魔王に負わされた手傷が痛むであろう・・・。」
「お気遣い痛み入ります。」
「・・・ですが、これこそが・・・陛下を、この国を護る事こそが!!」
「・・・騎士の本懐であります!!」
サザンデルは怪我人とは思えない程の強さで魔物達をなぎ倒していく。
「ご苦労。しかしサザンデルよ、ネクスティアに行くだけではまたスターティアの二の舞になるだけであろう。私にはもう一つ考えがあるのだが・・・」
突如、空からこちらを嘲笑うように声が響く。
「・・・王サマよ!」
「!?・・・この声は・・・」
ユリエルとサザンデルが上空を見上げる。
「・・・そんな計画が通ると思うのか?・・・このオレ様を前にしてなあ!?」
闇夜に黒翼が蠢く。
七大魔王・デモリウスが再び目の前に現れるのだった。
「七大魔王!!先ほどは後れを取ったが次こそはここで仕留めてくれる!!!」
サザンデルが剣を構え臨戦態勢に入る。
「はん!学習能力がねえのか?デカブツめ。もう一度ボコられなきゃわからねえか・・!」
「何とかできるものなら何とかしてみろや!!」
デモリウスが手を掲げ呪文を唱え始める。
「・・・大気に眠りし火の精霊よ。我が命に従い幾百の炎を生み出せ・・・」
「・・・火炎の雨!!」
サザンデル達の上空に飛行しているデモリウスの周りに無数の火球が出現し・・・次の瞬間炎の雨となって降り注ぐ。
「サザンデル騎士団長・・・下がれ!私がシールドを張る!!」
「いえ、陛下!ここは魔力の温存を!!」
「ウォォォォオオオオオッ!!!!!!!」
サザンデルはユリエルの盾となり、激しい雄叫びと共に降り注ぐ火球を切り払っていく。
「!?・・・相変わらず人間離れした強さじゃねえか・・・ムシケラにしては褒めてやるよお!!」
「ほざいてろ!!強化魔法:『ジャンピング・ホッパー』!!」
サザンデルは脚力強化の魔法を使い、圧倒的な跳躍力で上空に跳ぶ。
「・・・覚悟!!」
そして一瞬で間合いを詰めてデモリウスに斬りかかる。
「ちぃっ!!だがな!!」
しかし紙一重の所で躱され、剣は空を切る。
「・・・自由自在に空を飛べるオレ様になあ!!」
すかさずデモリウスはサザンデルにカウンターの回し蹴りを叩き込む。
「・・・ぐはっ!!」
「・・・ただ飛び跳ねるだけのバッタが勝てるわけねえだろお!!」
サザンデルは地面に叩きつけられ、すさまじい土煙が舞い上がった。
「・・・ちっ・・・視界が塞がっちまったか。」
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「サザンデル騎士団長・・・大丈夫か?」
「申し訳ございません。不甲斐ない事です・・・一度ならず二度までも・・・」
サザンデルは傷だらけになりぐったりしている。
「建物の陰に咄嗟に隠れたが・・・見つかるのも時間の問題だろうな。」
「あの空を自在に移動できる翼・・・あれがある限り奴の絶対的優位は揺るがない・・・何とかせねば。」
「『ヒール』・・・」
ユリエルが回復魔法をサザンデルに使用する。
「おお・・・体の痛みが引いていく・・・!?」
「私のとっておきだ・・・。応急処置だがな。」
回復魔法は体の傷を癒す聖なる魔法。使える者はこの世界に数える程しかないと言われている。
「陛下がまさか使い手が希少な回復魔法をお使いになられるとは・・・」
「希少な力は狙われやすいからな。私が回復魔法を使えるのは皆には秘密にしていたのだ。」
「そんな貴重な魔法を私めに使っていただけるとは・・・!!有難き幸せです。」
サザンデルは感極まって涙を流していた。
「おいおい、それは流石にオーバーであろう?」
「ところでサザンデル騎士団長。もう一度あの魔王と斬り合う元気は残っているか?」
「は!奴を倒すためなら何度でも立ち上がりましょう!」
「そうか・・・では、あのカトンボに一泡吹かせてやろうではないか。」
ユリエルはニヤリと笑った。
【※読者の皆様へ】
今回もお読み頂き有難うございます。
次回から王様達の反撃開始です!
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