TURN.3 『フリーター・捕まる』
レオのシャーリーに対する第一印象を追記しました。
― 数時間前 王宮内
『ドンガラガッシャーン!!!』
変な名前のちょっと古臭いギャルみたいな喋り方の女神によって光に吸い込まれた僕は、どこかの倉庫か何かに飛ばされたらしい。
何か固い物の上に落とされた。
「イテテ・・・ここはどこだ?」
ふと自分の落ちた場所を触ると手に何か当たったので拾い上げてみる。
「これは・・・金貨・・・?」
煌びやかな金貨、よく見ると足元に沢山。
それだけじゃない、金貨が入っていたと思われる宝箱(多分、僕が落ちてきた衝撃で壊れているが)や他にも高そうな剣やら壷やらが置かれている。
『バタン!!』
突然、倉庫の扉が開く。
「そこまでだ!この盗人め!!」
アニメに出てくる中世の騎士みたいな雰囲気の男2人が部屋に入ってくる。
手にはギラリと輝く剣を携えて・・・。
「わあ!!ちょっと待って・・・これには事情が・・・グヘッ!」
そう言おうとした瞬間殴られて拘束される。
「問答無用!!捕らえて牢にぶち込んでおけ!!」
そんなこんなで僕は話も聞いてもらえず牢屋に投獄されてしまった・・・。
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「それで・・・キミはこう言いたいの?別の世界から女神様に連れてこられた・・・と」
檻越しに僕の話を聞いていた女騎士は呆れた顔でそう返してきた。
栗色の髪をしていて、赤い瞳をしている・・・とても綺麗な女の子だ。
正直結構タイプだな・・・。
・・・とか僕は能天気な事を考えながら弁明を続けた。
「そうなんですよー!あの宝物が沢山ある部屋には変な女神に無理やり連れてこられて・・・」
「いやいや、そんな言い訳信じられる訳ないでしょ。」
僕の言葉を遮るように女騎士はこう言った。
「そんな・・・」
「(女神が連れてきた別の世界の人間・・・?まさかね。)」
「とりあえず、本当の事を話しなさいな。どのみち王宮の宝物庫に忍び込んだ時点で死刑でしょうけど。」
「うわーん!弁護士を呼んでくれーー!!」
僕は子供みたいに泣き喚く。
「ええーい!いい大人が泣くな!!」
彼女が僕の態度に見かねたその時だった。
『ドグアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!』
「なんだ!?」
凄まじい轟音が場内に響き渡った。
僕達の視界も突然真っ暗になっていった・・・。
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私はユリエル・ファストランド・ヴェルニル。
今年10歳になる頼りない王ではあるが、ファストランド王国の国王を務めている。
父上と母上は数年前、魔王軍に襲われた村々を慰問した際に、待ち伏せていた魔物共に襲われて命を落とした。
それ以降は幼いながらも私が王位を次ぎ、周りの皆々の助けも得て何とかこの国をまとめて来たつもりだ。
今、そんな我が国が危機に瀕している。
突如、場内に轟音が鳴り響いたかと思えば、この王宮が崩れ周囲にいた多くの臣下達が目の前で命を散らしていった。
(これは現実か・・・・?)
「いたい・・・」
全身に痛みが走る。
王宮で大事にされてきた私にとってこんなに全身傷だらけになったのは初めての事だ。
「陛下!!ご無事ですか!?」
そう叫んだのは王国騎士団長サザンデル。この国最強の勇士である。
「私は無事だ!!それよりも城内のものや城下町の民は無事なのか?」
「いや、それよりも何があったのだ・・・?何故こんな・・・。」
『ドガアアアアアンンン!!!!』
再び轟音が響き、あちこちで爆炎が上がる。
城から見える美しかったはずの街も火の手に包まれている。
「見つけたぜ。大将!!」
不意に聞きなれない声が辺りに響く。
声のした方向を見上げると、人が宙に浮かんでいる。
いや、人ではない。頭に角が生えている・・・そして背中に真っ暗な翼が生えており、それで飛翔している。
「お主、魔族か・・・この事態はお主が・・・」
「陛下、お下がりください。」
「貴様、何者だ!?」
サザンデルが剣を抜き、黒翼の男に向けて構える。
「おいおい・・・人に名を訪ねるときはまず自分からってママに習わなかったのかあ?」
ふざけた物言いをしているが只者ではないことをサザンデルも私も感じ取っていた。
「ま・・・いいや、俺はデモリウス。七大魔王って言った方が分かりやすいかあ?」
不気味な瞳をギラつかせて、その男はそう名乗った。
「ユリエル・ファストランド・ヴェルニル陛下どの。てめぇとてめぇの大事な国民の命を狩りに来たぜえ!!」
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「うーん・・・」
途切れた意識が戻ってきた。
牢屋の中にいたはずだが、衝撃で周りの壁が崩れてしまったようだ。
あたり一面瓦礫に包まれており、牢屋も壊れてしまっている。
運よく瓦礫に埋もれずに済んだようだ。
「(一体何が・・・この状況逃げられるか?)」
そんな事を考えた時に、近くから小さな声が聞こえた。
「・・・ぅぅ・・・・・」
声のした方の瓦礫をのけると、先ほど自分を取り調べしていた瓦礫の下の空洞に女騎士がいた。
見たところ、ケガはしているようだが、瓦礫と瓦礫の間が空洞になっていて彼女も運良く助かったらしい。
「大丈夫?」
小さな瓦礫を取り払って声をかけた。
「ん・・・君はドロボー君?・・・助けてくれたの?」
「肩を貸すよ!ひとまずここから逃げよう!!」
僕は彼女を肩に担いで地下の出口を求めて歩き出した。
だが日頃からの運動不足と筋力不足。
現代人はそんなにパワフルではない。
「うう・・・重い・・・」
「な・・・!重くないし!!」
先ほどまで淡々としていた女騎士は少女のように顔を赤らめてこちらに軽く頭突きをして来た。
「いて!ゴメンナサイ・・・」
それを見て思わずにやけてしまった。
「な・・・何がおかしい!?」
「いえ!なんでも・・・」
これ以上怒らせてはまずいと思い誤魔化した。
「しかし、いったい何が起こったの?」
「すごい衝撃だったね・・・牢屋壊れちゃったし、壁も崩れまくってる。僕ら運が良かったよ。」
そんな僕を見て女騎士は不思議そうに言った。
「キミ、サクラ・レオとかいったっけ。・・・なんで逃げなかったの? 私なんて見捨てて逃げたら良かったのに。」
「レオでいいよ・・・目の前でケガして倒れてる人放ってはおけないでしょ・・・」
「・・・シャーリー。」
「え?」
「私の名前。シャーリー・ガーネット。」
そして僕らはやっとの思いで地下牢の出口へと辿り着いた。
【※読者の皆様へ】
今回もお読み頂き有難うございます。
引き続き導入部分になります。
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