TURN.1 『フリーター・転移する』
僕の名前は佐久良 礼央。
どこにでもいる平凡なフリーター(今年20歳)だ。
好きな食べ物は牛丼。しし座のO型。
今日は趣味にしている、世界的に有名なカードゲーム「デュエル・ファンタジア」の地区大会の日。
この日のために戦略を練り直して、デッキ調整も万全にしてきた・・・。
(ん?デュエル・ファンタジアとは何かって?)
それは皆さんご存知の通り、40枚のカードを組み合わせて「デッキ」を構築。
様々なモンスターや魔法のカードを用いて対戦する世界一熱いカードゲームさ!!
相手のライフポイントを先に0にした方が勝ちという、よくあるシンプルなルールのゲーム。
前回は町内大会ベスト16と微妙な結果だった。
今回こそは決勝まで進んでみたいものだ。
「さてと・・・会場はここか。」
目の前には多目的ホールが複数入っているビル。
自宅最寄り駅から3駅移動した繁華街に立地している。
会場はここの3階らしい。
入り口は自動ドアになっていた。
不思議なことに周りには人の気配が無い。
張り切って少し早く来過ぎたのだろうか・・・(笑)
「ん・・・? なんだこれ?」
入り口に入ろうとした時、建物の前にカードが1枚落ちていた。
裏面の絵柄は見た事の無い紋様をしている。
見ていると少し気分が悪くなる気がする・・・。
「見た事の無いカードだ・・・。大会参加者の人が落としたのかな?」
僕は何気なくそのカードを拾い上げてカードを表に向ける。
その表面は何も印刷されていない白紙のカードだった。
「白紙のカード?印刷ミスのエラーカードか―」
そんな他愛無い事を考えた刹那、白紙のカードが強い輝きを放つ。
「!?」
僕の意識はその光に吸い込まれるように突然薄れていった・・・・・。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あーしの名前は「まゆぽん」。
神族と魔族の世界である、この天魔神界の企業、【異世界リクルート(株)】の新入社員。
人間達でいうところの『女神』と呼ばれる存在かな?
さっき、上司からとてつもなく面倒くさい仕事を振られてマジだるーい・・・と思っている。
あーし達の仕事は滅びかけた世界に勇者を派遣する人材派遣業を行っている。
今回、あーしに振られたのは攻略難易度『マキシマム・ダブル・エクストリーム』の世界、【ユニティア】。
ライバル企業、【(株)魔界スタッフ】社が魔王軍を派遣している世界で既にうちの会社から派遣した勇者が11人も攻略に失敗している・・・らしい。
(いきなり、こんな勝ち目のないエリア担当なんて、マジでツいてねーな・・・・)
そんなあーしの目の前にいた男がこうつぶやく。
「・・・で、僕はどうしてこんな所に連れてこられたんでしょうか?」
そう話すこいつはさっき【異世界ゲート】を開いて異世界から召喚した人間。
【異世界リクルート(株)】では世界のバランス調整のため【チキュー】という割と平和な部類の世界から特に連れてきても世の中に支障ないレベルの人材を勇者として連れてくるのが鉄板だ。
「かくかくしかじかのうまうま」
あーしは、何となくの経緯をテキトーに話した。
「なんですか。かくかくしかじかのうまうまって・・・」
「・・・って何故か理解できた?」
連れてきた人間、佐久良 礼央はそうつぶやく。
「あはは~、理解してくれてうれし~☆」
「では改めて私の名前は女神『まゆぽん』!ヨロシクね~☆」
「(変な名前・・・)僕は佐久良 礼央。」
「理解はしたけど・・・異世界を救うために勇者として戦えって事?」
「嫌だよ、そんな危ない事。」
こいつ・・・普通に拒否られた。めんどくせーな。
「あー・・・拒否権はないから★」
「あんたらの世界で神隠しってあるっしょ?あれ私たち神族がこうして異世界に君たち人間を招いた時に起こるのよ★」
「え・・・極悪非道な!元の世界に帰せ!!地区大会に出場しないといけないんだ!!」
地区大会?何言ってんだこいつ。
「だめ~、あーしも仕事なんでごめんね~」
「でも攻略特典で魔王を倒して世界を救ってくれたら、何でも一つだけ望みを叶えちゃうよお☆」
「それで元の世界に帰りたいなら帰してあげる~♪」
「そんな滅茶苦茶な!!だってあなたの話だと僕の前に連れてこられた11人の勇者は負けちゃったんでしょ?それって・・・」
「うん、負けってことは死ぬってことだよ★」
「・・・!!!」
「そいじゃ頑張ってね~☆」
あーしは【ユニティア】へ繋がる異世界ゲートを開いてそいつを吸い込んだ。
「これはさっきのカードの光!?ちょっとま・・・」
よし、異世界ゲートで強制転移完了♪
「あ・・・『異界宝具』の事説明してねーや! ま、いーか★」
【※読者の皆様へ】
小説初めて書いてみました。
拙い文章ですがお読み頂き有難うございます。
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