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5【山田仁の近況にして日常】

こんな感じ? イメージ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

|       |     |       |

| 第一会議室 | 校長室 | 第一応接室 |

|       |     |       |

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         廊下

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

校長室からも、直接横の部屋に行けるんですよ。

 国際魔法学園に於いては人も物も、求められるのは質のみである。

 しかし、校長室、第一会議室、第一応接室の三つの部屋に限り、質と同水準の見栄えが求められた。

 理由は単純であり、その部屋を訪れる者達に様々な印象を与える為だ。時に畏怖を、時にくつろぎをと。

 当然、見栄えとは金、銀、宝石ではなく魔法である。



 強度や使用感、手入れのし易さ等を基準に作られたのであろう、テーブル、椅子、グラス、そして部屋そのもの。

 飾り気はないが、使われている素材が持つ宝石の如き美しさが故、見る者に華美な印象さえ与える一室。

 見るものが見れば一目で理解できるだろう。

 それら全てが魔法金属を材料としており、莫大な魔力を以って緻密に成形されている事が。

 そして当然、今ここに居る六名は全員がそれを理解していた。

 ここは国際魔法学園の第一会議室。

 若い男が一人、若い女が二人、年老いた男が三人。

 それぞれ離れ、無秩序な席次で長方形のテーブルを囲んでいた。

 もう五分ほど、会話どころか呼吸音すら無い静寂が続いていたが、前触れなく扉を開く音が響き六名全員がそちらへ顔を向けると。

 会議室の隣の部屋━━校長室━━の扉から若い男が一人、顔だけを覗かせニヤニヤと笑っていた。

 それを無反応に見やる六名と笑う男━━山田仁━━の構図は無音のままに一分間続いた。



 仁は思った━━

 ・・・・・・無反応だよな。けど押しても引いても無駄じゃ取っ掛かりが掴めないな。

 と。

 諦めた仁は会議室に入り手近な椅子に座った。

 そして無機質に切り出す。


「レーダーの試運転を始めたい。それぞれに三機ずつ貸し出し、そちらの指示で設置、運用を行う」


 しかし後は続かず、誰一人何も喋らずに数十秒が経過した。

 それを受け仁が再び口を開く。


「俺は以上だ。他にあるか?」


 すると目を閉じたまま開かない、真っ白な肌の老人が若干眉を潜めて言う。


「あの女はどうなった?」


 それに反応したのはプラチナブロンドの髪を持つ若い女だった。

 女は無機質なままに答える。


「魔物使いよね? 事件の翌日に死んだわよ」


 すると肌の白い老人は眉だけを跳ね上げ、気の抜けた様子で返す。


「死体を此方に送っておけ」


 そして再びの沈黙の後、仁が三度みたび口を開く。


「解散でいいな?」


 やはり返答は無く、六名は同時に姿を掻き消した。

 残された仁は一人、校長室へと戻る。

 仁は嬉しく思った━━

 ・・・・・・最初の会議から二ヶ月も経つのに、思い通りにならないな。

 と。



 校長室に戻ると満面の笑みを浮かべたイーナに出迎えられた。


「校長━━」


 彼女は笑みを浮かべたまま何某かを言いかけたが、試しにそれを遮り無理矢理にキスをした。

 一瞬驚きを見せた彼女だったが、深いキスをするとそれに応えてくれる。

 以前の彼女なら「仕事中に何を」と烈火の如く怒り狂っただろうに。

 最早分かりきっていたが、床に使われているアダマンタイトにクッション性を持たせベッド状にし、彼女をそこに押し倒した。


「きゃっ!・・・・・・まだ明るいですよ、仁さん・・・・・・」


 頬を赤らめ薄ら微笑む様子に否定的なものは感じない。


「ダメかな?」

「ダメでは・・・・・・ありません・・・・・・」


 やはりもう彼女は拒まないな。唯々諾々だ。



 俺の予想通りにしか動かないんじゃ一人芝居と同じだ。

 彼女━━イーナ━━が目を覚ましたのは一九時を回ってからだった。


「んっ・・・・・・仁さん・・・・・・?」


 彼女はソファーの上で、毛布を胸元に押さえ寝惚け混じりに身体を起こす。

 そして光の差し込まない窓と、執務机に向かう俺を見るや否や全裸のまま直立する。


「あッ! 申し訳ございません! 私こんな時間まで━━」

「いや、気にしなくて良いよ。加減しなかった俺も悪いから」


 目を見て笑顔で伝えると、彼女は少しだけ自責の様子を潜めた。


「承知しました。以後━━」

「ハハハ、服着なよ」

「あっ」



 五分程で着替えを終えて、仕事に戻ろうと意気込む彼女に真面目くさった態度で伝える。


「イーナ、俺は君に飽きたんだ。けど尽くしてくれたお礼はしたい。能力相応なら何処にでも椅子を用意するから希望を教えてくれるかい?」


 すると彼女は驚きを見せ言葉を失い、数秒間動きを止めた。


「もちろん秘書を続けても良いけど、異動した方が楽だよ」


 と時間節約の為に彼女がするだろう選択を提示して、無駄と知りつつ勧告もすると若干青褪めながら慌てた様子で声を出した。


「えっまっ、こう仁さん! 私は貴方のお側で━━」


 駄目だな。


「そっか。それじゃあ異動したくなったら言ってね。後、仕事中は校長と呼ぶように教えたよね」


 話を区切り執務に戻る素振りを見せると、彼女は少し裏返った声で叫ぶ。


「ぇッお待ち下さい校長! 私は━━」

「いやいや。君がどうこうじゃなく、俺が飽きたんだって。君は一度聞いた事は理解できる筈だよね」


 確認の為に彼女の瞳を覗くと、彼女は血の気が引いた顔に無理解を湛えながら。


「承知しました」


 呟いた。

一人称より三人称の方が描きやすい気がします。

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