3【俺達は勇と義の元、戦った。そして三年かけて魔王を討伐し、地球へと帰ることができたんだ。】
とある高校の二年A組。
校舎の三階にあるその教室が、突如静寂に包まれた。
つい先程まで授業中の雑音に満ちていたその教室には、クラスメイトも教師も誰一人欠けずに揃っている。
が、彼等は一様に武器や防具を身に付けており、約半数の人間が周囲を睥睨し警戒を露わにしている。
そんな中、呆然としていた一人の少女が驚愕と共に口を開いた。
「・・・・・・アタシ、心臓が・・・・・・生きてる・・・・・・」
その直後、少女を筆頭に一六人の男女が、自身が蘇った事へ喜びの声を上げた。
しかし一六人を除いた一五人の男女は警戒したままに身じろぎ一つしない。
その一五人の内の一人、ローブを着た少年━━三浦━━が突如凄まじい速度で窓へ向かって跳ぶ。
がその直後、三浦の背後に現れたプレートアーマーの少年━━一条━━が長剣を横薙ぎにした。
一条の鋭い一閃が三浦の左脚付け根を捉えた瞬間、両者とも弾かれたように吹き飛ぶ。
三浦は窓を突き破り外へ投げ出され。
一条は教室の壁を少し壊したものの、ギリギリ教室内に踏み止まる。
どちらも怪我一つ無く、三浦はそのまま空を飛び瞬く間に校舎を離れ、それを見た一条を含む一〇人の男女が後を追おうと動いた瞬間。
全身黒タイツの少年━━大空━━が拳を振り上げ━━
それを見た一〇人の内、四人が大空へ接近し六人が三浦へ接近した。
否、接近しようとした。
大空へ接近しようとした四人は、これまで動きを見せなかった二人の少年に道を阻まれ近付くことができず。
それを見た六人の内、一条を含む五人が大空へ向かい、一人はそのまま三浦を追うため窓から飛び出そうとする。
しかし、大空へ向かった五人は突然現れた透明な壁━━結界━━に道を塞がれ、窓を突き破ろうとした一人もまた結界に行く手を阻まれた。
━━五人が結界を破壊したと同時。
━━大空の拳が床へ叩きつけられた。
三浦の初動からこの間〇・〇〇〇〇一秒未満。
蘇りへの歓声を上げていた一六人は一連の出来事を認識する事も無く、彼らが気づいた瞬間には校舎は倒壊を始めていた。
♯
三浦を除き、クラスの三〇人全員が倒壊した校舎の上で宙に浮いていた。
一条が苦い顔をしてもどかし気に、結界を張った少年━━山田━━へ問い掛ける。
「こっちの世界には魔法も異能も、全部ないかも知れない。もしあったって爪弾きにされるとは限らない。何より地球には地球の歴史がある。分かってるだろう?」
「みんな全部分かってる。地球に魔力がある事も、希望的観測や情けは命取りだって事も」
その言葉に一条たち一〇人中、一人が苦い顔をし、六人は反応を示さず、一条を含む三人が諦めたような気の抜けたような顔をした。
その直後、彼らの脳内に声が響いた。
━━全ての人類に告ぐ。我々は宇宙人だ━━
♯
━━と言うのは冗談だ。ああ、全ての人類に告げるってのは本当━━
━━さて、俺は日本に住む日本人で、〇〇高校の二年A組、三浦圭太だ。日本に住んでいる人は空を見て欲しい━━
━━東京の真上に見えるだろう? 黄金のデカイ鳥とか色々。これ全部魔法な━━
━━ぁあ、寝てた奴は起こして悪いな。少し話を聞いてくれ━━
━━俺たちはついさっきまで異世界に居た。異世界には魔法も魔物もあった。その異世界で魔王を倒せって言うネット小説みたいな状況になった━━
━━んで色々あって、魔王を倒した俺たちはついさっき地球に帰ってきた━━
━━信じ難いだろうが全て事実だ。と、俺たちってのは担任を入れたA組全員な。全員、異世界帰りだ━━
━━で、ここまでは事前説明━━
━━ここからが本題だ━━
━━魔法使いたくないか? 極めれば何でも思い通りらしいぞ?━━
━━もしも、少しでも人生を良くしたいと思うんなら━━
━━俺の声に集中しろ━━
━━その上で、思い浮かんだ言葉を口にしろ━━
━━お前たちは今、魔力による干渉を受けている━━
━━その魔力に意識を集中し受け入れる事で、魔力を理解できる━━
━━五七億人って所だな━━
━━今この瞬間、地球に五七億人の魔法使いが生まれた━━
━━今は俺が伝えた、水を作り出す魔法しか使えないだろう━━
━━けど、魔力をより深く理解し、より上手く扱えるようになれば思い通りの魔法が使える━━
━━五七億人居る━━
━━その中で上に立ちたければ、誰よりも努力しろ━━
━━まずは魔力を体内で自由自在に動かせるようになれ━━
━━今は頭の辺りにあるそれを、腹に移動させたり、回転させたり、手足に移動させたりしろ━━
━━一週間後に、次のステップを教えよう━━
━━因みに、俺の声が聞こえてない奴は魔力の干渉を防げる奴だ━━
━━周り見てみろ。一人くらい居ないか? 居たらそいつは魔法使いだぞ━━
名前を覚えて頂く必要はございませんm(_ _)m
再登場した場合軽い人物説明が入ります。