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A.Q.U.A.R.I.A  作者: Ирвэс
第四章 嵐の前の静かなる凪
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第38話 忌まわしき記憶の奔流 File.2

今回からリラの過去回想に入りたいと思います!と言っても要点掻い摘んで書いただけですのでご了承下さい。


散々引っ張っといてこれかと思うでしょうけど、そもそも虐めなんて胸糞な内容ツラツラ描かれたって読んでて気持ち良く無いでしょうし。その代わりと言っては何ですが、次回は少し気合い入れて書きますので何卒宜しくお願いします。

 それは、思い出すだに忌まわしい記憶でした。中学1年に入ってから少し経つ頃、リラは周りの女子達から虐めの標的にされる様になっていたのです。1番良く覚えているのは最初の虐めの始まり。或る朝、何気無く登校した時に自分の机に書かれた、「死ねゴミクズ!!」と言う残酷な中傷の言葉でした。


 「何……これ………?」


 突然自分を襲った理不尽に、リラは言葉も有りませんでした。すると突然後ろから丸められた紙の球を投げ付けられた為、恐る恐る振り向くと、其処には友達と思っていた悪魔達の姿が有ったのです。


 「どうリラ?驚いた?」


 「理緒奈(りおな)…ちゃん……?」


 彼女の目の前に立っていたのは、同じクラスメイトで仲の良かった少女と、その取り巻きの女子達でした。


 「そんな…理緒奈ちゃん、どうして!?何でこんな事…」


 「るっさい!!触るんじゃないわよ、ゴミクズの癖に!!」


 「あぁっ…!」


 どうして自分の机にこんな落書きをしたのか尋ねようとするリラを、「理緒奈」と呼ばれた少女は乱暴に突き飛ばします。訳も分からぬまま相手の顔を見ると、少女はまるでゴミでも見るかの様な侮蔑の目で自分を睥睨しているのが分かりました。周りの生徒達は朝から飛んだ光景を目の当たりにしてドン引きしつつも、関わり合いになっては不味いと見て見ぬ振り。知らぬ存ぜぬの事勿れ主義でした。

 やがて8時になってホームルームが始まったのを受け、先生が入って来た為にその場は収まりましたが、その日からリラの地獄が始まったのです。


 或る時は授業中に消しゴムの欠片を投げ付けられる嫌がらせを受け、堪りかねて抗議の声を挙げれば空気も読まない痛い奴と叩かれ、赤っ恥を欠かされた事も有りました。

 トイレに行けば、理緒奈の取り巻き以外にも何時の間にか増えている加害者達から集団で暴行を受け、放水や頭に雑菌まみれのモップを押し付けられて“掃除”されると言う、創作物で見られる様な仕打ちを受けた事も有ります。



 一連の虐めの切っ掛けが何だったのか、リラも今となっては思い出せません。と言うより、皆目見当が付きません。先程述べた通り或る日突然、昨日まで仲良く接してくれていた子達が……いいえ、自分を孤独から掬い上げてくれた子達が冷たくなり、自分に牙を剥き始めたのですから。

 小さい時から、リラはずっと孤独でした。昔から人見知りで空想好きで、ずっと本を読んだり絵ばかり描いていた彼女は、自分の世界に入り浸るのが好きでした。それ故、友達と呼べる者はおらず、ずっと周囲からも浮いていたのです。本来なら、この時点で虐められていても可笑しくない人物像だったリラですが、奇跡的に彼女の周りにはそんな相手はいませんでした。

 両親は海外で共働きをしている為に滅多に家に帰って来ず、帰って来るのは月に1度有るか無いか。小学5年生になるまで、祖母のユラがリラの面倒を見てくれていたのでした。然し、そんな祖母が或る日散歩に出かけた時に突然倒れ、帰らぬ人となってしまったのです。それがリラにとって、どれ程深い悲しみと絶望だったかは想像に難く無いでしょう。

 それ以来、リラは完全に1人ぼっちになりました。お金は毎月両親が仕送りしてくれた為、生活には不自由しませんでしたけれど、何時も1人で食べる食事には温もりなんて有った物では有りませんでした。

 寂しさを紛らわす為、リラはますます本や小説、漫画に耽ったり絵を描くのにのめり込む等、更に自分の世界に入り浸る様になってしまい、結果として周囲と比べても浮世離れした子に育っていたのです。物思いや空想に耽る癖は、こうして育まれて来たのでした。


 ですが、中学1年になる頃、リラと友達になりたいと言う子が現れました。


 「ねぇ汐月さん、今日一緒に帰らない?」


 「えっ?良いの?」


 或る日の放課後、一緒に帰ろうと誘ってくれた少女がいました。彼女こそ『八十島理緒奈(やそしまりおな)』。リラが中学で出来た最初の友人でしたが、後に最低最悪の虐めっ子となる相手でした。

 誰が見ても美少女と呼ぶに相応しい容姿の持ち主で尚且つ社交的。

 授業でも先生から指名されれば正解を即座に答える優秀さ。

 加えて調布の市議会議員を父親に持つお嬢様!

 これ等の三拍子が揃った彼女を、最初リラは羨ましいと思うと同時に憧れてもいました。そんな彼女とお近付きになれて、友達のグループに誘われるなんてリラにとって夢の様な幸運!それこそ月一で帰って来る両親にも、嬉々として報告する程でした。


 「もう、遅いよ理緒奈!って汐月さんじゃん?」


 「うん。汐月さん、何時も1人で絵描いたり本読んでるから、面白い話が聞けるんじゃないかなって思ってね♪」


 緒理奈に連れられて校舎を出ると、既に彼女と仲の良い子達が4人待っていました。『西堀小梅(にしほりこうめ)』、『磯山斐子(いそやまひこ)』、『鹿瀬友紀(しかせゆき)』、『金森絹江(かなもりきぬえ)』の4人の友人達がそうです。

 彼女達の仲良しグループに迎え入れられたリラは、クラスでも他愛の無いガールズトークに混ざろうともしました。然し、元々人と話すのが得意でなかったリラは内容に付いて行けず、何時も的外れな事を言ったりして滑る事が少なからずありました。


 「ちょっとリラ、其処そう言う話じゃないんだけど?」


 「てかリラって人の話ちゃんと聞いてないとこ有るよね?」


 「ご、御免……。」


 今思えば、「話も碌に聞かない奴」と思われていたのかも知れません。時が経つにつれ、周りのリラの扱いも少しずつぞんざいになって行きました。学校の給食の時も人気の品を無理矢理取られたり、学校帰りに鞄等の荷物を押し付けられたり、果ては教科書や文房具を忘れた時には無理矢理借りられて礼も無しと、体良く利用されていると言わざるを得ない事案が少しずつ増えて行きました。

 然もその時彼女達は言うのです。「私達、友達でしょ?友達なら困ってる時助ける物じゃん?」と―――――。

 その癖、リラが何か忘れ物をしても「あんた忘れんのが悪いんでしょ?」、「自分で何とかすれば?」と心無い言葉を投げ掛けて助けてもくれません。


 理緒奈達は、まさしくそうやって都合の良い時だけ友達を自称して近付き、利用しようとして来る子供ながら根の腐った連中だったのです。流石に其処まで看破するとまでは行かなくても、自身への扱いからリラは彼女達に疑心を抱く様になりました。


 (理緒奈ちゃん…本当に私の事友達だって思ってるのかな?だったら何か有った時に私の事だって助けてくれても良いのに、どうして何もしてくれないの……?)


 それでも一緒に帰る仲だったし、その時はリラも我慢して付き合っていました。

 然し、或る時を境に彼女達の中に潜む悪意が、ピラニアかカンディルの如くリラに襲い掛かって来る事になるのです。同時に理緒奈との出会いは、これからリラにとって幸運から不運へとすり替わって行く事となります。

 少々話が前後してしまいましたが、これからリラの身に降り掛かった過去を、改めて時系列順にお話しして行きましょう。



 机に誹謗中傷を書き込まれたその日から、リラの虐めは日に日にエスカレートして行きました。連日の様にトイレで放水されたり、時には昼休みに黒板一杯に同じ様に中傷文をびっしりと書き込まれ、美術の課題で描いた絵を破り捨てられる始末。更に校舎の裏庭に連れ出されて理緒奈に篭絡された男子から殴る、蹴るの暴行までリラは日常的に受けていました。

 挙句の果てにはLINEを始めとしたSNSでも彼女達から読むに堪えない罵りの言葉をぶちまけられ、リラは精神的にも肉体的にも物の数ヶ月で追い詰められていたのです。当然、涙を流さない日なんて有りません。月に1度帰って来る両親に対しても心配を掛けまいと、本当の事が言えずにますます彼女の心は苦しくなって行きました。

 取り分け、中庭で理緒奈の手先となった男子達から殴る、蹴るの暴行を受けた時に彼女から言われた言葉が、リラにとっては最初の机の件以上に忘れられません。


 それは夏休みが明けた或る日の事でした。終業後、リラは理緒奈に捕まって裏庭へと連れ込まれた挙句、彼女の息の掛かった2人組の男子からストレス解消と称して酷い暴力を受けていたのです。


 「ホラよ理緒奈、これで満足か?」


 「うん♪貴方達も上出来よ!有り難う!後でご褒美あげないとね♪」


 「おう、サンキュ!」


 「つーかこいつ、本ッ当ウジウジしててムカつくよな!目の色だって絵の具塗ったくったみてぇに青くてキメェし最悪だぜ。こんな奴、どーせ何処行ったって同じ目に遭ってたんじゃね?」


 「全くだぜ。つーか未だ生きてたんだな。さっさと死にゃ良いのによ!」


 そう吐き捨てた男子が去って行くと、其処に残されたのはボロボロになったリラの姿でした。理緒奈と2人切りになると、その場に倒れた状態で息も絶え絶えになりながらリラは尋ねました。


 「ど…う……し…て………?」


 「んん~?何ぁにぃ?聞こえないんだけど?」


 「どうして…こんな事するの……?私……貴女に…何か…悪い…事したの………?友達だって……思ってたのに………!」


 「は?友達?私が?あんたと?」


 リラの問い掛けに、理緒奈は世界一面白いギャグを聞いたかの様に爆笑すると、再度ゴミを見る様な目でこう答えます。


 「馬ァ~~~~~~~ッ鹿!友達って自分と同レヴェルの相手となるモンでしょ?何で私があんたみたいな低レヴェルのゴミクズと友達なんかになんなきゃなんない訳?」


 「そ…そんな…どうして………?」


 本当は自分の事なんて友達とも何とも思っていなかった――――。

 それ処か、取るに足らない虫ケラとしてしか見ていなかった――――。

 友達と思っていた相手から全否定の言葉を投げ掛けられ、リラは言葉も有りません。


 「気に喰わなかったのよ。最初に会った時からず~~~~~っとあんたの事が!」


 「え………!?」


 続け様に理緒奈から告げられた言葉に、リラは唖然となるばかりでした。そんなリラの心を見透かすが如く、理緒奈は続けました。


 「あんた何時も根暗だし、1人で自分の世界に閉じこもっちゃってウジウジオドオドしちゃってさ!そーゆー奴見てると私、虫唾が走るんだよね!!おまけに人が話してる時に頓珍漢な事言うし最悪!!あんた私の話が聞いててつまんないって言うの?自分の空想の世界に耽ってる方が楽しい?それって私が…てか私達がつまんない話で盛り上がってるつまんない人間って馬鹿にしてるって事でしょ!?そうよ!あんたはこの私の事を、頭の中じゃずっと見下してたのよ!!浮世離れの馬鹿の癖に!!!」


 まさか自分が内心そんな風に思われていたと知り、リラは途轍も無いショックでした。自分は只、憧れの存在と思っていた理緒奈と友達になれて嬉しかっただけなのに………!周りの話に付いて行けない中で何とか言ってる事を考え、想像して皆に合わせようと頑張ってただけなのに………!それが裏目に出た所為で今こんな目に遭ってしまったと言うのか?

 余りに理解の超えた支離滅裂な理緒奈の思考に、リラは言葉も有りません。すると理緒奈は先程の侮蔑の眼差しとは別に、憎しみの籠った目でリラを見下ろして怨嗟の言葉を投げ掛けました。


 「でもそれ以上にムカついたのは美術の時よ!私の描いた絵じゃなくって、あんたの描いた絵の方が先生からの評価が高かった!!ゴミの癖に私より優れた所があるなんてそんなん認められる訳無いでしょおがッッ!!!」


 この言い分もまた、当時のリラにとっては驚愕でした。自分は只頑張って好きな絵を描いていただけ。評価されたのはその結果論に過ぎないのに、理緒奈はそれすら認めようとしない。そう言えば破られた自分の絵も、破き方が力任せで乱暴でしたが、あれはリラに対する彼女の強い憎しみの表れだったのでしょう。

 何にせよ、八十島理緒奈と言う人間は思い込みが激しく、自分の思い通りにならない相手を絶対に認めようとはしない身勝手極まりない性質の持ち主だったのです。リラにとっては生涯初の、理解を超えて最悪の存在でした。

 怒りに任せて言葉を迸らせると、更に理緒奈は言います。


 「あ~~~あ、市議会議員の娘で将来、他人様の上に立つ存在として、あんたみたいなつまんないゴミでも価値を与えて取り立ててやろうと思って声掛けてやったのに、そんな私の期待を無自覚(ナチュラル)に裏切っちゃってさ!あんたって本ッッッッッ当に最低最悪だよね!他人の期待に応えられない奴なんてクズ!生きてる価値ゼロじゃん!!おまけにさっきの奴が言ってた通り、キモイ目の色しちゃってさ!!それで個性出してる心算?存在価値ゼロのゴミの癖に滑りまくっててマジウケる~!!」


 リラに友達面して声を掛けたのも、彼女と友達になりたいからでは無く、単に自分のプライドを満たす為―――――本当は友達でも何でも無かったと知り、リラの目からは涙が溢れて止まりません。おまけに自身の1番の特徴である藍色の瞳まで全否定。実はリラはこの藍色の瞳が小さい頃からコンプレックスだったのですが、改めて他人にそれを否定されたとあっては惨めさが更に倍加します。


 「生きてる価値が無いんならさ、せめてこーやって皆の玩具になってよね♪じゃあねリラ、また明日!」


 相手の全てを根底から否定する言葉を吐き捨てて理緒奈が去って行った後、リラはボロボロになりながら家に帰って行ったのでした。

 

 こんな地獄の毎日が続いた物ですから、終業のチャイムが鳴ればリラは何時も逃げる様に下校するのが当たり前。帰りが遅れるとすれば理緒奈の手先に捕まって同じ様に暴行、時にカツアゲと、人を人とも思わない仕打ちに遭った時位です。

 リラ自身も、もう誰を恨んだら良いのか分かりません。自分がこんな性格だから、理緒奈の醜い性根をますます歪めてこうなったのか?それとも彼女と出会わなければ今と違っていたのか?それとも自分が生まれて来るべき世界が間違っていたのか?考えても考えてもまるで分かりませんが、この世界がリラにとって、さながら獰猛な鱶が多数蠢く深海の如く冷酷且つ非情な物だったのは事実です。苦痛と絶望しか存在しない、最低最悪の『濁世(じょくせ)』と呼ぶに相応しい世界。地獄は地獄でも、これはまさしく最低最悪の無間地獄と呼ぶに相応しい――――。

 そして1年生が終わる翌年の3月、全てに絶望し切ったリラはとうとう多摩川に身を投げて入水自殺しようとしたのでした。



 ですが、この時リラの運命を変える出来事が起こりました。そう……テミスとの出会いです。

 彼女と出会い、アクアリウムを授けられたリラは、テミスと言う強力な後ろ盾を背景に虐めっ子達に対して反旗を翻して行ったのでした!

次回、アクアリウムを武器にリラの反撃が始まる!

キャラクターファイルは暫くお休みして、アクアリウム講座を開講します。


アクアリウム講座1


アクアリウム


水霊士(アクアリスト)と呼ばれる存在が行使する癒しの異能。

水の精霊である水霊(アクア)達と心を通わせる事により、様々な術を行使しては生き物の心と身体に溜まった穢れを取り払い、癒しを齎す。

元は古代における水の精霊使い達が戦闘で編み出した、攻撃用の術も少なからず存在するが、現在においてはその殺傷能力は全てオミットされ、相手の生命力を充実させる効果に置き換えられている。

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