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A.Q.U.A.R.I.A  作者: Ирвэс
第三章 水と時間は螺旋の様に
23/44

第22話 水は我が友(起)

大変長らくお待たせ致しました。ここから水泳地区予選を四部作でお送りします!

……と言っても余り競技の内容は期待しないで下さい。この作品のテーマは水泳ではないので(汗)。

 リラが4月に霧船に入学してから早2ヶ月が経ち、もう直ぐ3ヶ月目を迎えようとしている6月第4週の事でした。

 すっかり着慣れた霧船女学園水泳部の競泳水着に身を包み、リラ達は何時もの様に学園のプールで練習に励んでいました。


 「相変わらず吉池は1年の中じゃトップクラスね。長瀞もかなりの距離泳いでも平気だし、それでいてタイムも縮まって来てるわ。」


 「そうだな。けど汐月だって、あたしと一緒に泳いでる内にだいぶタイムも縮まって来たぜ。勿論、五十嵐もな。」


 「大会で通用するかどうかは未だこれから出て見なきゃ分かんないけど、何事も経験。あの子達は肩の力抜いて、思う様に泳げば良い。そうでしょ?」


 みちるの言葉に対し、忍は口元にフッと笑みを浮かべながら頷きます。


 汐月リラ、五十嵐葵、吉池深優、長瀞更紗―――――。


 入部したての1年生で新入部員だった彼女達の泳ぎも、水の都である蒼國で揉まれて来た事も有って少なからず洗練されて来ました。

 今回の総体で、果たして何人が標準記録を上回り予選を通過出来るかも大事ですが、新人の彼女達には思いっ切り楽しんで泳いで欲しい物です。


 「真理愛、やっぱり貴女って凄いね。2年も逃げてたわたしと違って……。」


 「何言ってるの?本気の私の泳ぎに、此処まで付いて来れたのは貴女が初めてよ潤。」


 そして2年生もずっとストイックに取り組んで来ていた真理愛は勿論、2年のブランクが有った潤も好敵手である真理愛の存在が刺激となり、勘を取り戻してその先の扉を開けつつありました。 


 「全く、2人とも速過ぎ!」


 「潤、ブランク完全に埋まったわね。」


 2人の独壇場と化したプールで、潤と真理愛の後塵を拝していた瑠々と水夏。然し、そんな彼女達も去年と比べてタイムがまた数秒縮まり、予選突破の射程圏内へと足を踏み入れていました。


 「ッ!?は、速い!?」


 「あっと言う間にゴールに!?」


 (凄い……もしかして忍先輩、故障する前のレヴェルに戻ってるの?ううん、下手したらそれ以上かも……)


 最後に3年生。総体や国体と言う戦場を何度も経験して来た百戦錬磨の部長であるみちるは言わずもがな、リラのアクアリウムの癒しも手伝い、2年の沈黙を破って復活したエースの忍は間違い無く今季の台風の目となりましょう。

 それが証拠に、先程も肩を故障する前の自己ベストに大きく肉薄する記録を叩き出して葵と深優の度肝を抜きました。リラもその泳ぎっ振りには心から感心させられます。

 

 「それじゃあ本日の練習は此処まで!」


 「有り難うございました!!」


 何時もの様に練習を終えて締めの挨拶を行う水泳部の一同。ですが、今回はそのまま解散と言う訳には行きません。何故なら―――――。


 「皆、分かってると思うけど、今週の金、土、日はいよいよ総体よ。今まで積み重ねて来た自分の泳ぎを信じて、最後まで戦い抜きましょう!」


 そう、明日から3日間の週末はいよいよ待ちに待った高等学校総合体育大会水泳競技大会―――通称“総体”の開催日。関東高等学校水泳競技大会―――これも縮めて“関東大会”への切符を賭けた県の予選会を兼ねた大事な3日間なのです。

 水泳部で己を鍛え続けて来た者達にとって、『全国への最初の通過点』とも言うべき大会が直ぐ明日、正確には24時間にも満たない十数時間後に関東の専用ステージで行われる。その事実に、一同の顔は一層の引き締まりを見せます。 緊張からか、思わず拳を握り、背筋すら伸ばして見せる者もいました。

 この6月第4週の金、土、日と3日に掛けて行われる大会ですが、先ず1日目は瑠々が400m自由形、水夏が200m平泳ぎに参加し、次いで2日目は更紗と真理愛が200m自由形、リラと忍が100mバタフライ、葵と潤が100m背泳ぎ、みちるが400m個人メドレー、そして葵、深優、瑠々、水夏の4人が400mメドレーリレーにそれぞれ参加。最後の3日目に深優が100m自由形に参加します。


 水泳を学校の部活で嗜んだ事の有る人ならご存知でしょうが、競泳は先ず選手をそれぞれ8人ずつに分けて泳がせる予選を行い、これを突破した8名のみが上位入賞者を決める決勝へと出場出来るシステムです。但し、大会によっては1位~8位を決めるA決勝と、9位~16を決めるB決勝の2つが行われてその為にAとBで各16名が選ばれる事も有ります。リラ達がこれから出場する総体にはこのB決勝が有りました。

 予選突破の方式も、8人ずつ分けられた各組の中でどれだけ先にゴールしたかではなく、より早い時間で泳いだ者が選ばれる“タイムレース方式”が採用されており、この中からより早いタイムを叩き出した者16名がA決勝、B決勝へと進めるのです。因みにB決勝で如何に好タイムを叩き出そうとも、あくまで9位~16位の決定戦ですのでA決勝の選手達の順位に割り込む事は出来ません。

 こう言われると1位や2位の上位先着の選手の方が早いタイムだから、やっぱり先にゴールした方が勝ちだと思われるかも知れませんが……甘い!例えA組で1位になったとしても、B組やC組で3位や4位、極論最下位である8位の選手の方がA組で1位になった選手より早いタイムならば、残念な事にA組で1位になったその選手はエントリーした選手全体の順位としては下となってしまう。タイムレース方式とは、極端に言えばそう言うシステムなのです。

 勝負が決まるのはごく短い時間。そして同着でゴールした様に見えても、タッチの瞬間が100分の1、1000分の1秒と言う刹那の時間でも違えばそれが勝敗、延いては予選落ちや優勝を分かつ決定的な差となる………。それが競泳の世界なのです!


 尚、霧船女子の目指す関東大会出場の条件としては、各種目の決勝で8位までに個人、団体問わず入賞する事が条件ですが、4位~8位の選手は更に関東大会の標準記録を突破する事が条件となります。然し予選、決勝を問わず全国大会の標準記録を個人、団体問わず突破した者は主催団体の推薦を経て、その種目への出場を申し込めるのです。


 水の都と言う事も有り、水泳人口の多い蒼國の選手が多くせめぎ合うこの総体。B決勝は勿論ですが、それ以上にA決勝を泳ぐ上位8名に選ばれるのが如何に至難の技である事は想像に難くないでしょう。

 無論、蒼國以外の地区の高校の選手も多く参加しますが、やはり蒼國の選手達の多くは余所者など眼中に無く、同じ蒼國の学校の選手をライバル視する傾向が有る様です。


 「やれる事はやったんだ。勝つとか負けるとか、んな事はどうだって良い。思いっ切り楽しんで泳ごーぜ!」


 然し、勝ち負けに頓着しない忍の言葉に、思わずリラや葵達、それにみちるの顔に笑みが浮かびました。何時かの忍の内なる水霊(アクア)であるヴァルナが彼女に叱咤激励した時の事が思い出されて、嬉しくなったからです。

 勿論、その事情を知らない2年の子達も、そう無邪気に言い切る忍の表情に思わず緊張を解きます。


 当然、後でリラと潤がアクアリウムで全員の心身を入念に癒し、ベストなコンディションへと整えたのは言うまでも有りません。


 (さぁ、明日は心行くまで泳ぎまくってね?)


 テミスを筆頭にした水霊(アクア)達も、水霊士(アクアリスト)の少女2人の心身の疲労を洗い流し、存分に泳ぎ回れる様に陰ながら支援するのでした―――――。



 そして翌日、遂に関東大会予選会を兼ねた地区総体が、街の外れに位置する蒼國総合スポーツセンターにて開催されました。

 蒼國(じもと)は勿論の事、県内中で水泳部を擁する高校の選手達がバスに乗って次々と集まって来ました。

 バスから降りて会場へと向かう水泳の選手達の様子は、さながら海から生まれ故郷の川へと遡上する鮭の大群か、竜門なる大瀑布を泳ぎ昇って龍にならんと集まって来る鯉達と言った所でしょうか?


 「此処が蒼國総合スポーツセンター……私達がこれから戦う場所………。」


 バスから降りたリラ達の視界に先ず真っ先に飛び込んで来たのは、この街に来て初めて立ち寄った大きなスポーツセンターです。

 水泳の為のプールは勿論ですが、陸上競技や球技、果てはスケートやカーリング等、あらゆるスポーツの練習場として蒼國市民処か、県の内外問わず多くの人から利用されています。有名なアスリート達まで多く利用し、室内の受付には幾つもの彼等のサイン色紙で飾られる程です。

 尚、蒼國に在る学校のアスリート、その中でも特に水泳の選手達の間では暗黙の了解として、練習目的でこの施設は利用せず、するとしたらそれは今回の様な大会の時だけと言う不文律が有りました。それだけこの施設のプールは、蒼國の水泳選手達にとって神聖な場所と言う事なのでしょう。


 それを分かっている為か、バスから降りた瞬間には既に部長のみちるもエースの忍も、瑠々も水夏も真理愛も潤も、そして新入りの葵も深優も更紗も皆緊張の面持ちで眼前に聳え立つ戦いの場を目に焼き付けんとする勢いでじっと見つめています。因みに全員、体育で着用する霧船指定の紺色のジャージに身を包んでいました。


 「あー、やっと着いたか………。」


 そんな彼女達の心中などナノミクロ程も気に掛けない気怠げな声で、顧問の村上先生が選手達に遅れてバスから降りて来ました。 


 「もう、先生遅いですよ!こう言う時位ビシっとして下さいって!」


 「ッたく、相変わらず先生は緊張感無ぇなぁ……。」


 みちると忍が呆れてそう言うと、村上先生は何時も通りの調子でこう言い返します。


 「馬鹿かお前等?私は顧問であって選手じゃねぇ。私が戦う訳でも無いのに緊張する理由が何処に在んだよ?」


 確かに彼女は選手でも何でも無い只の顧問(つきそい)。別に選手の様にこれからの戦いに緊張を漲らせる必要なんて有りません。


 「つーか前橋、そう思うなら私の分までお前がビシッとしろよ。部長のお前は日浦と一緒にチームの心の支えなんだからな。ついでにこいつも言っとくが、私は別にお前等がこれから勝とうが負けようが、別に気にはしねぇよ。つーかどうでも良い。薄情な様だが、そう言う結果を受けて其処からどうするかはお前等1人1人次第であって、私が偉そうにあれこれ言う事じゃないからな。2年と3年のお前等なら良く分かるだろ?」


 その言葉にみちると真理愛を筆頭とした先輩達が苦笑いする一方、リラ達は村上先生の放任主義振りに呆れの感情を抱いていました。

 以前から気怠く面倒臭そうな雰囲気を漂わせ、部活の事を部長のみちるを始めとした部員達に丸投げしている事は以前から知ってはいましたが、まさかチームの勝ち負けにすら無頓着とは……。

 これがウチの部活の顧問だと思うと、心なしか嘆かわしくなって来ます。 


 「けどまぁ……どんな結果になろうと、それは過程と一緒に大事にして忘れんなよ?そう言う積み重ねが有って今のお前等が有るんだから、否定したら罰当たるぞ。それと―――――」


 そうして村上先生は、忍と潤を一瞥してこう締めます。



 「一緒に泳ぎたい奴とチームで泳げるってのは、選手にとって幸せな事だろ?それが1分でも1秒でも――――1日でも長く続く様に頑張って来い。後悔だけはしない様にな……。」



 気怠く言い放つ先生の言葉。然しそれは、リラ達の胸に不思議と強く刺さります。

 その中でも特に葵と深優、瑠々と水夏と言う幼馴染みコンビ2組の心を奮い起こしたのは言うまでも有りません。

 『1人も欠ける事無く予選を突破して、今のメンバー全員で全国へ出場する』―――――――その想いで彼女達はずっと練習して来たのですから。


 「はいっ!」


 先生の言葉を強く胸に刻んで選手達がそう頷く中でリラは内心、自分の中での先生への評価の最終判断を下していました。


 (全く……掴めない先生だわ……。)


 普段は気怠い雰囲気を漂わせているけれど、実際面倒臭がり屋で他人の事には基本ノータッチ。部活の事も部員達に丸投げして無頓着。

 けれど、少なくとも部員の名前と出席番号を一々覚えており、忍の肩の故障も気に掛ける等、何だかんだで相手の事はキチンと見ていて決して他人に無関心では無く、不器用ながらも相手に寄り添う言葉を投げ掛ける……。

 嫌いになれそうでなれないばかりか、人によっては親近感すら覚えそうな不思議な人――――――それがリラの中での村上先生の評価(レッテル)でした。

 尤も、先生への評価(レッテル)に関して言えば、他の部員達もリラと似たり寄ったりのそれを下していましたが……。


 

 そうしてみちるがメンバーに号令を掛けます。

 

 「……それじゃあ皆、行くわよ!」


 

 そうして会場の入り口へと足を運ぶ霧船女学園水泳部の面々。

 すると葵が同じ1年のリラと深優と更紗に村上先生の事に関して、当人に聞こえない様小声で話し掛けます。


 「ねぇリラ、相変わらず先生って面倒臭がり屋だよね。」


 「うん、そうだよね……。」


 「ぶっちゃけ私達の結果にすら興味無いって、顧問としてどうなのかな?」


 「何であんな人が水泳部の顧問なんだろうね……?」

 

 すると彼女達の遣り取りが近くで聞こえたのか、忍が1年の後輩達に向かって意外な情報を伝えました。


 「そう言うなよ。あの人だって曲がりなりにも蒼國じゃ有名な水泳選手だったんだぜ?」

 

 「えっ!?」


 あの村上先生が蒼國で名を馳せた水泳のアスリートであると忍から告げられ、当然の如くリラ達は唖然となります。忍は続けます。


 「学生時代は何度も国体出て、3回も優勝した事が有るっつー程の猛者だったんだとよ。然も日体大卒業でおまけに付いた仇名が“ナマケモノ”!」


 先生の意外な経歴に、1年のヒヨッ子4名は言葉も有りません。普段面倒臭がり屋で気怠そうにしてるあの先生が、まさかそれ程凄い人物だったとは……。

 “人は見掛けによらない”とは良く言った物です。


 「凄い人なのは分かりましたけど、仇名がナマケモノって……」


 「知らないの葵?ナマケモノって実は凄く速く泳ぐんだよ?」


 「嘘、マジで……!?」


 深優からの指摘に目が点になる葵ですが、相手の幼馴染みは構わず続けます。


 「ナマケモノって言ったら1日中樹の上にぶら下がってて殆ど動かないってイメージ強い動物だけどさ、種類的にはミツユビナマケモノとフタユビナマケモノの2つだけよ?泳ぎが凄く上手なのはミツユビナマケモノって呼ばれる方の種類で、泳ぐのが上手なのはアマゾン川のジャングルで暮らしてるからなんだって。因みに殆ど動かなくって鈍臭い印象の有るナマケモノだけど、それでも歩く速さは時速120mって言われてるよ?泳ぐとなると更にその2~3倍以上のスピードが出せるみたい。これだけ言えば、嫌でも村上先生の仇名に相応しいか分かるんじゃない?」


 「成る程……確かに先生らしい仇名ね……。」


 深優の説明に対し、葵が苦笑しながらそう返した時です。



 「あれ?日浦じゃん!」


 不意に霧船女子達の前に近付いて話し掛けて来る者がいました。忍の苗字を口にしたと言う事は、少なくとも彼女に縁の有る者と見て間違いは無いでしょう。


 「お、お前……井澤!?」


 忍が目を見開いて井澤と呼んだ女子は、漆黒のセミロングヘアに青紫色の瞳が特徴で身長が何と175㎝でバスト88と言う大柄な女子でした。

 霧船より明るい青系のジャージに身を包んで居る所から、ライバル校の女子である事はリラも直ぐに分かりました。井澤と呼ばれた女子の後ろには、彼女と同じ服装の女子が20人近く居ます。


 「あんたの事、市民プールで霧船が練習してるとこは前から見掛けてたから『肩治ったのかな?』って思ってたけど、こうやって出て来てるって事はやっぱそう言う事なんでしょ?」


 「あぁ、お陰様でバッチリ治ったぜ!」


 「やっぱそう言う事!」


 忍からそう返され、井澤と呼ばれた女子はぱぁっと明るそうな表情で応じます。忍の復活に関しては後ろの部員達にとっても思う所が有るのか、皆驚きで目を見開いてヒソヒソとその事で内緒話を始める者まで何人も現れました。

 周りに居合わせた他校のライバル達にとっても忍が復活してこの場に居る事は意外だった様で、あちこちから少なからぬどよめきが起きていました。特にバタフライに参加する選手達にとっては、まさかの強敵出現と言う事で気が気では有りません。


 「部長、誰なんですかこの人?」


 リラがみちるに尋ねると、彼女は小声で説明しました。


 「彼女の名前は井澤八尋(いさわやひろ)。希望ヶ浜高校水泳部の部長でエースよ。得意な泳ぎは忍と同じでバタフライ。因みに希望ヶ浜は龍洋と並んで蒼國(じもと)でも全国大会出場率トップで優勝経験も有る強豪校。」


 「バタフライが得意って事は……忍先輩とはライバルって事ですね!」


 納得の行った調子でリラがアクアリウムをこっそり発動して八尋を見ると、彼女の内なる水霊(アクア)は巨大なホオジロザメの姿をしています。宿主が宿主だけにとても力強い水霊(アクア)を宿していると言えましょう。


 「でも、あんたが怪我から復帰した所であたしは負けないからね。あんたが大会出れないでいる間、あたし等は色んな大会出て優勝までして来たし、前よりずっと速く泳げる様になったんだから。怪我から治ったって言ってもブランクの有るあんたじゃ相手にならないと思うけど?」


 やはりと言うべきか、怪我から復帰したとは言え、2年もブランクの有る忍は周りからそう思われても仕方の無い存在でした。気付けば周りの選手達もホッと安堵して、取るに足らない相手と露骨に侮蔑の目を向ける者まで居ます。


 「そうだっけ。もう日浦忍は終わったんだった!」


 「昔は凄い選手だったみたいだけど、2年もブランク有るんじゃ大した事無いよね!」


 「今更何しに出て来たの?恥掻いても良いから記念出場で思い出作り?黒歴史になるだけだと思うけどな~♪」


 その周囲の態度に対し、憤りを覚えたのはリラでした。曲がりなりにも水泳の選手である以上、スポーツマンシップ位有って然るべき筈なのに周りは忍の事を馬鹿にして軽んじています。

 これが自分と同じ水泳のアスリートなのかと思うと嘆かわしい。そんな感情が自身の内から間欠泉の様に沸々と湧いて出るのをリラは感じていました。


 「……本当にそう思うかよ?」


 そんなリラを尻目に、忍は口を開いて返します。


 「は?何がよ?」


 思わぬ反論に呆気に取られる八尋に対して忍は言います。


 「確かにあたしは怪我の所為で2年近く大会には出れなかったよ。けど、怪我を乗り越えた今のあたしはあの頃より速いぜ!お前なんかよりずっとな!」


 その言葉に八尋を中心に他の部員達はポカンと口を開けるも、直ぐに腹を抱えて笑い始めました。


 「アハハハハッ!!何それハッタリの心算!?怪我が治ったのって最近でしょ!?そんな昨日の今日で幾等練習したって、昔より速く泳げる様になんてなる訳無いじゃんさ!?」


 一頻り笑うと、八尋は同じ希望ヶ浜のメンバーを連れて会場の入り口へと歩み始めます。


 「まっ、あんたがそう言うならこれから見せてみてよ?その“前よりもあたしよりも速い”って言うあんたの泳ぎをさ!」


 そう宣戦布告すると、希望ヶ浜の選手達は一足先に会場へと入って行こうとします。


 「あっ、部長!ちょっと待って下さい。」


 すると同じ希望ヶ浜の女子の1人が八尋に断りを入れると、今度は瑠々と水夏の所へ歩み寄って来ます。

 白と紺色のグラデーションが掛かったセミロングが特徴の子です。


 「久し振り、瑠々!水夏!」


 「あっ、麗湖!」


 「麗湖こそ久し振り。」


 そうして瑠々と水夏の幼馴染みコンビは相手校の女子の手を握ります。すると葵が瑠々に尋ねました。


 「瑠々先輩、その人は?」


 瑠々は答えます。


 「あぁ、こいつの名前は真宮寺麗湖(しんぐうじれいこ)。わたしと水夏とは同中だったの。」


 「中学時代の友達だったんですか……。」

 

 深優が納得した様子で頷くと、麗湖は2人に話し掛けます。


 「瑠々も水夏も元気そうで何よりだわ。市民プールで練習してたの良く見掛けたけど、相当頑張ってたわよね?」


 「何だ、あんたも私達と同じ市民プールで練習してたの?だったら話し掛けても良かったのに……。」


 水夏がそう言うと、麗湖は首を横に振って言いました。


 「出来る訳無いでしょ?2人ともメッチャ真剣に練習に取り組んでたんだから。って言うかそれ言ったら瑠々達だってそうじゃない?けど代わりにLINEにメッセ送ってたから良いでしょ?」


 「まぁ、確かにそうね……。」


 麗湖から指摘され、2人は練習帰りにスマホでLINEの遣り取りをしていたのを思い出していました。


 「2人が凄く頑張ってるのは分かる……けど、勝つのは私達だからね?」


 「上等!わたしも水夏も絶対に負けないから!」


 「今年は皆1人も欠けないで全国へ行くよ?」


 運命の大会を前に、改めてライバル宣言をする麗湖に対して火花を散らす瑠々と水夏。リラと潤がアクアリウムを展開して見ると、麗湖の内なる水霊(アクア)は漆黒のエレファントノーズ型の水霊(アクア)でしたが、かなりの力を感じます。


 (あの人、出来る。井澤って人にも負けない位……!!)


 内なる水霊(アクア)が強力であればある程、宿主である人間のポテンシャルも高い。色んな人間の水霊(アクア)を見て来たリラだからこそ分かる、経験則からの判断でした。


 「おーい、真宮寺!何時まで話してんのさ?さっさと来なよ!」


 「はーい!それじゃあ瑠々、水夏、会場でまた……。」


 遠くから八尋の呼ぶ声を受けて元のグループに戻ると、麗湖はそのまま蒼國総合スポーツセンターの入口へと消えて行きました。


 「忍先輩……。」


 希望ヶ浜のライバルに因縁を付けられた忍に対し、心配そうにリラは話し掛けます。


 「何だよ汐月?あたしの事、心配してんのか?」


 確かに忍はリラのアクアリウムのお陰で本来なら相当な時間が掛かる所を、物の2ヶ月で肩を故障する前まで回復させる事が出来ました。けれど、だからと言って『昔より速く泳げる様になった』なんて言うのは幾等何でも苦し紛れのハッタリにしか見えません。

 同じバタフライの選手として、実際に泳いでいても自分では敵わない実力を忍は持っていましたが、相手は忍が肩を壊して大会に出れない間に何度も全国の舞台を経験した百戦錬磨の猛者。嘗ての忍より先を行っているのは水霊(アクア)達から教えて貰わなくても明白です。

 いいえ、リラは敢えてライバル校の選手と、自分の所属する霧船との彼我の実力差については敢えて知ろうとはしませんでした。ライバル選手達のタイムを知った所で、自分達に何が出来る訳でも無いのですから……。

 仮に出来る事が有るとしたら、それは精々大会へ向けて鍛えるべき物が何かを知り、よりタイムを縮めるべく己の力を伸ばす事だけ。結局水泳とは、つまる所は己自身との戦い―――――有名パラリンピック選手の言葉ですが、まさにその通りでしょう。


 「大丈夫だ。あたしは負けないから♪それにお前がヴァルナ使って教えてくれたんだろ?楽しく泳げさえすりゃ勝ち負けなんてどうだって良いってさ。あたしの事は良いから、お前は自分の泳ぎをしろよ!」


 「忍先輩……!!」


 そう笑って返す忍の姿を見て、リラは自身の口端に笑みが浮かぶのを感じました。それはみちるも一緒でした。大会に出れなくて塞ぎ込んでいた忍が、昔以上に良く笑う様になった。彼女の事を誰より間近で見て来た者として、これ程みちるにとって嬉しい事は無いでしょう。


 「それじゃあ皆……改めて行くわよ!」


 みちるの言葉に促され、霧船女子の御一行様も会場の受付へと歩を進めます。

 そんな彼女達の姿を、希望ヶ浜同様に他校のライバル達が見つめている事も露知らずに―――――。



 そうして時計の針が9時30分を廻る頃、選手達は蒼國総合スポーツセンターのプールの前に学校毎に整列して入場して来ました。

 霧船女子、希望ヶ浜、龍洋、春湊、水月、海燕大付属、蟹淵、北静湖―――――蒼國を中心に県内から実に多くの高校の水泳部の選手達が一堂に介する中、公益財団法人である日本水泳連盟、次いで同じく公益財団法人の全国高等学校体育連盟から出席したお偉いさん達の挨拶、優勝旗の返還、そしてあの希望ヶ浜から井澤八尋が登壇し、選手宣誓を行います。

 八尋は昨年の全国大会は元より、国体でも好成績を収め、地元でも有名な選手。この蒼國の街で行われる水泳の大会で選手宣誓を行うのに、これ以上相応しい人物はいないでしょう。


 『宣誓!我々選手一同は、日頃の練習の成果を十分に発揮し!水を友として!全力で最後まで泳ぎ切る事を此処に誓います!!』


 マイクの前で立ち、右手を上げて高らかに八尋が宣誓し終えると、参加選手達から拍手が起こります。

 リラがこっそりアクアリウムを発動させて見ると、周囲は無数の水霊(アクア)達が楽しそうに泳ぎ回り、さながらクレートバリアリーフの珊瑚礁の様な素敵な空間が広がっていました。

 こんな場所でこれから泳ぐのだと思うと、リラは今から楽しみでなりませんでした!



 開会式が終わるともう直ぐ午前10時、いよいよ本格的に競技が開始される時間です。


 「良っし!それじゃあわたし、頑張って来ますね部長、忍先輩!」


 最初に開催されるは女子の400m自由形。参加するのは2年の星原瑠々!


 「あぁ、行って来い星原!」


 「1番最初に出るんだもの。星原には何としても決勝で4位以内には残って欲しいわね。」


 「負けないでよ瑠々?去年6位で標準記録届かなかったけど、今のあんたなら狙えるって信じてるから。」


 先輩2人と同級生の幼馴染みに続いて、この数ヶ月で距離を縮めた後輩の幼馴染みコンビが言います。


 「瑠々先輩、皆1人も欠けないで全国行くって言ってたんですから絶対負けないで下さいね!」


 「約束破ったら覚悟して下さいね?」


 葵が鼓舞する横で、深優が両手を出してワキワキと揉みしだく仕草をして見せます。 

 そんな彼女達の様子を退屈そうに欠伸をしながらも、村上先生は無言で口元に笑みを浮かべて見守っていました。


 「分かってる!言い出しっぺはわたしだもん。1位になれなくたって標準記録位は突破して見せるから!」


 そう笑って返すと、競泳水着に身を包んだ霧船1番手の瑠々は多くの観客が待ち受ける試合の場へと赴きます。

 広い会場一杯に響く歓声―――――。

 鼻から肺へと充満する、プールに溶かし込まれた塩素(カルキ)の香り―――――。

 そして、霧船(じぶんたち)とは違う競泳水着に身を包んだライバル達―――――。


 (うわぁ~、分かってたけどいざ出るとやっぱ緊張するなぁ~……。)


 大会には中学の時から何度も出ているので場数はそれなりに踏んでいる瑠々ですが、やはりこの大観衆の見ている前に立つ瞬間と言うのは中々慣れる物では有りません。

 背後からデンキウナギがデンキナマズでも微弱の電流を流しているのかと錯覚する位に、瑠々はその身を無意識に震わせます。


 (ハッ、そうだ!こう言う時位はあれ使っても罰当たんないよね?緊張ほぐすだけだし……。)


 果たして瑠々は何を思い付いたのでしょう?その答えは直ぐに出ます。


 (やっぱりこの子達見てると落ち着くわ。って言うか右見ても左見ても水霊(アクア)だらけじゃん……。)


 そう、アクアヴィジョンで周囲を泳ぎ回る水霊(アクア)の姿を眺める事によって精神をリラックスさせると言う物でした。リラや潤達水霊士(アクアリスト)のアクアリウムを介さなければ声は聴こえませんが、それでも楽しそうに泳ぐ水霊(アクア)達は自分達に「遊ぼう!」、「一緒に泳ごう!」と誘っている事は瑠々にもその様子からありありと伝わって来ます。


 (そうだ……わたしは1人じゃないんだ………。部長や忍先輩―――――水夏、ジュンジュン、真理愛―――――それに葵と深優と汐月と長瀞が見守ってる!そして水霊(このこ)達が一緒に付いててくれる!何も怖い物なんて無いんだ!)


 改めて勇気を奮い起こした瑠々の前に現れたのは、希望ヶ浜に進学した友人の麗湖でした。


 「まさかいきなり貴女と泳ぐ事になるなんてね、瑠々。」


 「麗湖……そうだったわね。400m自由形(フリー)、去年もあんた出てたっけ……。」


 目の前に立ちはだかる親友でライバルの麗湖に、瑠々は去年の事を思い出していました。去年の総体でのA決勝、瑠々は標準記録に届かぬ6位で終わったのに対して、麗湖は4位入賞でしかも標準記録を破っていました。標準記録を破れず予選落ちした自分と、並み居る水泳の猛者達を追い落として4位に滑り込み標準記録も突破。そのまま関東大会、延いては全国に行った麗湖。

 代わりにメドレーリレーで何とか決勝を3位入賞で辛くも突破出来た物の、結局関東大会で予選落ち。全国を逃しただけでも悔恨の一語に尽きますが、やっぱり瑠々としては個人戦の自由形でキチンと麗湖と全国の舞台で戦いたかった事でしょう。喉を焼き尽くすかと思わせる程に塩辛い大量の海水を、一気にがぶ飲みさせられる様な気分を、当時の瑠々は味わった物です。


 「…去年は確かに関東大会じゃ個人で泳げなくって悔しかったし、リレーだって予選落ちして全国行けなかったけど………わたしだってもう昔のわたしじゃないわ!絶対皆で全国行くって決めてんだからね!」


 気を取り直し、何時もの強気でそうビシッと麗湖を指差し、ついでにバスト87の胸の膨らみを揺らして瑠々は宣言します。


 「フフッ、じゃあ頑張って私を追い越して見なさいよ?」


 程無くして鳴り響く長いホイッスルの音と共に、麗湖は口元に不敵な笑みを浮かべて自分のコースの上に立ちました。当然ながら瑠々も、直ぐ隣りのコースに立ってスタートの合図を待ちます。これから泳ぐ為、皆水泳帽と水中眼鏡を忘れずに着用していました。


 「用意……。」


 スターターの号令と共に泳ぐ体勢に入る選手達。霧船の仲間達やテミス達が見守る中、遂にスターターピストルから合図の音が発せられ、瑠々達選手は一斉にプールに飛び込んで泳ぎ始めます。

 懸命に左右の手を動かして身体を前へ前へと推進させる瑠々。隣りで泳いでいる麗湖は気付けば自分を引き離し、グングンと先に泳いで行きます。

 然し、瑠々は決して焦りませんでした。何故って?瑠々は知っていたからです。“水泳が自分自身との勝負なのだ”と言う事を。例え自分より速く泳ぐ相手が居た所で、出来る事は只自分に出来る最高の泳ぎをするしか無い。それが分かっている瑠々は、やはり一端の水泳選手でした。


 (絶対行くんだ……皆で1人も欠けないで全国へ……!!)


 その強い想いで水を掻き分け、足をバタつかせて泳ぐ瑠々。その時、不思議な事が起こりました。


 (えっ……?何?シュロ?)


 何とアクアヴィジョンを発動していないのに、瑠々の眼前の視界にはプールを自分と共に悠然と泳ぐシュロの姿が映ったのです。幻でも見ているのかと錯覚しましたが、只がむしゃらに泳ぐだけの瑠々にはそんな事であれこれ考えている暇は有りません。そんな瑠々の事などお構い無しに、彼女の内なる水霊(アクア)であるシュロは宿主の目の前をグングンと泳いで先に進むと、時折振り返って瑠々の方を見つめているのです。

 まるで自分に早く此処まで来る様に誘っているかの様でした。


 (何よ……?わたしと鬼ごっこでもしたいの?だったら待ってなさいよ!直ぐそっちに行ってやるから!)


 そうして瑠々は一際力強く水面を蹴ると、持てる力でシュロ目掛けて泳ぎ始めました。然しこの時、彼女は気付いていませんでした。自分自身が一際速く泳いでいた事を!

 そうしてどれ位の時間が経ったでしょう?気が付けば自分は400mを泳ぎ切り、既にゴールへと上がっていたのでした。

 因みに自身の組の中では瑠々は2位、1位は当然と言うべきか麗湖でした。


 「やった!瑠々先輩2位だよ!」


 「五十嵐、予選なんだから未だ喜ぶのは早いわ。順位で勝っても大事なのはタイムなんだから。」


 浮かれる葵を制するみちるですが、モニターから瑠々を見守る彼女の目は慈愛に満ちていました。

 そして同じ女子400m自由形にエントリーした選手達が泳ぎ終え、発表されたタイムの結果から、麗湖が4位で瑠々が6位と辛くも決勝に進出しました。


 続く女子200m平泳ぎの予選でも水夏は5位で予選を突破。そして午後に開催された決勝で、瑠々は去年の結果を上回る4位に浮上して麗湖は2位に浮上します!

 これは来たるべき決勝に向け、予選でのペース配分に気を配ったのと、その後の体力の回復に努めた結果でした。


 言うまでも無く競泳の試合はタイムで勝敗が決まってしまうので、予選の時から全力で泳ぐ選手もいます。瑠々が決勝で負けたのはこれが原因だったのです。だからこそ彼女は前回の反省を活かし、予選では一見力強く泳いでる様に見えてその実、ペース配分に気を配っていたのでした。

 無論、体力の回復が間に合わない場合、次の試合で実力を発揮出来ない可能性も有りますが、これも自身の参加する女子400m自由形が最初に行われた為、何とか回復を間に合わせる事が出来たのです。そうした意味では瑠々は幸運だったと言えましょう。


 当然ながら全ての参加選手は決勝戦に於いて、トップでゴールする事を目標にトレーニングを積んでいる物ですが、試合と言うのは何が起こるか分からない物。

 実力が伯仲して同タイム且つ同着の選手が出た場合、再試合を行って他者より余計に泳ぐ事も有るし、体力を温存したまま最終戦まで進める事も有り得ます。そうしたあらゆる状況を予測して、コーチとも相談をしながら練習メニューを組み立てて試合に備える事も、競泳のアスリートには必要な事であり戦いの1つなのです!

 瑠々も水夏も、みちるや村上先生達と相談した上で今回この試合に臨んだ訳ですが、正直去年が去年だっただけにまさかこんな結果が出るとは思っていなかったでしょう。

 去年から積み上げて来た練習の日々は、本人達が気付いていなかっただけで瑠々達を予想以上に大きく成長させたと言えましょう。


 因みに今年度の関東大会出場の為に破るべき、誰もが気になる女子400m自由形の標準記録ですが、それは4:42.63!

 内訳も瑠々の4位の結果は標準を2.50秒上回った4:39.13、対して麗湖の4位は4.72秒上回った4:37.91。どうにか瑠々は決勝進出を決めたのでした。



 そして水夏の女子200m平泳ぎですが、彼女も瑠々と同じく結果は4位で、タイムも標準記録の2:52.33を2.95秒上回った2:49.48。辛うじて滑り込んで見事に関東大会への進出が決まりました。

 尚、水夏も泳いでいる時、瑠々と同じく自身の内なる水霊(アクア)であるレインの幻が見えたそうです。一体、彼女達に何が起きたのでしょうか―――――?


キャラクターファイル23


(さざなみ) 真理愛(まりあ)


年齢   16歳

誕生日  8月19日

身長   169㎝

血液型  A型

種族   人間

趣味   フルート

好きな物 海辺の散歩


ダークブラウンのロングヘアーに赤い瞳が特徴。

小学時代から水泳が好きで、中学時代には大会でも何度も入賞した事が有る程の実力者だったが、特に潤の事は違う学校に通っていた事も有ってライバルとして強く意識していた。

だが、彼女が胸が大きくなり過ぎたのを男子にからかわれた所為で中学最後の大会に不参加だった為、不完全燃焼なまま霧船に進学。其処で潤と再会した時には怒りと失望の感情をぶつけてそのまま1年間口も利かず、彼女がいじめに遭っていても自業自得と見て見ぬ振りをしていた。

リラのアクアリウムで癒された潤が水泳部に入りたいと言って来た時には無論、驚きと共に「何を今更」と言う怒りの感情から彼女を拒絶していた。だが、その怒りの感情から生じた穢れを潤から癒されたのを切っ掛けに和解。

その後、プール開きと共に2年生のエースとして、2ヶ月でブランクを埋めた潤と共に精進の日々を送っている。無論、2人の関係が親友のそれとなったのは言うまでもない。得意な泳ぎは自由形でクラスは2年1組。潤と同様、照れると胸を大きく揺らす癖が有る。

蒼國海岸の近くでフルートを良く演奏しているが、それは父が海上自衛官で、仕事柄艦上で暮らして滅多に陸に戻って来ない為、彼の無事を祈っての事。因みに母は蒼國市役所の職員である。

水霊(アクア)に関しても最初は興味を示さなかったが、潤から穢れを癒して貰ったのと、リラから水霊(アクア)を見える様にして貰ったのを機にすっかりその美しさの虜になっている。或る意味、霧船女子の中で最もアクアリウムの恩恵に与っている人物と言えるが、本人の性格は至って常識人のしっかり者。

内に秘めたる水霊(アクア)はロリカリア型の水霊(アクア)で名をシュトラーセ。


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