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A.Q.U.A.R.I.A  作者: Ирвэс
第三章 水と時間は螺旋の様に
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第17話 注がれし新たな一滴

今エピソードから新章に突入!そして“あの子”が覚醒の道を辿ります!

 梅雨が真っ盛りで紫陽花が其処かしこに咲き乱れる6月、霧船女学園水泳部の面々はより一層練習に力を入れて励む様になっていました。

 彼女達は雨の降らない日は学校のプールで泳ぎますが、曇って肌寒かったり雨が降ったりした日は市民プールで練習しています。


 「さぁ、どんどん行くわよ!次!」


 みちるの号令と共に、一斉に部員達はプールに飛び込みます。彼女達1人1人の泳ぎには、何時に無く気合が入っていました。


 然しそれも無理は有りません。今月の下旬には高等学校総合体育大会水泳競技大会が開催されます。この大会は同時に関東高等学校水泳競技大会への切符を賭けた県の予選会でもあるのです。

 更に翌7月上旬には国民体育大会県予選会、下旬には関東高等学校水泳競技大会、そして8月下旬には高校生選手達の晴れ舞台とも言うべき全国高校総体兼日本高等学校選手権大会水泳競技大会がそれぞれ開催され、更に9月には国民体育大会まで有ります。

 けれど総体及び国体に出場する為には先ず、予選会で標準記録を突破し、上位入賞を果たさなければ切符は得られません。

 彼女達が、より練習に精を出すのも当然の事でしょう。


 因みに霧船は5月のプール開きと共にリラ達全員の選手の登録作業を完了させ、県高校総体兼関東大会県予選会への参加にも申込済みです。


 (水霊(アクア)の皆、見ててよ!)


 数多の水霊(アクア)達が見守る中、みちるの合図と共に、リラは水面に飛び込んで泳ぎ始めました!先ずは総合体育大会兼関東大会予選会での勝利を見据え、リラは力の限り水を両手の膂力で掻き分け、水面を蹴り続けます。

 大会は純粋に自身の身体能力が問われる場所なので当然ですが、リラはアクアリウムの力を一切封印して臨みます。

 この2ヶ月間で、自分に何処までの実力が付いているのか、正直リラでも見当が付きません。

 ですが4月末に水泳部に入学して以来、リラはずっとGW中から怪我から復活した忍やみちると一緒に泳ぎ続けて来たのです。それは葵や深優、更紗も同じでした。


 そのハイスペック振りから、1年で早くも頭角を現して来た深優―――――!

 フィジカル面に大きく恵まれ、1年の中では100m以上泳げるだけの体力を誇る更紗――――――!

 2人に比べたらスペックはそれ程高くは無い物の、他人の2倍も3倍も頑張って齧り付いてタイムを縮める急成長中の葵―――――!


 そして並外れた肺活量と潜水能力から、平泳ぎの名手として同じ泳ぎを得意とする忍に迫る勢いで急成長中の我等が水霊士(アクアリスト)リラ―――――!

 

 果たして彼女達が6月下旬の関東大会予選を兼ねた総体までに、何処まで成長出来るか目が離せません。


 「凄いわね、あの子達。50m自由形じゃ汐月も五十嵐も28秒台にまで縮まってる。吉池と長瀞なんて余裕で27秒台だわ。」

 

 「身体鍛えただけじゃこんだけの成長は有り得ねぇだろ。5月から6月頭まであいつ等、色んな事が有ったみてぇだが、それを乗り越えてメンタルが鍛えられて一皮剥けたんだぜきっと―――――。」


 忍の言う通り、深優も更紗も葵も家族や恋人の事で逆風に立たされた所を乗り越えて今此処に居ます。

 更紗と葵に関してはリラが直接水霊士(アクアリスト)として手を下した訳ではありませんが、それでも深優と更紗は愛する家族と一緒に同じ時間を生きていられる事に感謝と幸福の念を抱き、それを明日への原動力として今と向き合う様になりました。

 葵は不戦敗とは言え失恋を経験し、その中で嘗て想いを寄せていた相手に憶病になっていた自分の弱さに打ちひしがれました。然し、幼馴染みの深優の友情によって立ち直り、『自分の心と身体を強く鍛える』意味で水泳にも精を出す様になったのです。

 リラも、自分の水霊士(アクアリスト)としての在り方とテミスへの疑問に悩まされながらも、彼女を見守る水霊(アクア)達に支えられて前に進み続けています。


 「日浦先輩!私、一緒にバッタで泳ぎたいです!」


 「あたしとか?フッ、良いぜ!」


 同じバタフライを得意とする者同士、リラと忍はグングンと距離を縮めて行きます。因みに今回競う距離は100mです。


 「忍1:12.37!汐月1:19.23!」


 「1:12かぁ…まだまだだな………。」


 「でも忍、昔の調子だいぶ戻って来たじゃない?汐月のお陰で♪」


 みちるの測定したタイムの結果に、忍は若干のしょっぱさを感じていました。リラのアクアリウムによるアフターケアと、自身の日頃の鍛錬によって2年前に故障する前の実力の75%程度は出せる様になりました。

 けれど、故障する前は100mを全力で泳いで1:10秒、普通に泳いでも1:11秒台は余裕で出せたのに、それには未だ届いていないのです。

 6月下旬の総体までにはこれも何とか1:11秒台にまで縮めたい所であります。


 「日浦先輩、焦らないで下さい。まだ6月は始まったばかりじゃ無いですか。1ヶ月で此処まで昔の調子を取り戻すなんてそれだけでも凄いですよ!」


 焦りで顔が引き攣る忍に対し、リラが励ましの言葉を投げ掛けます。


 「ヴァルナからも言われたでしょう?勝ち負け以上に泳ぐの楽しまなかったら駄目だって……。それが出来たら、きっとヴァルナだって忍先輩に応えてくれますよ!」


 リラがそう言って励ますと、忍はフッと笑みを浮かべて言いました。


 「あぁ、そうだな!有り難うよ汐月!つーかお前、今あたしの事苗字じゃなくて名前で呼んだろ?」


 「えっ?あっ、いや!ごっ、ごめんなさい……。でも私、日浦先輩って言うより忍先輩って言う方が呼び易いし親しみ易いって言うか……だってだって、何時も私や葵ちゃんの練習にも付き合ってくれて、もう他人とは思えないって言うかそのぉ~………。」


 顔を赤らめて弁解するも、後から段々としどろもどろになって行くリラに対し、忍はやれやれと言わんばかりに溜め息を吐いて言いました。


 「分かった分かった。好きに呼べよ。」


 「じゃあ、じゃあ!私達も「忍先輩」って呼ばせて下さいっ!!」


 「同じ水霊(アクア)で繋がった仲間同士なんですし、良いですよね?」


 突然離れた場所で練習している筈の葵と深優と更紗が集まって来て忍に詰め寄ります。3人に気圧され、顔を赤らめて忍は叫びます。


 「だ~~~っ、もう勝手にしろ!」


 「じゃ勝手にそうします♪改めて宜しくお願いします忍先輩っ♪」


 そう言うと深優は何時の間にか忍の背後に回り込むと、その脇の下から両手を潜らせて彼女の胸を堂に入った手付きで揉みしだきます!


 「あっ!コラ何しや、んにゃああぁぁぁぁ~~~~~~ッ♥」


 「コラ吉池!此処は市民プールなのよ!公衆の面前でそんな事止めなさい!!」


 咄嗟にみちるが止めに入ると、深優は言いました。


 「折角ですから前橋部長も「みちる部長」って呼んで良いですか?」


 「えっ?」


 「あぁ、それ良いかもね!忍先輩だけ名前で呼んで部長だけ苗字って言うのもどうかって思うし!」


 深優の提案に対して真っ先に乗ったのは葵でした。葵の言葉に更紗とリラも首を縦に振ってこれを首肯します。


 「ま、まぁ、お互い水霊(アクア)で繋がった仲間だし、こうやって水泳部に入ってくれて忍の事でも貴方達には借りが有るから………良いわよ?」


 「有り難うございますみちる部長!!」


 みちるが首を縦に振った事を受け、1年の4人は餌に集団で群がる魚の様にみちるに抱き着きに掛かります。


 「あっ、コラ止めなさい…ってちょっと吉池、何処触ってるの!?もう時間が無いんだから練習続けるわよ!!」



 そんなじゃれ合いの様子を、遠くから2年の4人は羨ましそうに見ていました。


 「1年の子達、忍先輩やみちる部長と随分仲良くなったよね……。」


 「ねぇ、何時の間にかあの2人を名前で呼んでるんだもん。」


 瑠々と水夏の2人がそうぼやく横で、潤はリラの周囲を取り巻く“或る存在”が視界に入るのが気掛かりでなりません。


 (良いなぁ、リラちゃん。あんなに楽しそうで……でも、今日もまた一杯見えるあの魚みたいなのって、一体何なのかしら?)


 そんな中、2年の代表格で副部長である真理愛が3人に発破を掛けます。


 「ホラ!部長だって時間が無いって言ってるんだから皆練習に集中して!」



 気を取り直し、総体へ向けて練習に精を出す霧船女子達。基本の50mは勿論ですが、更紗やみちる、瑠々や水夏と言った体力に自信の有る者は更に100m、200m、果ては400mと言う距離にも挑みます。

 怪我からの回復等でブランクの有る忍や潤も、当初の限界であった50mから100mの壁を一ヶ月で破り、それ以上長く泳ぐ練習も始めていました。無論、それはリラ達も同じで、1万mの泳ぎ込みにすら挑む勢いです。


 (どうして漣さん、わたしの事ジッと睨んでるんだろう――――?)


 けれどそんな中、練習に励む傍らで自分を睨む真理愛の視線が、潤は気になって気になって仕方無いのでした―――――。



 練習が終わった後、リラ達1年生4人と3年生コンビの6人は2年生の4人と別れました。何処か人気の無い場所で、忍にアクアリウムを施す為です。


 「ごめんなさい汐月、私にも貴女のアクアリウムお願い出来るかしら?今日は張り切り過ぎたから……。」


 「あ、ごめんリラ、私もお願い……。」


 すると其処へみちると葵も一緒にアクアリウムを所望して来ました。


 「良いですよみちる部長。葵ちゃんにも新しいアクアリウムの癒しを体験させてあげるから♪」


 「けど汐月よぉ、あたし等の事何時も癒してくれんのは良いけどさ、お前は平気なのかよ?」


 忍がそんな率直な疑問を投げ掛けた時でした。


 「大丈夫ですわ。私が近くで癒してるから。」


 突然何処からともなく人間態になったテミスが現れて答えます。


 「うおっ!こいつ、何時の間に!?」


 「テミス!?」


 まさかのリラの保護者の出現に、水霊仲間(アクアメイト)達は思わず驚きます。


 「あれ?周りには魚も何も見えないから汐月はアクアリウムを使ってないけど、どうして私達はこの子が見えるの?」


 「みちるさん、人間を含めて形ある生き物に化身すれば、私達水霊(アクア)水霊士(アクアリスト)以外にも見える様になるの。そもそも水に形は無いでしょう?だから私達は人間以外に犬でも猫でも何にでも化身出来るのです。」


 「そ、そうなんだ……。」


 苦笑いしながらみちるがそう返すと、テミスは改めて説明します。


 「兎に角、リラは上級水霊(アクア)である私の加護を受けているから、肉体に多少のダメージや疲労が蓄積しても、私の手でその都度元通り回復しているの。他人を癒すなら、先ず自分がしっかり心身共に癒されてなきゃ駄目でしょう?」


 「水霊士(アクアリスト)って、奥が深ぇんだな。まぁ、一般人のあたし等には知り様の無ぇ事だけど……。」


 忍の小並感溢れる感想に対して周りが苦笑いを浮かべていると、リラが不意に声を上げました。


 「アハハ……、あっ先輩!あそこでやりませんか?」


 リラの指差した先には誰もいない寂れた小さな公園が有りました。幸い周りには誰も居ないし木々もそれなりに多いから遠目には分かり辛いし、3人分は座れるベンチも有ります。

 確かに其処は忍達にアクアリウムを施すのにお誂え向きな場所です。満場一致で6人は、早速其処へ足を運ぶのでした。



 此処で時は数分前に遡ります。


 「ねぇ瑠々、前から気になってたんだけどさー……」


 「何よ水夏?気になってる事って?」


 「最近私達、妙に除け者感半端無くない?」


 「言われてみれば確かにね……。」 


 瑠々と水夏の遣り取りに、真理愛は納得とばかりにそう相槌を打ちます。4月の終わり頃、ゴールデンウィーク明けのプ―ル開きに向けてプールの清掃が行われましたが、その時にリラ達は有志で参加して瑠々達と出会いました。

 その時は自分達にも可愛い後輩が出来たと素直に喜んだのですが、問題は学園で本格的にプール開きが行われてからです。瑠々達は忍にくっ付いて練習する事の多いリラや、みちる達と妙に馴れ馴れしく接する葵達の姿が多く目に付くのが気になって仕方無かったのでした。


 「最近汐月達、部長や忍先輩と急接近し過ぎだよね。わたし、忍先輩とは同じ中学だったけど、名前で呼ぶのは2年生の終わりになってからだし、部長の事だって名前で呼ぶ様になったのだってつい最近だし……。けど其処まで距離縮めんのに時間掛かったのをあの子達、この数ヶ月であっと言う間に縮めちゃったじゃん?」


 「それ以前に先輩達とゴールデンウィークで一緒に練習しようと思ったら、もう2人とも1年の子達と一緒だったじゃない?ランニングしてた時も忍先輩と汐月さんが一緒に走ってるとこ何度も見てるし、もう4月の終わり頃にはもう仲良くなってたとしか思えない…。」


 1年生の後輩と3年生の先輩の距離が急接近している現状を整理する瑠々と真理愛の言葉を受け、水夏はリラと忍に関する疑問を投げ掛けます。


 「確かにね。しかも日浦先輩、練習の後に汐月にマッサージなんて頼んでるけど、あの子そんなにマッサージの腕良いのかしら?」


 「でもさぁ、だったら何で人目忍んでコソコソやる訳?別に皆の前でやったって良いじゃん。どうもわたし達の目を盗んでやってる感有りまくりなんだよねぇ……。」


 リラ達に対して深まる謎に誰もが頭を抱える中、その空気を変える声が上がります。


 「あの~…星原さん、濱渦さん………。」


 「何よジュンジュン?って言うかそんな他人行儀じゃなくて良いって。普通に瑠々で良いよ!」


 「私も水夏って呼んで欲しいな。ね、潤?」


 「じゃあ……瑠々ちゃん、水夏ちゃん、そんなに気になるならわたしがリラちゃんと先輩達の事、見に行ってあげよっか?」


 思い掛けない潤からの提案に、瑠々と水夏は目が点になります。そんな潤の様子を、先程から真理愛はジッと無言で睥睨しているばかりでした。


 「えっ?良いのジュンジュン?わたし達の代わりに先輩と1年の子達の事、確かめに行ってくれるの?」


 「うん、わたしもずっと気になってたし、良い機会だから確かめてみるね!」


 そう言い終るが早いが、潤は元来た道を引き返します。同じ水泳部員としてリラの事を何時も間近で見ていた事も有り、潤は知っていました。リラの周りには決まって「魚の幽霊」が密集している事を……。同時に其処から確信していました。それを見つければ其処に彼女の元へ辿り着けると―――――。



 さてその頃、人気の無い公園では―――――。


 「うっ……ああぁぁぁッ……今日は一段と効くぜ………!!」


 「本当ね……だけど、身体が温かくなって元気が出て来るわね。まるで温泉の中で洗濯されてる気分………。」


 リラがクラリアと周囲の下級水霊(アクア)を集めて形成したクラリファイイングスパイラルに包まれ、その中で忍とみちるは揺られながら全身の疲労と穢れの残滓を洗い流されているのですが、今回は違います。

 何と、人間程もある巨大なパールブルーの色をした、テナガエビに似た姿の水霊(アクア)がその長い前肢を器用に操って2人の身体のツボを軽快なリズムで的確に突き、肩や四肢の筋肉を揉む等の見事なマッサージを施していたのです!

 クラリファイイングスパイラルを纏ったその腕から繰り出されるマッサージは、最高に気持ち良さそうです。


 それだけではありません。


 「うああッ……!リ、リラアァァァッ………し、痺れびれびれびれ…………!!」


 葵の身体を覆うクラリファイイングスパイラル。二重螺旋を形成する2本の内の1本からは、何と其処からは微弱ですが電気が発せられています。

 もう片方がネオンテトラ等の無数の小型カラシンの姿をした水霊(アクア)達の集合体ですが、電気が発せられている方は何と1体の中級水霊(アクア)で構成されている様です。


 「うわぁ、確かにこれは新しいね。葵の身体を電気でマッサージしてるのってデンキウナギみたいだけど、先輩達はテナガエビなんだ。」


 「でもどっちも気持ち良さそう。」


 「『ノアリリア』、『マヌンダ』、もうそろそろ仕上げにしよ?」


 (分かった。)


 (OK!)


 リラの合図を受けてデンキウナギとテナガエビに似た姿の2体の中級水霊(アクア)はそう答えると、最後の仕上げとして葵の中のアンジュ、みちると忍の中のノーチラスとヴァルナにそれぞれ電気ショックと乱れ突きを浴びせて気付けを施しました。

 漸く解放され、3人の身体からは先程まで溜っていた疲労と倦怠感が嘘の様に消えています。そればかりか、全身を細胞1個1個、そしてDNAのミクロのレヴェルまで完全に修復された様な命の瑞々しさ、身体の悪い成分が根こそぎ体外に排出された感覚が全身を支配しました。


 「ふぅ~っ……今日は特に念入りにやって貰って嬉しいぜ。何時もありがとよ汐月!」


 「私もこれで2回目だけど、やっぱり心も身体も元気になるこの感覚……素敵ね!」


 「あぁ、全身ビリビリで痺れちゃった。でも疲れは無くなったから許すねリラ!」


 3人からの感謝の言葉を受け、リラは嬉しくなります。水霊士(アクアリスト)がいなくても、彼女達はこの前の深優同様、皆自分の力で穢れと向き合ってそれを浄化出来るだけの強さを持っています。葵も前回は深優に、そして今回は自分に癒される側でしたが、これから他の誰かに同じ事をしてあげられるだけのポテンシャルをアンジュから感じます。

 けれどそれでも、自分の力を必要としてくれる者が居るなら、リラはその力を存分に振るおう―――――その想いが有るからこそ、リラはこうやって水霊士(アクアリスト)としての己の使命を遂行し続けるのです。

 

 「良し、それじゃ帰るか!」


 「はい……って、あっ……!」


 忍の声を受けてこれから帰ろうとする一同ですが、リラが不意に崩れ落ちそうになった為、忍がこれを支えます。


 「おっと!大丈夫かよ汐月!」


 「大丈夫です、忍先輩……慣れない中級水霊(アクア)を使ってちょっと疲れただけです………。」


 すると不意に背後からテミスが現れてリラの背中に手を当てました。掌から発せられるコバルトブルーの光は、優しくリラの中に浸透して行きます。


 「テミス……貴女………。」


 葵がその様子を呆気に取られて眺めていると、テミスはフッと微笑んで言いました。


 「リラ、貴女はもっと自分をいたわらなきゃ駄目よ?自分をキチンといたわれない人間に、誰かを癒していたわる事なんて出来ないのは当たり前の話なんだから……。」


 (お祖母ちゃん………?)


 背中に感じる温もりと、テミスの慈しみ溢れる顔。リラは其処に、今は亡き自分の祖母であるユラの温かさを感じていました。


 (リラ、無理しないの。)


 (私達だってついててあげるから!)


 そう言うとノアリリアとマヌンダの2体も水飛沫となってリラの体内に入って行きました。内側からリラの身体を癒す為です。

 程無くして身体のあちこちから心地良い電気の刺激と、身体の凝りがほぐれてポカポカと温かくなって行く感覚をリラの肉体は覚え始めます。


 「全く、水霊(アクア)達から慕われてて幸せね、汐月も―――――。」


 微笑ましくそう呟くと、みちるも忍と一緒になってリラの身体を支えました。

 葵と深優と更紗は、そんなリラの様子を優しく見守っています。

 そうして彼女達は、改めて6人仲良く帰宅の途に就くのでした。


 然しこの時、テミスを含めた水霊(アクア)達以外は誰も気付いていませんでした。公園の裏に回り込み、其処からリラ達の様子を窺っていた人物が居た事を……。



 「何?何なの今の?」


 おやおや?リラがブルーフィールドを展開していたのは公園の中だけだったのですから、その外側から水霊(アクア)を見える人間はいない筈なのに、彼女は見えてしまった様ですよ?



 「あんな海老や鰻の幽霊とまで友達なの?リラちゃん――――――?」



 飯岡潤―――――入学したての時にリラからアクアリウムで癒して貰った最初の人物で、一般人の筈なのに水霊(アクア)を見る事が出来る少女。6人の秘密を探るべくこっそり尾行して来た彼女の運命が廻り出す瞬間が、刻一刻と迫っていたのでした―――――。


キャラクターファイル18


ノアリリア


年齢   無し

誕生日  無し

血液型  無し

種族   水霊(アクア)

趣味   電気の食べ歩き

好きな物 水力発電所


中級水霊(アクア)。ルネッサンスブルーのデンキウナギに似た姿をしている。太平洋を中心に世界を廻っている水霊(アクア)の1体で、蒼國にも良く出没する。通常の電気鰻は2.5m程の体長だが、こちらはその3倍の7.5mもの長さを誇る。

その外見に違わず高圧電流を操り、雷雲をも創り出す能力を持つ。通常、クラリファイイングスパイラルは二重螺旋で運用され、多くの場合はその2つの螺旋を多くの水霊(アクア)達が集まって形成するが、彼女1体だけでクラリファイイングスパイラルの二重螺旋の1つを担う事が出来、エフィアやユナーシャに匹敵する力を誇る。

彼女のクラリファイイングスパイラルは程良い電気ショックを与える事で筋肉を刺激して凝りを解消。更には血行をも促進する等、電気風呂と同じ効能を与えられる。

性格は至ってクールだが、怒らせると感電死必至の高圧電流を流し込んで来る為、扱いには注意が必要。

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