表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新停止中】暴食の“闇”  作者: DENEB
第1章 深淵の世界
9/15

O-1 若葉志音の憂鬱

久々のワカバさん登場。

一体なぜセイヤは『深淵の世界』に落とされたのか?

 語り手: アルタイル


 無事影を討伐したが、その様子を同じクラスの野神聖也に見られてしまった。若葉(ワカバ)志音(シオン)は魔女だ。魔女とは魔術を扱える人間を指す言葉で、一般人に見られるわけにはいかない。

 ひとまずセイヤを気絶させたシオンは、記憶操作の魔術を使おうとしていた。


(あたしの実力だと記憶消去は難しいし……)


 記憶操作の魔術は、かけられた側が気づかない限り解けることはない。記憶消去はシオンには難しいので、完璧ではないがこちらを使うことにしたのだ。


(陣の組み立てに時間がかかる。……こんなことなら魔道書でも持っとくんだった。)


 詠唱は目立つので指先に精神を集中し、魔法陣を展開。

 その時だった。


「ボォォォォォ……」


 いわゆる“光”が空から襲いかかってきた!


「っ!?コラ、やめなさい!!」


 シオンが魔術で応戦すると、光はターゲットをシオンからセイヤに移した。

 光は太い二本の腕を伸ばしてセイヤを掴むと“ゲート”を開く。

 ゲートを開けるのは上位のもののみのはず。つまりこの光は……


「やめなさいっ!!」


 光の逃げ込んだゲートに炎の矢を放った。その一撃で光は霧散し、セイヤが黒い地面に倒れる。


「……ッ!」


 ゲートがゆっくりと閉じ始めた。セイヤは少し離れた位置におり、助けて戻るのは難しいだろう。でも助けないと、彼は深淵の世界では生き残れない。


(でも、怖い……)


 深淵の世界。影や光のはびこる危険な世界。

 エリート魔術師でも生還することはほとんどないとされる地獄。その地獄を前にして、自ら助けに行くことはできなかった。


(恨むなら……あたしに関わったことを恨むことね。)


 倒れた時に落としたのか、セイヤのスマホが落ちていた。それを回収し、バッグの奥に押し込むシオン。

 もう会えないであろうセイヤに、そして自分に言い訳をしつつ、その場を離れた。


 ♦︎


 次の日から、シオンは不登校になった。

 セイヤはクラスの中ではなかなか人気者だった。性格は明るく、能力も何も平凡なのに人助けだけはよくしていて。あと料理が得意だったのを覚えている。


『そもそもチョコなどもらってない男子諸君!お返しのクッキーとか永遠に来ない女子諸君、これでも食って元気出せー!!』


 などと言ってホワイトデーにクラス全員にお菓子を贈っていたのはいい思い出だ。


(甘いけど……苦かったわ。抹茶味だもの。)


 努めて態度には出していなかったが、孤独な魔術師であるシオンが影退治を始めたのはセイヤが理由だった。

 根暗でコミュ障な自分にも手を差し伸べてくれたことがあるセイヤ。おかげで今はそれなりに話す友達もでき、同時に彼への憧れも生まれた。

 流石に見ず知らずの人に話しかけるなどできず、自分が魔女だったのを生かして始めたのがパトロールだ。

 偶然助けた人から言われたお礼の言葉は不思議と暖かく感じた。そのあと記憶は消させてもらったが。


(憎いでしょうね、あたしのこと。もし帰ってきたら、どんな罰でも受け入れるわ。)


(だって、悪いのはあたしだもの。)


 普段着で外へと出るシオン。学校へ行くのは怖いけど、せめて同じことを起こしたくはない。

 だから、パトロールは続けるつもりだ。


 ♢ ♦︎ ♢

 語り手: アルタイル


 西清札第一高校オカルト部、その活動場所は主に空き教室。そこで4人の部員たちが今日も噂話をしていた。


「今日もまたワカバさんは来なかった。セイヤの失踪以来ずっとだ。」


 とは2年の新崎(ニイサキ)秋斗(アキト)の言葉。この部の実質部長である。


「怪しい……私の恋愛センサーがビンビン言ってるわ。」


「関係ねぇだろ。なんでお前この部に入ったんだ?」


「面白そうだから。」


 軽い調子の女子生徒は磯貝(イソガイ)万李(バンリ)。自分の名前が嫌いな、恋愛大好き女子高生筆頭だ。

 対して冷静にツッコミをいれるのは、同じく2年の清札(キヨフダ)大地(ダイチ)だ。とある寺の子で乱暴な言動が多い。


(しっかしワカバの奴が不登校か……影にでもやられたのか?)


 そしてこの中では唯一ワカバの正体を知っている男だ。


「偶然でしょう。それよりも新手の怪談はないのですか?」


 そしてクールメガネの女子生徒、萩野(ハギノ)千恵(チエ)。一見まともそうだが、実はオカ部一の変人だったりする。そして怪談好き。

 ちなみに唯一の1年生部員だ。


「最近変な噂があるのよねぇ……」


「へえ、なんだってんだ?」


「魔法少女が出たんだってさ。」


 勿体ぶるようになかなか言わないバンリだったが、アキトが先に言ってしまった。


「魔法少女?ありえないでしょう。」


 あくまで怪談以外は認めないチエ。だがダイチだけは冷や汗をかいていた。


(ワカバさんついにやらかしたか……?)


 だが最近“魔物”がよく出るとも聞いているし、どこかで見られていても不思議ではない。


(俺の仕事を増やさないでくれよ……)


 仲間達がワイワイと騒ぐ中、彼は1人頭を抱えていた。

強めの魔物は人間の世界へつながるゲートを自作できますが、弱い魔物がそれを通して出てくることがよくあります。

ワカバさんは魔女の中ではあまり強い方ではなく、『深淵の世界』では生き残れません。相手にしてるのは弱い魔物ばかりですね。

セイヤ?持ち前の幸運と食への執念です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ