P-1 魔女狩りと追放少女
過去編。
語り手はだいたいアルちゃんです。
語り手: アルタイル&ユオ
toldRun(Project_YUO/data/world_3rdForce/mainEvents/event_ain001.eve);
Project_YUO: イベントログを再生します。
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♢: あるところに、少し変わった神様を信じる王国がありました。
♢: 王国では、若い女王様が国を治めていました。
♢: ある日女王様は子供を産みました。元気な女の子です。
♢: でもそれは、とても不思議なことなのです。女王様は誰とも交わらず、ずっと綺麗でいたからです。
♢: 周りのものは不気味がりましたが、女王様は神様から授かったのだとお姫様を大切に育てました。
♢: いつしかお姫様は雪のように真っ白な髪の、美しい少女へと成長していきました。
♢: そんなお姫様には不思議な力がありました。
♢: お姫様が歌を口ずさめば、戦士の傷は癒え、廃れた土地が蘇り、恵みの雨が降りました。
♢: 人々はお姫様を讃えます。
民衆: 「『聖歌の魔女』様に感謝を!」
民衆: 「彼女はきっと神様の子だ!」
♢: 喜んでもらえるのが嬉しかったお姫様は、他にも色々な魔術を学んで、人々のために役立てていきました。
♢: しかしある年、近くの大きな国の使者がやってきました。
使者: 「魔女とは悪なり。魔術とは外道なり。さあ、民を騙し、聖女を気取る悪魔共に天罰を!」
♢: それは言いがかりでした。お姫様は人々のためを思って歌を歌っていました。
♢: しかしいつしか、どんな悪いことも全て魔女のせいにされ、国の魔術師たちはみるみるうちにいなくなっていきました。
♢: そしてついに、お姫様も捕まってしまいます。
♢: いつかは仲良くしてくれた騎士団の人々によって。
♢: 女王様はお姫様を助けるため、必死に呼びかけました。
♢: しかしそんな女王様も、自分の弟によって捕まってしまいます。魔女の眷属として。
♢: もう女王様は女王様ではありません。今の王様は女王様の弟です。
♢: 女王様と姫様は、殺されることになりました。火あぶりの刑です。
♢: 処刑の日、民衆は揃ってお姫様たちに石を投げました。彼女を讃える人々はどこへ行ってしまったのでしょう。
♢: 女王様は焼かれる前に、お姫様にこう言いました。
女王様: 「***、愛してるわ。」
♢: お姫様は初めて泣きました。
♢: 誰よりも強く優しい心のお姫様は、その時初めて泣きました。
♢: 涙と一緒に、何もかもが流れていきました。
♢: それは炎の中で、あっという間に燃えてしまいました。
♢: 代わりにお姫様の中を、違う何かが満たしていきます。
♢: ふと思い浮かんだのは、あの使者の顔。
♢: その顔がとても醜く見えます。
♢: とても汚く見えます。
♢: その男は……この火あぶりの刑を見て、人々の真ん中で笑っています。
♢: このとき、お姫様は初めて人を憎みました。
♢: また、初めて魔術を、自分だけのために使おうと思いました。
♢: 炎の中は、とても熱いです。身体中が火傷をして、元の綺麗な少女は見る影もありません。
♢: でも、お姫様は死んではいませんでした。
♢: どれだけ焼けても、焼け落ちたところから治っていきます。
♢: 文字通り身を焼く炎の中、どうにか声を絞り出して歌います。
♢: 女王様を捕まえた騎士たちに。
♢: 女王様に石を投げた民たちに。
♢: 幸せを全部壊した、憎き使者に。
♢: お姫様はもうお姫様ではありません。
♢: 聖歌の魔女は歌います。
♢: 偉大なる天の恵みたちよ。
♢: 今こそ本当の姿を見せよ、と。
♢: 人々は歌を聴きました。
♢: 雨が降ります。
♢: 風が吹きます。
♢: 雷が鳴ります。
♢: やがてそれは一つの国を飲み込み、大きな湖へと変えてしまいました。
♢: それでもお姫様は生きています。ですが、もう力は残っていません。
♢: やがてお姫様は大きな国の新たな使者に捕らえられてしまいました。
♢: 何度も殺されそうになりました。でもどうやってもお姫様は死なず、いつしか箱に閉じ込められてしまいました。
♢: 大きな国の王様は家臣たちに命じます。
♢: この化け物を封印せよ、と。
♢: この話は時間とともに忘れられてしまいました。
♢: お姫様はどこに封印されたのでしょうか。
♢: もしかしたら、今も生きているのかもしれません。
♢: ずっと昔の思い出と共に……
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Project_YUO: プログラムは正常に実行されました。
こういう変な形式のもたまに入ります。
この小説を含む大きな意味での世界観に直結するので、まだ何なのか明かすつもりはありませんが。