第2話 最弱になった僕
朝起きると何事も無かったようにまた一日が始まる。
いつものようにサキが起こしに来て両親と4人でご飯を食べる。今日は4月2日。剣選会の次の日だ。
「ねぇねぇレイ、なんか力が目覚めた感覚ある?」
「いや、、、それが全くなくて困ってる」
「そうだよね〜私もなんか感覚なくて、、、これが普通なのかなぁ」
ふむ、、、やはりそういうものなのか、、、
気になっていたのはそこだ。まず1つ目、実感がないことだ。自分にどのような能力が存在しているのか?それがわからない。そして2つ目、剣の展開方法がわからない。自分の剣ってどうやって出すんだ、、、
などと色々考えていると、ピンポーンと、インターフォンの音がした。サキが出るとそこにはカズとアヤが立っていた。
「よぉ!お前ら自分の能力把握出来たか!?」
「昨日の剣選会の会場で能診断してくれるって」
「わかった!レイ、早く準備して行きましょう!二人ともちょっとまってて〜」
十分程してサキの準備が終わり、4人で剣選会の会場へ向かう。会場には昨日と同じくらい人が居た。だがもう能力診断の場所にはあまり人は並んでおらず、三分ほどで順番が来た。
診断方法は極々簡単なものだった。謎の黒い正20面体の箱に触るだけ。すると横のコピー機のようなものから自分の能力や剣の名前等の情報が印字された紙が出てくる。僕が出た時には全員診断を終わらせていて、僕の事を待っていた。皆能力の事について話したくて仕方が無いようだ。当然だ。僕だって話したい。
「お!レイも終わったか!」
「あぁ。お前らどんな能力だったんだ?」
「まだ話してない。レイを待ってた。」
「じゃあ私から!」
まずはサキからだ。
剣名:五色の剣
水、木、火、土、雷の5属性を持っている。1度に自由に操れるのは2属性のみ。3つ以上使うとオーバーヒートする。
能力名:ホークアイ
領域内の全ての物体を立体的に把握することが出来る。器の昇華等によって範囲が大きくなる。神々の視点とも呼ばれる。
次にカズ。
剣名:ポセイドンの剣
神話になぞらえて造られた剣。剣以外の万物を貫くことが出来る潜在能力を持つ。器の昇華等で切れるものが増える。矛盾の原罪。
能力名:水神の加護
水を自由に操れる。器の昇華等で水に及ぼせる力も増える。
次にアヤ
剣名:双星の剣
太古にこの星に降り注いだ星の石が埋め込まれた剣。双剣で、身体能力強化も付いている。
能力名:星渡し
基本的にはホークアイと変わりないが、双星の剣の潜在能力を極限まで引き出せる。器の昇華等で効果増大。
そして俺
剣名:unknown
効果は不明。斬れ味等も普通の刀と何ら変わりはない。持ち主が成長するとこの剣も成長する。
能力名:エアスケート
空中を自由に走り回ることが出来る。多少の身体能力強化も付与される。
「ま、まぁ只の説明だけだから実践の強さとは関係ないかもしれないし!」
「そ、そうだな!ほんとは強いかもしれないしな!」
「・・・」
お前らポーカーフェイスというものを知らないのか、、、表情隠しきれてないぞ?あとアヤさん?なんでもいいから何か言ってよ、、、
「能力診断が終わった方はレクチャールームへ進んでくださーい!」
みんな俺の診断書に釘付けになっていて聞こえてない、、、
「もういいから早くレクチャールーム行こうぜ、、、」
「あ、そうだったな!行くか!」
壁に貼られた案内用の紙を辿ってレクチャールームへ行く。中にはいかにも鍛えてますと言わんばかりのよくいるムチムチのTシャツを着た大男がいた。
「はい。どうも皆さんこんにちは〜今回レクチャーをするジスという者です。」
うわぁ、、、この人めちゃくちゃテンション低い。まぁ、朝からずっと同じこと繰り返してたらそりゃあこうもなるか、、、
「じゃあまずは簡単に、剣のことから話していこう。」
ここも長いから割愛だ。要約すると、どうやら剣とは誰にでもある心の穴。要するに自分の黒い部分や欠落した部分などを埋める役割を果たすらしい。剣の性質上心の穴にぴったりとおさまるようになるらしい。同じ剣が存在しないのも、剣それぞれで形が違うかららしい。そうなると当然ぴったりとおさまる剣がない場合選ばれない者も出てくる。と、そういう事らしい。
「じゃあ簡単に剣の説明が終わったところで、次は剣の展開方法だ。剣の展開方法は人それぞれだが、一般的には、自分のなりたいものを心で思い浮かべて形にする。又は、心の中にある剣を掴む。という方法がある。こればかりは自分で探すしかない。とりあえずやってみろ」
自分のなりたいもの、、、夢、、、そんなものはとうの昔に捨ててしまった。ちょうど両親が死んだ頃だ。両親は僕の前で死んだ。しかもただの事故じゃない。完全に故意に殺されていた。政府や警察はこれを揉み消して、不慮の事故死と判断した。その時思った。力が欲しいと。全てを圧倒する力が欲しいと。自分の心がどんどんと沈んでゆくのが感じ取れる。そこから引き上げてくれたのはサキの言葉だった。
「あっ!レイもう展開できたの?すごい!」
「おっ一人終わったか、、、にしてもこの剣、、、使えんのか?」
自分の手を見てみると前に神話の本で読んだ「干将・莫耶」に似た、だが決定的に何かが違う双剣を持っていた。続いてアヤ、カズ、サキと順番に剣を展開することに成功する。ジスさんはアヤの双星の剣に少し反応していたが問題はサキだった。明らかに他とは違うなにか神々しいものを纏っていた。
「なんだこれは、、、サキと言ったな?お前診断書見せろ。」
「えっ?あ、はい」
ジスさんは、サキが差し出した診断書を見て軽く目を見開いた。そのあと何事もなかったかのようにサキに紙を返し説明を続ける。
「、、、さて、能力に移ろうか。まず、能力には大きく分けて2つの種類がある。1つ目、行動的発動。2つ目、能動的発動。行動的発動は、特定の動作をした時に発動するもの。例えば、抜刀剣のようなためのモーション。能動的発動は、意識下で発動するもの。例えば索敵能力等は能動的発動に入る。エアウォークと水神の加護は、恐らく行動的発動。ホークアイと星渡しは能動的発動だろう。」
成程、、、そういう事だったのか、、、そりゃ自分にエアウォークとかいう能力があるとは思いもしないから、飛ぼうなんて絶対思わないよなぁ、、、そもそもこんなに自分の剣と能力が弱いとは思わないだろ、、、
「さて、、、これでレクチャーの全過程は終了か。お疲れ様。帰りにちゃんと学校の願書もらって帰るように」
「ありがとうございました!」
そうだった。剣に選ばれた人だけが入れる戦闘員を育成する、特殊戦闘員育成学校(SBTS)という学校がある。詳しい事はよく分からないが願書を今日貰って間に合うものなのか?
剣選会の日に身分証明書を見せたところで願書を貰っていると、両親が迎えに来てくれた。カズとアヤと別れ、家へ帰る。そして何事も無かったかのように今日が過ぎ去ってゆく。
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