第一章 第九話
??「さて、そろそろ折り返し地点に差し迫ってきている感じですが、まだまだです!実況らしい実況はしてませんが私を応援してください!」
九、
「シェル、私…………もう、もうこんなのいやですから今度こそは絶対に主を守りぬきたいんです」
「…………でも、シェルが思うに主人の傍で戦うってことは主人にも危険が及ぶとおもうが?」
「だから、遠距離から攻撃できる方法を見つけたんです!」
「魔法?」
「いえ、私は皆みたいにそっちの素質はありませんから………」
「じゃ、銃?」
「いえ、手入れが面倒です………弓がいいです。光の矢ならたくさん作れますから」
「そう、それならバレルの主がいい人ならいいな」
「ええ、そうですね!」
それはちょっと前の姉妹の会話である。
――――
あれからバレルの様子がおかしい。
「……………」
俺の様子をちらりと見ては俺から視線をそらす。何度となくそういう行動をしてきたのかわからないが、放課後になるまでそんな調子で授業も何故かぼーっとしていた。いや、普段からぼーっとはしているが、それとはちょっとちがった感じだな。
放課後、俺のところへシェルがやってくる。
「さ、帰りましょう師匠」
「え?ああ…………帰るぞ、バレル?」
「え、あ、は、はいっ!」
バレルもあわてて鞄を引っつかむと俺のところへやってきて…………昨日とかだったら引っ付いたりしてくるのだが今日は引っ付いてこなかった。ん?まだ一日二日ってところだから昨日はたまたまだったのか?
――――
結局、シェルは俺の家に住むことになり、部屋は無論、バレルの部屋である。
夕食時にそんなやり取りをしたのだがバレルは静かで悲しそうなままだった。
「…………兄さん、何かあったの?」
「いや、別に………」
言ったって信じてくれないだろうから俺は話さずに首をすくめておいた。
「え〜と、シェルさんだっけ?妹さんと何かあったの?」
今度はシェルに尋ねる。しかし、シェルはさぁ?と呟くとそれっきりだった。
「………兄さん、シェルさんってクールな人なのね?」
ニコニコしながら春華は俺にそんなことを言ってくる。
「そうか?そして、何でお前はそんな顔しているんだ?」
「だって、かっこいいじゃない?」
ああいうのが好みなのか?いや、シェルって女の子だよな?う〜む、俺にはよくわからんな。男だし…………
――――
深夜、俺はどうかともおもったのだがノックをしてバレルたちの部屋に入ったのだった。
「なぁ、バレル………どうかしたのか?おかしくなってるぞ、お前」
元からおかしいが、そういう次元のおかしいではない。まったくしゃべらないわけではないのだがどこかよそよそしい態度なのだ。
「べ、別に…………何でも………ありません」
「教えてくれよ、俺はお前の主なんだろ?」
そういうと彼女は俺のほうをゆっくりと見た…………ベッドでは疲れたのかシェルが健やかな寝息を立てながら妹に負けている胸を上下に動かしながら眠っている。
「…………」
「…………」
俺はだんまりを決め込んだバレルに話しかけることなく、黙っていた。
「………天界にいたころなんですが、見たこともない神様に私、仕えていたんです………ある日、ちょっと争いごとが起こってですね………多分、死んじゃったんです。私、まだ役に立たなかったから姉さんたちと違って安全な場所にいて、そのことを聞いて………ずっと、主の傍にいたいって思っていたんですよ」
彼女の話には悲痛なところが感じられる。
「………それで、天使になるためこの期間中、できる限り主の傍にいたいっておもったんです。会えなくなるだろうからシェルとも最後に会話をして、彼女に私、絶対に主の近くにいるって誓ったんですよ」
「成る程な…………」
シェルはそのことをあのちらっと見たときに思い出させたのだろう。
「マスター、ちょっと私………頭を冷やしてきます」
バレルは部屋を抜け出し、出て行ってしまった。
「…………師匠、あの子は弱いですよ」
「シェル、おきてたのか?」
俺はシェルのほうを見るが、彼女は未だに目を瞑っている。
「寝言です、勝手に聞き流していてくれて構いません…………拳術なんてわからないくせしてとりあえず、師匠を守るためにつっこんでいったのでしょうね。まぁ、あのように突進していってもやられるだけでしょうから…………やったことは犬死に等しいです。あの場合は師匠の手を引いてあの場所から逃げるのが一番でしょうね」
とても辛口コメントを俺に伝えるシェル。
「でも、俺だってあの程度なら戦えるとおもったんだが?」
「ええ、悪魔とはいえ、人間でも倒せないわけではありません…………ですが、主が傷ついてしまったり、倒されてしまったら天使になることはほぼ、不可能です」
「ほぼ?じゃ、カタツムリを倒された時点でシェルはアウトじゃないのか?」
「いえ、今では前師匠が今の師匠………つまり、生野雪人様に権利を譲渡してしまったのでシェルは大丈夫なのです」
「成る程な…………」
「主が別の誰かにその権利を譲渡してしまえばそこまでなのですが、相手が拒絶した場合は終わってしまいます」
そこのところはうまく出来ているんだなぁ〜
「………あの子は今頃どこかで泣いているでしょうね…………きっと、屋根の上なんかにいるかもしれません」
そういって本当に眠りに落ちたのだろう…………今度はいびきをかき始めた。
「…………怪我もしてないのに勝手にあいつはおびえてるのか?」
俺は屋根へと向かったのだった。
―――――
「師匠…………」
「どうした、考え事か?」
涙を拭くのを俺に見られないようにしているのか隠すようにしているバレル………まったく、苦労性な奴だな、こいつは………
「バレル、俺は一つおもうんだ」
「え〜と、何をですか?」
「失敗するのは当然だって…………だからって失敗していいとは言ってないからな?」
「…………」
俺はさらに一人で続ける。もう、何を言っているのかもわからなくなってきた…………。
「次、何か失敗したらおしおきだからな?」
「え?」
「健康状態の俺のおしおきはきついぜ?ちゃんとしとけよ?」
「わ、わかりました!」
バレルは立ち上がって頷く。
「さ、今日はもう遅いから早くシェルの隣で寝ろよ」
俺はそういったのだが、バレルは俺を見る。
「………あの、マスターの隣で寝ていいですか?その、シェルのいびきうるさいので………」
「………ああ、好きにしろ」
可愛い嘘だとおもったのだが………後に俺はそれが嘘ではないと知ったのだった。




