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第一章 第八話

バレル「しかしまぁ、私ってすごいですよね〜」??「あんた、まだいたの?いい加減、引っ込んで欲しいんだけど………」バレル「マスターの言うことなんて全部きいてますから!」??「そうかいそうかい………ええっと、これ以上行数を無駄にしたくないので一言、これからもよろしくお願いします」

八、

 シェルが隣のクラスで、俺は自分のクラスへと遅刻してやってくる。どうやら休み時間だったようで俺と同じクラスになったバレルは既に皆に囲まれていた。そこで俺は気がついたのだが、シェルはバレルより一歳年上ならば三年生ではないのだろうか?

「あ、マスター!」

「マスター?」

 俺のほうを見てそんなことを言うが、俺はあわてない。既に口裏は合わせている。

「えーと、バレルさん、マスターってどういうこと?」

「それはですね〜………えっと、私が昔通っていた喫茶店の主人がマスターと呼ばれていてその人に非常に似ているからなのです!」

 よく言った、バレル…………俺は黙って席に座って次の授業の準備を始める。

「へぇ、その人ってあんなに気難しそうな顔してたんだ?」

「気難しい?マスターがですか?私はそうとはおもわないんですけど………意外とああ見えて優しいですし………ゴミ箱から引っこ抜いてくれたのもマスター………むぐっ!!」

「みんな、次の授業はなんだ?」

 余計なことをバレルが口走る前にさっさと止める。

「え?次は数学だろ?お前、机の上に出してるじゃないか?」

「ああ、ただ確認したかっただけなんだ………バレル、ちょっと来てくれ………」

 俺はバレルを引っ張って屋上へと向かったのだった。勿論、クラスメートの連中もついてこようとしていたのだが見事にそれをまいたのは言うまでもない。

―――――

 屋上へと引っ張ってきた…………というより、掴んでもってきた天使候補生、バレル・バレットは何故かニコニコとしていた。

「ご機嫌だな?どうかしたのか?」

「いやぁ、だって、屋上に二人きりって言ったら決まってるじゃないですか…………恋愛ものの基本ですよ?」

「…………残念ながら俺は屋上で別れ話をしたという話を知らないってわけじゃないぞ?」

「!?」

 さて、冗談はそのくらいにして…………

「バレル、光翼閃輪偽天争って知っているか?」

「いえ?知りませんけど?」

 不思議そうにこちらを見てくるということは嘘をついていないということなのだろう………いや、天使が嘘をつくのもどうかとおもうがな。

「じゃ、ジョーカーは知ってるか?」

「ジョーカー?これですか?」

 バレルが取り出したのはトランプのジョーカーだった。

「ぜんぜん違う!はぁ…………バレルに期待していた俺が悪いのか?」

 もっと別のことについて知ることが出来ると思っていたのだがどうやらお門違いだったようだ。

「え〜と、何かを期待してくれていたんですか?」

「まぁ、な…………」

「そう、ですか………すみません、お役に立てなくて………」

 いやな空気が流れ出し、たまらなくなってその場に座り込むと、俺はちょっと考え事をした。何もこんな風に攻める口調で言いたいわけではないのだが…………知っていることを武器にすることが出来るのは事実だろう。そうすればちょっとぐらいは俺だってバレルを手伝うことだって出来るのだ。

「…………」

「…………あ、あのマスター」

「何だ?」

 いやな空気を吹き飛ばすようにバレルは口を開く。

「実は、さっきからこちらに何かが向かっている気がするんです」

「え?」

 俺は立ち上がって屋上の扉を見る…………と、一人の男子生徒とおもわれる人物がやってきた。

「二年四組生野雪人…………くまさん柄のトランクス」

「はぁ?」

「二年四組バレル・バレット………白のパンツ」

「え?」

 目の前に現れた男子生徒の目は赤かった………そして、腹の部分に巨大な目がある。

「こいつ………何だ?」

 もしかして、これがジョーカーか?こんな変態が………人のパンツの柄を言い当てたりする奴…………がジョーカーなんて洒落にもならんぞ?

「さ、さぁ?多分………多分、この人は女神様が雇った悪魔ではないのでしょうか?いかにも下級っぽい感じがします」

 確かに、人のパンツを見ることができるなんて役に立ちそうな感じはしないし、いかにも小物っぽい顔をしている。

「まぁ、人を見た目で判断するのはどうかとおもうが…………」

「あれは悪魔ですけどね?でも、どうしたらいいんでしょうか………」

 困ったことに相手はこちらへと徐々に近づいてくる。その手にはパンツが握られており、時折………つめてやる〜つめてやる〜口につめてやる〜………となにやら奇妙なことをいいながら近づいてくる。

「…………何か武器とか持っていないのか?」

 俺は隣の天使候補生へと視線を移す。

「ぶ、武器ですか?」

「光で浄化するステッキとか聖なる剣とか………」

「あ!そういえば支給されたものがありました!」

 制服の中に手を突っ込むと何かを引っ張り出す。

「光の矢です!」

「おおっ!まともなものが出てきたな…………早く弓でやっつけろよ!」

 待っててくださいね〜とかいいながら再び制服の中に手を突っ込むが、今度はなかなか手を出すことはなかった。

「…………忘れちゃいました!こうなったら肉弾戦です!」

「…………結局、こうなるのか………」

 雄たけびを上げながらつっこんでいくバレルの後ろで俺はそう呟きながらも加勢するためにその後を追いかけ始めたのであった。

 バレルの拳が相手に触れるよりも先に相手はいきなり崩れ落ちる。

「師匠!大丈夫ですか!」

「シェル!」

 シェルが右足を思い切り上げており、既に制服姿で若干短めのスカートなのでパンツが丸見えなのだが…………そこはどうでもいいことだ。

「こほん、まず右足を下げてくれ」

「あ、しつれいしました………こほん、下級中の下級悪魔が出てきて幸いでしたね」

 悪魔と呼ばれた男子高校生というより、もう何なのかわからない物体は影となって消えていった。

「それより、バレル………主というものを護るって言うのが今回のこの天使昇格試験の一つではなかったのか?」

「え、えーっと、そうでしたっけ?」

 あせった調子でそんなことを言うバレル。その目が泳いでいるということはちょっと怪しい、こいつ………もしかして嘘をつこうとしているとか?態度がバレバレなのだが……

「お怪我はありませんか、師匠?」

「あ、ああ………それより、今みたいなのがうじゃうじゃいるのか?」

 両方にたずねたつもりなのだがバレルは俺から視線をそらした。

「………いえ、うじゃうじゃというわけではありません………基本的に主とその候補生が二人になったときとかに出てきたりします。もっとも、下級悪魔たちは早く魔界に帰りたいために大体順番を決めて襲ってきますけどね」

 まぁ、シェルがいるから大丈夫ですと彼女は呟くとバレルをちらりとみる。見られたバレルは俺の前から走って去っていったのだった。


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