第一章 第五話
??「さて、この小説がどのくらいの人に読まれているかわかりませんが………構わず突き進みたいとおもいます!いえ〜い!」
五、
「う〜ん、いい朝だ〜」
窓から日差しが差し込んできていてとてもいい気分だ。
「す〜………すや………す〜………すや」
寝ているとバレルも可愛いもんだな〜………………っと、今のうちにバレルの部屋に転がしておくか。
俺は誰にも見つからないようにバレルを抱きかかえると彼女の部屋に侵入してベッドの上に転がしておく。
「よし!完璧!」
「何が完璧なの、兄さん?」
黙って後ろを振り返るとそこには鬼が………いや、春華がいた。
「これから襲うの?それとも、襲った後の痕跡を失くそうとしてるの?母さんにいいつけてやる!!」
去っていった後ろ背中がなんだか殺気を纏っていたとおもったのは俺だけか?
「む〜?なんだか殺伐とした空気ですね〜お目覚め最悪です〜………やっぱり、枕が違うと眠れないというのは本当なのですね〜」
いや、それはそうかもしれないが、お前の目覚めを最悪にしていったのは俺の妹だろうな。すまん、バレル………
―――――
「で、雪人は襲ったの?」
「襲ってません、無実を訴えます」
朝食の席で俺の裁判が始まった。
犯罪者の汚名が欲しくなかった俺は弁護側の証言者としてバレルを出した。
「え〜………っと、昨晩、目を瞑って寝ようとしたのですが………眠れなくてですね、その、一人で寝るのが怖いとかそういうのじゃなくて、マスターが一人で寝るのが怖かろうとおもってまだおきていたマスターに一緒に寝てあげますといってあげたんです」
いやいや、昨日はバレル…………『怖いから一人で眠れないんです〜一緒に寝てくださ〜い』って言っていた癖してなんだ、それ?
「ふんふん、それで?」
「マスターは嬉しそうな顔をしてありがと〜って言いながら…………すいません、マスター、以後はまじめに話しますからそんなに睨みつけてこないで下さい。私が間違ってました」
間違っていたのは俺のほうだ。お前みたいな頼りない奴に弁護を頼んだのをよ。
「こほん、それで、怖くなった私はマスターの隣で寝させてもらうことにしたんです。マスターがとても不思議そうで、とても顔を真っ赤にしていたのを今でも思い出しますね〜………それで、隣で寝かせてもらったんです……ああ、条件は朝には部屋に戻ることでしたけど、見事に寝過ごしちゃいました……以上、弁護側の証言を終わります」
これで、真実を理解していただけただろうか?俺はやっていない。
「………そうねぇ、それなら納得できるわ」
「…………そんなありえるわけないじゃない!きっと、綿菓子かなんかで布団に連れ込んだのよ!」
言っていることはああ、成る程なとはおもうが、俺はそんなちゃちな真似はしない。笑わせてくれるぜ、俺の妹よ………そして、そこまで俺に犯罪者の烙印を押したいのか、春華。
「じゃ、判決は無罪ね」
「そんな簡単な………」
落胆した表情が隠せない春華………母さんは続ける。
「………あの顔を見なさい?」
「兄さんの顔?そんなの見たっていいことないわ」
そんなのってなんだよ?
「それじゃないわ、バレルちゃんの顔よ?」
母さん、それって何?俺の顔?
「とても無邪気な顔だし、瞳なんて澄んでて綺麗だわ…………事実は素直に受け止める、そんな瞳をしているもの………今の春華の瞳はあの雪人より汚いわ」
あれ?何それ?俺の瞳ってそんなに汚いか?ためしにバレルに聞いてみた。
「………バレル、俺の瞳ってそんなに汚いか?」
「………悪魔が棲んでますね」
それは冗談だとおもっておこう。
「………はぁ、ったく…………とりあえず、俺、学校行ってくるよ」
「あ、そうだったわね………いってらっしゃい………バレルちゃんも行くわよね?」
「ええ、転校届けとか出してますから」
いつの間に………そんなことをしたのだろうかと俺はおもったのだが、気がつけば彼女は俺と同じ高校の女子制服を着ていた。青を基調として黄色のラインが目を引くもので………男子は普通の学ランである。
さて、制服のことはここまでにしておいて、俺は立ち上がり鞄を掴むが………
「まって、私がバレルさんを学校に連れてくわ…………色々と話しておきたいこともあるし…………それに、仲良くなりたいからね」
「バレル、それで構わないか?」
「構いませんよ?私もマスターの妹さんとは仲良くなりたいですから………ええと、春華さんでしたっけ?よろしくお願いしますね♪」
そういったので俺は先に一人で学校に向かうことにしたのだった。
しかし、このことによって俺は見事にわき道へと逸れてしまって行ったに違いない。彼女たち二人が後から来ることを知っている立場でいながら、俺はいつものように先に行ってしまったのだ。別に彼女たちに危害があったわけではないのだが…………
―――――
夏の暑さにひぃひぃいいながら俺は学校へ向かって歩いている。少しだけ時間帯が早いためか俺みたいに暑そうな面をして学校へ向かう奴らは少ない。
「せんぱ〜い!」
「うぉっ!!」
いきなり右腕を前に引っ張られたような感じがして、腕を掴んだ相手を見る。
「…………なんだ、里香ちゃんか」
ショートカットの女の子………本名、石井里香………あの誠の妹とは思えないほどの素直でよい子なのである。ただ、問題点としては周りの状況など関係ないように振舞うところがあり、空気が読めないといわれたりすることが多々ある。
「なんだとはなんですか!このさわやかな朝に!」
小麦色の肌を惜しげもなくさらしながら彼女はあはははは………と笑っている。
「ふぅ、里香………ちょっとはお兄ちゃんのことを考えてくれよ」
「誠、つらそうだな?」
そして、後ろから来たのは今にも倒れそうな顔をした誠だった。誠の嫌いな季節は夏で、暑いのがとりあえず駄目だった。
「そろそろ溶けて消えてしまいそうだ…………」
「お兄ちゃん元気なさすぎ〜」
ニコニコ笑いながら彼女は俺の手を掴んだままで歩き出す。発展途上な胸があたったりしてくるが朝から何考えているんだと自分を叱責する。
自分の中のピンク色の霧を追い払うために俺は話題をふることにした。
「しっかしまぁ、俺もお兄ちゃんって呼んでもらいたいものだな〜」
誠に振り返って俺はそんなことを言ってみた。奴はさも面白くなさそうな顔をすると呟く。
「…………そうかい?僕としては兄さんって呼んでもらったほうがいいんだけどな?」
首をかしげている誠にはわからんのだろうな…………いや、普段からそう呼ばれている連中はわからんのだろう。それか、兄さん……その響きに他人が混ざっている気がするのはうちの妹だけなのかもしれないな。
「頼んでみたらどうだい?彼女なら承諾してくれそうだけど?」
「おいおい、あんな現実主義者に説得を試みたところでやられるだけだろ」
「そうかな?君の言うことなら何でも聞きそうなんだけど?それこそ、お風呂とか」
何故、俺が一緒にお風呂に入らなくてはいけないのかさっぱり理解できなかった。そんなこと呟いて歩いていると、俺は違和感を覚えて足の裏を見たのだった。
「ん?」




