プロローグ
はじめまして、延猫です。まだ試行錯誤途中です。気軽に楽しんで頂ければ幸いです。
その昔、私が好きなものをどれか1つ選びなさいと神様に言われました。なぜ神様に会えたか、なぜ言われたのか、それは微かにしか覚えてないけれど確かに私はその時そう答えたのです。
睡眠しかいらないと。
その選択が幸をそうしたのか、定かではありませんが現在私はこの世界で最強種と名高い竜種に生まれ気がつけば寝るだけの生活をしていました。ただ、この体は栄養が無ければ寝ていても餓死してしまいます。
ですから、私が寝床にする一帯に森を作ることにしたのです。そうして出来た場所が聖竜の森。この世界にも人間がいるのですが、人間は滅多に入ることがなく入るとしたら年に1回ある儀式の時だけです。
奇しくも私が寝床にした森は5つの国の真ん中だったらしく、人間は最初入ろうとしたのですが入った瞬間私が森中に這わせている根っこによって木乃伊となってしまいそれ以来儀式のために開かれたルートでしかこの森に立ち入る事は出来ませんでした。
そんな生活をしていた私も気が付けば五千年もの時が過ぎたあたりからいい加減数えるのも面倒になり数えることもなくなり、私を囲む5つの国々も形を変え国も変わり何時しか古代という時代は終わりを告げました。
そうして古代という時代が終わった辺りから5つの国の一つ、東の国が勇者を召喚したとのにわかに信じがたい噂が私の元へやってきたのです。
「聖竜様、東国が勇者の召喚に成功したと」
その知らせを持ってきたのはいま私の寝床へとやってきた1匹の獣。その獣はその昔は私に挑んだ事もありましたが、叶わず現在は私の情報源の一つとして森を駆け回っています。
そんな獣の報告に私は考えました。近年では古代の終わりあたりから魔王という魔物を束ねる者達が台頭してきたのも知っていましたが、特に私にはなんら関係ないので放っておきました。
しかし、放っておこうとしたのも私だけの考えらしく人間たちはその勇者となる人物に魔王退治をお願いしたそうです。
ただ、ここまでは勝手にやってくれと思うことでしたが困ったことにその勇者一行が私の元へ来るというのです。
「なぜ、人間が、ここに」
「人間は聖竜様に加護を与えて欲しいと望んでいるようです」
「加護……」
今更ですが私の言葉の発音は獣よりスムーズではありません。ですが最低限は通じてますので生まれてからこの方このままでやっています。
しかし、加護とは妙です。既に勇者一行は神から加護を受けているはず。私の加護とやらは無くとも問題は無いはず。
ならば、なぜ私の加護を求めるのでしょう。
古代からの習わしならば、私の加護ではなく私の力を求めてやって来るのでしょうか。力ならば私を退治せねばなりません。
私もそう簡単には死にたくはないので早々に勇者一行に退治される気はありませんが、幾分謎が多すぎます。獣にはもう少し探ってもらいましょう。
「勇者の、狙い、探しなさい」
「かしこまりました、聖竜様」
獣に命を下し、獣は東の国へと走っていきました。しかし、勇者一行か。私が私だったら頃ならば喜んだのかもしれないが、私はただ寝ていたいだけの竜。どうでもいいことには代わりがないのです。