第8話 アルバVSケビン
ケビンが殴りかかってきた。
「うお!?」
思っていたよりもパンチのスピードが早かった。
動いたと思った瞬間にもう顔面にパンチが飛んできた。
それを間一髪のところで躱す。
なんか髪の毛にかすった気がするのだが。
補助魔法で動体視力を向上させていなかったら今頃顔面に一発もらっていただろう、そう考えると冷や汗が出てきた。
こっちは魔法使えるから大丈夫と思っていたがいきなりピンチだ。
ケビン君かなり強いんだけど!
「なんだ、お前、俺の攻撃を躱したのか、なかなかやるじゃないか。他の奴らは今の一発で大体倒れたんだけどな」
「・・・」
どうやら一撃で決着をつけるつもりだったらしい、攻撃にも結構な自信を持っていたみたいだし、今の攻撃が最高の攻撃力と考えてもいいだろう。
というかほかの子供に今の攻撃してたのか、えげつないな、ケビン君。
何がともあれ、今さっきの攻撃を躱せたのならばこれからの攻撃もなんとか躱せるだろう。
そして、躱しながら攻撃のタイミングをうかがえばいい。
そして、その後ケビンは何度かパンチを繰り出してきた。
だが、俺はそれをすべて躱した。
どれだけ時間が経ったのだろうか。
全神経を使っているため体感ではかなり時間が経ったような気がするが、実際のところは2、3分と言ったところだろう。
次の攻撃はいつ来るのか。
相手に牽制を入れつつ相手の動きを見極める。
心拍数が上がって心臓がバクバクいっている。
正直言って結構きつい、だが主導権を握っているとはいえ、こちらの攻撃に警戒しなければならないケビンの方も神経使ってかなり疲れてきているはずなのだが。
「どうした?さっきから避けてばっかじゃないか?避けるので精一杯ってか?」
大体あってます。
はい。
なんでケビン君はバテないんだ、それが謎なんだが。
ダメ元で聞いてみるか。
「そっちはなかなか疲れないみたいだけど、なんでなんだ?」
聞いたと同時にお返事とばかりに右ストレートが飛んで来る。
右ストレートを躱す。
「ん?、あぁ、それは俺が少しだけなら魔法を使えるからだな、Ⅱマイナス級だが」
「Ⅱマイナス級でも補助魔法は扱える、だから俺はそれで持久力を一時的に上げている、だからだっ!」
言い終わると同時に次のパンチが飛んでくる。
右フックを躱す。
ありゃ、ケビンくんも魔術師だったのか。
そんなこと言ってたっけ?まあ良いや。
確かⅡマイナス級は魔法の攻撃転用は出来ない、なので補助魔法と格闘技を組み合わせた技を使ってそんじょそこらの人相手には負けないようにしているのだろう。
だが相手も魔法を使っているというのならば、こっちも堂々と魔法を使って良いのか?魔道具縛られているけど魔法は個人の能力だ。
何も問題はないのだろう。
でもそれはそれで不味いか、こちら側の全力が知られたらいけないからな。
ここはあえて攻撃魔法を転用して自身の補助に使うか。
方法は...おっと!
そんなことを考えているとケビンの攻撃が飛んで来た。
アッパーを躱す。
だが考えはまとまった。
躱した次に俺は下がった。
まずはケビンと距離を開ける。
ケビンはこっちが疲れてきたのだと思ったのかニヤッと笑みを浮かべて突っ込んできた。
右ストレート。
その一撃は明らかに補助魔法で強化してあるパンチだった。
なんか残像見えるもん。
最初の一撃と同じくらいの威力があるだろう。
だが、俺はあえてその一撃を受け止める事を選んだ。
両腕でガードをし、腕を魔法で集中的に強化する。
同時に足にも魔力を注ぐ。
そこへケビンの渾身の一撃が炸裂する。
バギッ
信じられるか?これガキの喧嘩なんだぜ?
俺は防ぎこそすれ、俺は体勢を崩し、後ろにふっとばされた。
こけることはなかったが、手を付き、立ち上がろうとする少しの間無防備な姿を晒した。
だがケビンにはそれで十分だった。
補助魔法で強化した身体能力の力で俺の目の前にすっ飛んできて再びパンチを繰り出して来た。
今の俺は守ることも避けることも出来ない。
ケビンの顔を見る。
ケビンの顔には完全に勝ったという表情があった。
そして、すべての力を込めて、自身の体のバランスを崩すほどの最後の一撃を繰り出して来たのだった。
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---ケビン視点---
俺はケビン、ケビン・アルフレッド。
父さんはキトカの町で商人をやってる。
取り扱っている品は雑貨から交易品、また注文があったらその品を取り寄せたりもする。
この町の中では他の町との交易の中心になり、結構重要な位置づけになる。
そして俺は4人兄弟の末っ子だ。
上の兄3人は既に後を継ぐための商業の勉強や自分の夢などのために独り立ちをしていった。
そして俺の夢は冒険者になることだ。
だが、俺は魔術師ではない。
正確にはⅡマイナス級だが、攻撃魔術を扱えない。
中には治癒魔法などを扱える人もいるがそんな人は稀だ。
そのため冒険者になった時の戦闘スキルとして剣術を身につけなければならない。
だが、俺はそのセンスもいまいちだった。
結果として俺は父さんから格闘技を習った。
父さんは行商をやってた時に身を守る術として剣術と格闘技を練習していたから仕事の合間に俺に教えてくれた。
そして、俺はその格闘技を俺でも扱える補助魔法と合わせて自分で技を磨いていった。
ある日、自分より年上の奴らが自分の友達たちと遊び場所を巡って喧嘩になった。
喧嘩というより一方的ないじめに近い。
魔道具を使って脅している奴も居た。
俺はそいつらに殴りかかった。
結果として、俺はそいつらに勝った。
父さんから習った格闘術を使えば問題なかった。
年上で体格が大きくても無闇に殴りかかってくる奴らを倒すのに苦労はしなかった。
魔道具を持っている奴も、俺が父親に習ったとおりに対処すれば大丈夫だった。
魔道具をはたき落とすまでは苦戦したが、はたき落とした後は他のやつよりも弱かった。
腰抜けだった。
その日の夜、その話を父さんにした。
すると父さんは
「魔道具を使う奴は弱い。魔法が使えず、剣術も出来ない奴が魔道具を使うんだ、魔術師でもないのに魔法を使って攻撃をする。つまり魔道具を使う奴は魔法が出来ない上に剣術を学ぶ気持ちもないただの腰抜けなんだ。その上、自分の感覚で魔法を使っていないから力加減が出来ない。そういう奴は大概危険な方向へ走っていく。そういった人達をお前のような強い人間が正しい道へ戻してやらないとならないんだ。身の丈に合わない強力な力をそれに相応しくない人間が扱えば大変なことになる、それをよく覚えておきなさい」
といった。
俺はその日の出来事とその言葉を胸に刻みこんだ。
その後、俺はガキ大将になった。
年上を倒した俺の近くにいれば安全だということで自分の歳と同じかそれ以下の子供がぽつぽつ集まってきた。
俺はその子供を追い返すことはしなかった。
だが、遊んでいると魔道具を使って遊んでいるのが出てきた。
俺はそいつに厳しい口調で注意した。
だがそいつは聞く耳を持たなかった、それどころか俺に文句を言ってきた。
俺はそんな奴らをみんな容赦なくぶん殴った。
しかし、父さんはその俺に対してこういった。
「ケビン、お前は父さんがこの前した話を忘れたのか?身の丈にあった力でなければ大惨事を引き起こす。お前が今日やったときは力加減をしていなかった。それはもしかすると相手を殺してしまったかもしれない。お前も力加減が出来ないということはその力は身の丈に合っていないということだ」
俺はそこでに気づいた。
魔道具を使う相手に対してなら何でもしていいと言うわけではない。
相手を倒す力の加減が出来ないのが悪ならば、それは自分も同じということに。
そして、その次の日からは相手を殴るのは最終手段として控えるようになった。
俺は今の力は自分に合っていると考えている。
いや、力に自分が追いついたと思っている。
そして、最近ある噂を聞いた。
『ハーシュタ家の子供が何やら怪しい魔道具を開発している』
と。
俺はすぐにその子供について調べた。
子供の力はたかが知れてる。
だがそれでもすぐに情報は集まった。
名前はアルバ・ハーシュタ、年齢は俺よりも年下だ。
そして、そいつは俺達が遊び場にしている町の北の丘の森側の斜面へ行っているらしい。
言われてみれば時々向こうから変な乾いた音が聞こえてきていた。
はじめは木こりが木を切っている音なのかと思っていたが、そうじゃないみたいだ。
丘の森側への立ち入りは大人に禁止されていたが、俺は何人かと一緒にそっちへ行った。
そこには、何のためのものなのかよくわからないところが出来上がっていた。
土の山があり、そこに人型の鉄板が置いてあった。
そして、そこから300mほど離れたところに台があった。
ちょうど自分たちの腰の高さくらいの台だ、その横にはシートが敷いてあった。
見方によっては弓の練習をする場所だと思えないこともない、だが、それにしては明らかに距離が遠すぎる。
それに、弓だった場合、恐らく的に使っているであろう人型の鉄板を貫けないはずだ。
そして、その鉄板には小さな穴が開いている、それらを見てわかることは、なにやら恐ろしい物を作っているということだった。
それを自分と同じ子供が作っているのだ、大の大人を軽く殺せる魔道具を。
そんなものは早く壊さなければならない、危険過ぎる。
万が一盗賊などがそれを盗んで使い始めたとしたら恐ろしいことになる。
そんなことを考えていると、仲間の一人が丘の上の方を指差した。
そっちを見てみると、そこに一人の子供が立っていた。
恐らく、アルバ・ハーシュタだ。
俺は帰ろうとしたその子供を捕まえた。
間違いない、アルバだ。
俺は彼から魔道具を取り上げようとした、だが彼はそれを拒んだ。
他にもあれこれしてみたがダメだった。
グダグダ言っているのでこれは殴って失神している間に取り上げて壊すほうが良いだろう。
俺は喧嘩を始めようとした。
だが相手は乗ってこない、だから俺は色々と煽った。
そしたら乗ってきた。
相手が喧嘩を買った、これで気兼ねなく相手をぶん殴れる。
とは言えボコボコにすれば死ぬかもしれない。
そこで俺は最初の一撃で決めようと考えた。
だが、アルバは俺の攻撃を躱した。
正直それは予想していなかった。
その後も何度か攻撃したが、すべて躱された。
俺は魔法力を持久力向上に使い、その後も戦い続けた。
そして、ついにアルバが距離を置いた。
そして、俺はあいつが疲れてきて体勢を立て直すために距離をおいたと思った。
その隙を与えないためにも俺はすぐさま攻撃した。
あいつはその攻撃を防ごうとしたが、そのまま吹き飛ばされた。
そして、すぐ立ち上がってきたがその僅かな時間だけで俺は十分だった。
俺は全体重をかけて最後の一撃を放った。
これで倒せる、相手は防ぐことも避けることも出来ない。
勝利は決定的だった。
相手が魔術師でなければ。
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---アルバ視点---
ケビンは体勢を崩す程の攻撃を放った、それは即ちこれで決着をつけるということだろう。
だが俺はその攻撃を避ける自信があった。
どうするか?それはログナンと剣術の練習をしている時に考えていた。
俺は無詠唱魔法を使える。
それを利用するのだ。
そして、俺は体の横で火魔法を発動した。
イメージは爆発。
その発生した爆風で俺は横へ吹き飛ばされた。
本来なら避けられない攻撃を俺は攻撃魔法の転用で躱した。
殴りかかってきたケビンはバランスを崩してこけそうになった。
だが、何が起きたかわからず驚いた顔をしつつも、すぐに体勢を立て直そうとした。
そして、一歩足を踏み出した。
しかし、そこで俺の次の魔法が発動する。
その踏み出した先に土魔法で沼を作る。
そして、ケビンはその沼に足を取られて大きく体勢を崩した。
ケビンの勢いはそこで完全に削がれた。
そして、主導権はこっちへ移った。
さて、こっからは俺のターンだ、転生してから密かに練習を続けていた自衛隊格闘術の攻撃を喰らいやがれ!ください。
相手が柔道とかの技を使ってこなかったら良いな。
そして、俺はその後ケビンの足を払ったり投げ飛ばしたりして最後は関節技を決めて相手が降参するまでそのままにした。
そして、勝った。
どうも、天津風です。
今回はアルバとケビンがボコスカ殴りあう話でした。
ケビンくんはジャイアン的なイメージが前回の話で在ったかもしれないですがそんなことはないんです、いいやつ(?)なんです。
まぁ、自分の文章力がないのがいけないんですけど。
誤字などがあればまたご指摘ください。