第22話 冒険者ギルド
俺は一旦街の入口まで行き、ラーニャのいる馬車のところまで戻った。
「というわけで、一回荷物を預けることにしたから、その宿まで運んでいくよ」
「でも、預かってくれるって言っても本当に信用できるの?もし盗まれたりしたらどうするつもりなの?」
「うん、大丈夫、多分盗まれないから。でもそれよりこの人混みの中を馬車で移動するのは難しそうだからどうしようか」
俺が宿屋で色々と話をして、帰ってきた頃にはちょうどお昼時になってしまったので、通りは人で溢れかえっていた。
流石にこの中を馬車で進むのは難しい。
だったら徒歩で行くしかない。
「それじゃ、歩いて行くか。ラーニャも荷物持ってくれる?」
「うん、分かった。」
そうして俺は自分の装備を身につけて、残りの荷物を二人で手分けして担いだ。
普通に考えたらこの年齢で持ち歩ける量を超えているが、それは補助魔法で身体能力を強化させたら持ち運べた。
そしてその荷物を持って宿屋へ向かった。
ちなみに馬車はレンタル馬車だったので、街の入口の厩舎のところへ返してきた。
聞いたところによれば、この世界では大きい街にはこのようなレンタル店があり、馬車やら馬やらを借りることができて、それは目的地のレンタル店に返せばいいというシステムがあるそうだ。
いわばレンタカーのようなものだ。
これからも使用することになりそうだ。
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街の入り口から15分ほど歩き、宿屋に着いた。
俺は荷物を一旦置いて、カウンターへ向かった。
受付はさっきと同じ受付嬢だ。
「すいません、さっき荷物を持ってくると言った者ですが」
「あぁ、さっきの君ね。荷物は・・・あの後にあるやつかしら?」
「はい、それじゃぁ、お願いします。」
そう言って俺はラーニャが持ってきた分を含めて荷物をカウンターに置いた。
荷物を受け取ると受付嬢はカウンターの後ろの扉から中に入りそこに荷物を置いた。
扉が空いた時に中の様子を見たが、自分たちのものではない荷物が置かれていた。
どうやらこの部屋は荷物置き場のようだ。
恐らく普段からこのように荷物を預かっているのだろう。
普通のホテルと同じだな。
部屋に荷物を置いて帰ってきた受付嬢が言った。
「確かあなた達はこれから冒険者登録へ行くのよね、どこへ行けば良いか分かる?」
「はい、冒険者ギルドの建物まで行けば良いんですよね?そこで受付をやっているみたいですから」
「場所は分かる?」
「宿を探している時に一回立ち寄ったので大丈夫です」
「そう、それなら良いわ。行ってらっしゃい」
そう言って俺たちを見送ってくれた。
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宿屋から10分ほど歩き、俺達は冒険者ギルドの建物に着いた。
場所は大通りの交差点にある。
道は昼食を取るために集まった人であふれていたが、その分建物の中は空いていた。
建物に入り、受付へ行く。
受付は日本の役場や銀行のように仕切られている。
「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件でしょうか?」
「あの、自分たち冒険者登録したいんですけど」
「分かりました、それなら必要事項をそこの机でこの紙に書いて持ってきてください。幸い今は空いているので早く終わると思いますよ。それと代筆は必要ですか?」
「いえ、必要ありません」
「分かりました。でしたら記入後再びカウンターにお越しください」
「ありがとうございます」
そして、俺とラーニャはもらった紙に必要事項を記入していった。
まずは氏名の欄にアルバ・ハーシュタと記入をする。
次に性別の欄を見る。
□男 □女
俺は男性にチェックを入れる。
なんだかこれを書いていると昔やっていたようなオンラインゲームを思い出す。
ゲームのキャラメイクの時にはよく女にしていたっけ。
だがここで女にチェックを入れるなんてことはやらない。
あれはゲームだから出来ることであって現実でやったら悲惨なことになる。
次に種族の欄を見る。
□人間 □獣人 □竜人 □魔人 □ドワーフ □エルフ □その他( )
俺は人間の欄にチェックを入れる。
ラーニャは獣人にチェックを入れている。
やはりこの世界には色々な種族が存在するようだ。
その他の欄が存在していることからこの大まかな6種族に加えてその他の少数種族がいるのだろう。
いや待て、6種族?
昔に異世界の歴史を聞いた時は5種族だったような気がするのだが。
何かの種族が多いのか?
人間、獣人、竜人、魔人・・・、これだ。
自分が話を聞いた時には魔人なんていなかった気がする。
まぁいいか、それだけ種族が多いということなのだ。
それならその分だけ世界が広がる。
そして残りの項目に年齢、出身地、宗教などを記入する。
最後の項目は魔術師であるかどうか。
俺は魔術師に記入を入れた。
とりあえず書類に全ての記入を終え、俺は顔を上げた。
記入は10分ちょっとで終えることが出来た。
ラーニャも記入が終わりそうだ。
それまでにミスがないか一通り目を通す。
「よしっ、こっちも書けたよ」
目を通している間にラーニャも記入を終えたようだ。
二人でカウンターへ行く。
さっきよりもちょっと人が増えたような気がするが、並ぶという程でもなかった。
「用紙への記入終わりました。」
そう言って先ほど用紙を渡してくれた受付嬢のいるカウンターへと行く。
「分かりました。冒険者ギルドでは怪我や病気、死亡が全て自己責任になり、また冒険者間の抗争などについては一切の責任を負いませんが、よろしいですか?」
「はい、問題ありません」
「分かりました。それでは、冒険者登録料をお納めください。二人で銀貨4枚です。」
そう言われて、俺は銀貨4枚を取り出して受付嬢に渡した。
受付嬢はそれが本物かを確認し、金庫へとしまった。
「それでは、今から冒険者についての説明を始めます。お二人の名前は、アルバ・ハーシュタさんとラーニャ・ハーシュタさんでよろしいですね」
「「はい」」
「あれ、この名前どこかで・・・・・・、ああっ!」
突然受付嬢が驚いて大きい声を出した。
建物内の視線が一気に俺たちに集まる。
俺は受付嬢に声を下げるように言った。
「突然どうしたんですか?」
「いえ、すみません。このハーシュタですけど、ログナン・ハーシュタって人の名前と一緒なんです。何か繋がりとかあります?」
「いや、繋がりも何も、自分の父ですけど・・・」
そう言うと受付嬢は再び叫びそうになったが、ラーニャが睨んだことで何とか堪えた。
獣人族なので睨まれると結構怖い。
「それで、自分の父がどうかしたんですか?」
「ええ、ログナンさんはかつてかなり有名な冒険者だったんです。ランクはS級で世界中の色々な所で活躍していたそうです。冒険者を引退し、今はどこにいるのかわかりませんでしたが、まさかこういった形でまたこの名前を見る日が来るとは・・・」
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その後は話が長くなり、その流れで冒険者の説明へと移っていった。
冒険者の話について要約すると、こうなる。
冒険者は、名前は冒険者だが実際のところは何でも屋である。
そして、冒険者にもランクが存在し、下から準に
F級
E級
D級
C級
B級
A級
S級
となる。
そしてログナンはその最上位ランクのS級だったらしい。
我が父親ながら何者だよ。
そして始めはF級からスタートする。
「では、冒険者タグを発行いたしますね」
そう言うと、受付嬢は新しいペンダントのようなものを取り出し、そこに文字を書き込んでから、横にあったよくわからない魔術道具の類であろうものの中に入れた。
10秒ほどしてタグを取り出すと、さっきインクで文字を書いたところが綺麗に彫り抜かれていた。
「はい、こちらがアルバさんの冒険者タグですね。こっちがラーニャさんの」
そう言って二人は真新しいタグを受け取った。
タグ自体は木で出来ているが、さっき聞いた話によれば特殊な魔法によって絶対に燃えたり腐ったりしないという。
「この冒険者タグは特殊な魔法がかけてあるので、記された情報を無理に改竄しようと思っても不可能なのでご安心ください。」
そして、さらには情報を無理に変更することも出来ないらしい。
結構厳重で安心した。
「次に、クエストについてですが・・・」
そして、今度は肝心のクエストについての話を聞いた。
それによると、クエストの受け方は最も一般的なものとして冒険者ギルドにある掲示板に張られたものを見て受注する方法らしい。
その他の主な方法は、ギルドから直接依頼されるということや、依頼主から直接頼まれるということもあるらしい。
また、まれに突発的に依頼に巻き込まれたりもするそうだ。
受けることが出来るクエストは、自分のランクの2つ上の依頼までだが、それは上級者ならともかく初心者の段階ではあまりおすすめしないらしい。
上の方のランクになってくればある程度の場数を踏んでいるので、ヤバイと感じたらすぐに逃げられるが、初心者ではそれが出来ない。
それによる犠牲者を減らしたいということだそうだ。
なので、F級の段階では素直にF級のクエストを受注する。
よくてE級までのクエストが限界らしい。
逆のパターンとしてS級冒険者がF級の依頼を受けることも出来るが、それも歓迎されないという。
そもそもS級冒険者がそのようなクエストを受注しても報酬がおいしくないのでやらないというが。
そして、このようなクエストをこなしていくと、その実力に応じてギルド側がレベルを上げていくということだ。
次に聞いたのが、複数人での行動についてだ。
まず、複数人でのチームには
パーティー
ユニオン
この二つが存在する。
パーティーは少人数で編成するチームだ。
人数制限はは2人から10人まで。
20人や30人で編成出来ない理由は、そんなに人数がいても連携が取れないからという理由らしい。
パーティーは大体全員が組んでいて、普段から行動を共にしている場合がほとんどだが、その場にいた冒険者で一時的に組むことも多い。
そうなると、普段から組んでいるのなら問題はないが、臨時で組んだとなると意思の疎通が難しい。
目線を合わせるだけで相手の意志を読み取ったりしなければならなくなる高ランクにもなればなおさらだ。
そのためにパーティーは10人までということになっている。
そして、パーティー用のクエストも存在している。
そして、パーティーとは別に存在するのがユニオンだ。
ユニオンは、言ってみれば冒険者ギルドの下にもう一つギルドがあるようなものだ。
人数制限は無いが、それぞれのユニオンで加入条件を作っているところが多く、大体新米冒険者は入ることが出来ない。
しかし、誰でも編成できるパーティーとは違い、ユニオンを立ち上げるのはかなり大変だ。
まず、ユニオンを立ち上げるためには、発起人としてA級以上の冒険者が一人、それに加えてB級以上の冒険者二人、C級以上の冒険者二人の合計5人の同意が必要となる。
その上、資金として金貨10枚を収めなくてはならない。
その点、無償で編成できるパーティーのほうが有利とも言える。
「その他の点では、冒険者ギルドに登録してある店で冒険者タグを見せると割引をしてもらえますので、ぜひご活用下さい。」
「以上で大まかな説明を終わります。何か質問があればまたお越しください。」
「色々と有難うございました。」
そして、冒険者についての説明が終わった。
席を立ち、後ろを見るといつの間にか凄い人混みになっていた。
話を集中して聞いていたから気づいていなかったが、もうお昼どきを過ぎていた。
いつの間にこんな時間が経っていたんだ?
大体ログナンの話のせいか。
「それにしてもお父さんって凄いんだね、私初めて聞いたよ」
「いや、それについては俺も初めて聞いたけど」
どうやらラーニャはログナンについての話のほうが気になっているらしい。
「ところでラーニャ、ちゃんと話は聞いていたか?」
「え?、ああ、ごめんお兄ちゃん、話が長くなってきたから冒険者タグをもらってちょっとしたあたりから寝てたみたい。」
「なるほど、つまり一番肝心なところを聞いていなかったんだな」
「ごめんなさい」
いや、まぁ無理もないか。
ここ最近の野営続きで疲労が溜まっているんだから。
今日は早めに寝るとしよう。
そう思いつつ、俺は依頼が書かれた紙が張られている掲示板の所へ行った。
俺のランクのF向けのクエストは、『家庭教師』『庭の草むしり』『ペット探し』『家の掃除の手伝い』『店番』・・・
なんていうか、何でも屋と言われる所以がわかった気がする。
戦闘系のクエストが無いことに内心がっかりしつつ、俺はE級向けのクエストに目を通す。
だが、E級でも似たような依頼ばかりだった。
しかし、その中にも戦闘系のクエストがチラチラ混じっている。
「おっ」
俺は、その中に『ビッグラビット退治』というクエストがあることに気付いた。
報酬は、銀貨10枚、なかなか美味しい。
期限も無期限、場所は近所の森だ。
「なぁ、このクエストとかどうだ?」
「うん、名前からして弱そうだし大丈夫なんじゃない?」
ラーニャも同意のようだ。
俺はそのクエストの書かれた紙を受付へと持って行った。
さっきの受付嬢は別の客の相手をしていたので、別のカウンターで渡した。
「このクエストを二人で受けたいのですけど」
そう言うと別の受付嬢は冒険者タグを見せるように言った。
冒険者タグを見てF級と書かれているのを見て少し険しい顔をしたが、何も言わずにクエスト受注の判子を紙に押した。
よし、これでクエストは受注した。
後は明日このクエストを実行するだけだな。
そうして俺とラーニャは宿へと向かった。
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大通りはは未だに人で溢れていたが、10分ほどで宿屋に着いた。
カウンターへ行き受付嬢のところへと行く。
「すいません、予約をしていた・・・」
「ああ、君たちね、冒険者ギルドで登録してきたの?」
「ええ、ちゃんとしてきましたよ」
「それじゃぁ冒険者タグを見せてくれる?」
そう言われて俺とラーニャは首から下げていたタグを見せた。
「わかったわ、ちゃんと二人部屋を確保してあるから、そこで良いわね?」
「はい、大丈夫で・・・」
そう言おうとして俺は気付いた。
二人部屋?それって、ラーニャと一緒の部屋で寝ることになるんだよな?
それって大丈夫なのか?
「うん、大丈夫だよ、それより早く休みたいからね」
そんなことを考えて固まっていると、ラーニャのほうが返事をした。
許可しちゃったよ。
でも、ラーニャがいいって言うんだったら良いのか。
「では、荷物を部屋に持っていくのも手伝いますね」
「あ、わかりました。」
この後は部屋に荷物を持ち込んだ。
荷物の中身は荒らされていないので、ちゃんと預かっているだけだったようだ。
これでやっと宿でゆっくりすることが出来る。
ベッドは二つ置いてあった。
ラーニャが窓側のベッドを取ったので、俺はもう片方のベッドに寝転んだ。
寝転んだと同時に疲れがどっと押し寄せてきた。
部屋の鍵もかけたので大丈夫だろう。
俺は、そのまま睡魔に飲まれてすぐ深い眠りについた。
どうも、天津風です。
結局投稿が遅くなった・・・
ギルドの設定がちょっと手こずったんです。
決して某戦車ゲームのクランマスターから帰って来いと言われて戦車乗ってたわけじゃないですよ?
プレ垢切れて小説書き始めたわけじゃないですよ?
とりあえず投稿頑張ります。
結構文法がおかしい気もしていますが。
誤字などがあればまたご指摘ください、大歓迎です!




