プロローグ
プロローグ
某年7月某日
俺の名前は本田健也、20歳、年齢=彼女なし、童貞の一般的?な二十歳の男性だ。
一応大学まではいったが中退、その後自衛官候補生として陸上自衛隊に入隊し今に至る。
「自衛隊に入ってもうそろそろ一年か、親が死んだのも一年前のこの頃だったな......」
そんなことを一人つぶやきながら駅へ向かって歩いて行く。
夜、駅から電車に乗って友人達と待ち合わせている居酒屋に行った。
今日は久しぶりにこの友人達と会う、達と言っても自分含めて三人なのだが。
一人は小牧一馬、20歳、現在大学生で俺とは小さい頃からよく一緒に遊んでいた親友だ。
彼の夢は大学を出てどこかの報道関連の仕事に付くことらしいが、現在の成績では大学をまともに卒業出来るのか怪しいところだ。
それよりこいつは絵を描くのが上手い、それこそ本当に漫画家などを目指したほうが食っていけるのではないかと言うほどに。
もう一人は古川雄大、20歳、こいつは俺と同じで自衛隊に入っている。
ただ、俺とは違ってこいつは中央即応連隊に所属している。
中央即応連隊とは、栃木県の宇都宮駐屯地にいる中央即応集団隷下の部隊である。
略称はCRRや中即連などで中央即応集団の主幹部隊とされている。
何をする部隊なのかわからなければ、海外派遣などで送り込まれる部隊と思っていたらよい、また緊急事態に於いては各方面隊の支援へ向かう。
ちなみに俺が所属しているのは第33普通科連隊というところである。
まぁ、特にこれといった特徴がある部隊ではなく、しいて言うのであれば、旧陸軍と同じ連隊番号を引き継いで同じところに駐屯していると言うことぐらいだが。
話を戻そう。
俺達の話題が途切れることはなかった、なにせかれこれ三年間このように集まって話をしていなかったのだから。
俺は自衛隊に入ってからの訓練のことを話題にし、軍オタである俺自身がまさか自分が自衛隊に入るとは思っておらず、苦労した話などをした。
(もっとも、兵器が大好きなのでそれを間近に見て実際に扱えるのはこの上ない幸せだったが。)
古川はそんな俺の話を聞いて中即連の訓練はもっと厳しいと言った。
確かに俺も中即連が厳しいことは知っている、だが自分が見れないような装備を間近に見れるなんて羨ましいことこの上ない。
俺もいつか中即連に志願しようかな?そういえばうちの先輩にも中即連に行くために頑張ってるとか言ってる人が居たが。
どの先輩だったかな......
思い出した、確か小林士長だ。
まぁそれについては別にいいか。
他にも小牧は大学生活についてあれこれ話をしていた。
成績があれで単位が危ないだの何だの言っていた。
やっぱりこいつ本格的にイラストレーターか何かの仕事につくようにしたほうがいいんじゃないのか。
だが、中学からの友人たちである彼らも明らかに避けている話がある。
それは、俺が大学を中退して自衛隊に入るきっかけとなったちょうど一年ほど前に起こった両親の他界についてだ。
去年のこの時期、俺は大学2年となり自分の夢である兵器などを開発する仕事につくために色々なことを調べつつ生活していた。
そこに突然、両親が死亡したという連絡が入った、両親が乗った車とトラック事故を起こしてしまい、車がぺちゃんこに潰れてほぼ即死だったそうだ。
俺は突然の出来事を理解できずに呆然とし、しばらく学校にいけなくなった。
両親の葬儀を終えた俺だったが、ここでこの先どうするかを考えなければならなくなった。
一応コンビニでバイトをしていたとはいえ、学費を収めることが出来るはずもなく俺は大学を中退するしかなかった。
学校をやめたあとは小牧の両親に色々親切にしてもらっていたが、俺自身それは迷惑をかけて不味いと思っていた。
だが、この先どうすればよいか全く考えることができなかった。
そしてただ毎日を無意味に過ごしていた俺に対して、自衛官候補生になったらどうかと言ってくれたのが古川だった。
そして俺は自衛官候補生になり、それから自衛官となった。
それから俺は新たな生活をはじめ、なんとか自立することができた。
だから俺は本当にこの二人とその家族たちに感謝している。
この事以来俺は誰かの助けになりたいと思っていた。
だから人の役に立てる自衛隊もいい仕事だと思っている。
俺は二人がこの話を避けているこに気づいていないふりをして、彼らの親切心を無駄にしないようにした。
そのために次々と話題を出していった。
最近国会で自衛隊の海外派遣の際の活動を大幅に増やすという法案が出されたなどという話や、最近テロが活発になってきているという話をしていた。
......久々に会ったというのに何の話をしているんだ俺達は。
また俺に対してもっと人の役に立つためにPMCにでもなれば?などという冗談もあった。
そんなこんなで話が進んでいき、自分の好みの二次元キャラについて語り始めた。
結果として小牧が俺たちの好みのキャラの絵を描いてくれることとなった。
俺の好みを反映したキャラは、銀髪碧眼獣耳ロリ巨乳ということとなった。
ちなみに古川は金髪のエルフで背が高く巨乳でかっこよさと美しさを兼ね備え、碧眼でロリで獣耳でヴァルキリーのようでアホの子ということとなった。
......酔っているのか後者はめちゃくちゃな要求になっているが、まぁ俺のやつは大丈夫だろう......大丈夫だよね?
そして解散になり俺は駅に向かった。
帰り際に小牧に絵ができたらまた送るから楽しみとを言われた。
マジで描くのかよ、あいつ。
ちなみに古川の案は却下となった。
駅から電車に乗り、最寄り駅で降りたあとに宿舎まで夜道を歩いて行った。
途中でふと今日の会話を思い出し
「PMCか、確かにそれならもっと色々活動出来るのかもな......」
とつぶやいていた。
だが、実際問題PMCというものはあまりいい話を聞かない。
なのでそんなものに入るよりは今いる自衛隊のほうがまだ良い、そのように考えていた。
すると突然路地裏の方で声が聞こえた。
なにやら嫌な予感がして覗いてみると、案の定、女性がチンピラに絡まれていた。
数は6、7人ほど、暗くてよくわからなかったが、手元には明らかにナイフのようなものが握られていた。
この女性を助けなければならない、まず、誰かを呼んでこなけれ......
俺はそこでその考えをやめた。
それはただ単に自分一人で責任を負うのが怖い、チンピラ相手に殴りかかるのが怖い、そういった理由の言い訳でしかない、今現に目の前で助けを求める人がいるのだ。
それに今から助けを呼ぶのでは遅い、それでは手遅れになる。
いまやらなければきっといつか後悔する、そう思った瞬間、俺の体が動いた。
「ぉ、お前ら、何をしているんだ!」
俺はチンピラたちに叫んで急いでその女性との間に割って入るように走っていった。
「あぁん?なんだ貴様は!」
チンピラたちがこっちに気づいて振り向いた。
「なんだよお前関係ねぇだろ、とっとと失せろ!」
だが俺はその言葉を無視した、誰か困っている人の助けになりたい、そのように思った以上絶対に助けなければならない。
その思いが原動力となり、俺はそのチンピラたちを追い払おうとした。
それに相手は大体6、7人、自衛隊でで近接格闘訓練をしている俺にはチンピラたち相手なら勝てる自身があった。
「痛い目みねぇとわかんねぇみてぇだな、このクソッタレが!」
そう言ってチンピラの一人が殴りかかってきた、だが俺はそのパンチをかわし、バランスを崩した相手の頭を掴んで顔面に膝蹴りを入れてやった。
一瞬チンピラたちが怯んだが、すぐにこっちに怒りの眼差しを向けてきた。
「クソ、ふざけんじゃねぇよ!てめぇぶっ殺されてぇのか!」
そう言ってチンピラたちはナイフを持って切りかかってきた、だが俺はそれをかわしてさっきと同じように逆にそのチンピラを返り討ちにした。
「ぐぁ!?」
「うぐっ!」
「ク、クソが!」
一気に仲間を半分失い、完全に我を忘れたリーダー格と思われる奴が殴りかかって来たが、ナイフをはたき落として顔面を殴ってやった。
そいつは鼻血を出して倒れこみ、残ったチンピラ二人は何やら叫びながら逃げて行った。
「大丈夫ですか?」
俺が声をかけるとその女性は泣き顔で頷いた。
俺はその時、初めて人を助けたのだという喜びで胸がいっぱいになった。
そして、手を差し伸べて立ち上がらせると、すぐにこの場から立ち去ろうとした。
すると、後ろで誰かが立ち上がる音がした。
「クソ、ふざけんじゃねぇ、死ね、このクソが、てめぇだけはぜってぇに許さねぇ!」
さっき顔面を殴ってノックアウトさせたリーダー格のチンピラの声だった。
俺はそいつの言葉を無視してさっさと立ち去ろうとしたが、次に聞こえた音で背筋が凍りついた。
カチャッ
俺はとっさに振り向いた、すると拳銃をこっちに向けたそのチンピラが立っていた。
なんで拳銃があるんだ、しかもなんでこんな奴が持っているんだ!?
一瞬頭が真っ白になった、だがすぐに走りだそうとした、この場を離れないと死ぬ、そう感じたからだ。
だがいくら走ろうとしても足が竦んで後ずさることしかできなかった。
さっきの音は撃鉄を起こした音だ、つまりいつ撃たれてもおかしくないことを意味していた。
「てめぇだけは殺す、ぜってぇに殺す!このクソが!クソ!クソ!クソォォォォォォ!」
そう言ってそいつは拳銃を発砲した。
俺ができたのは女性を突き飛ばしたことぐらいだ。
俺は立つことができずにその場に倒れこむ、撃たれたところへ血が集まっていく感覚、そこへナイフを持ったチンピラが馬乗りになり胸にナイフを突き刺した。
「---------!」
俺は声にならない悲鳴を上げた。
痛いというより熱い、そのように感じた。
そして突然まぶたが重たくなり、音がどんどん遠くなっていく気がした。
「クソ、クソ!」
そう言ってナイフを突き立てるチンピラの声も遠くなっていく。
女性の悲鳴や、拳銃の音で騒ぎ出した住民たちの声もだんだん遠くなり、全身の感覚がなくなっていった。
そして、まぶたが完全に閉じきって、しまった時、俺の意識もぷっつり途絶えてしまった。
今回初投稿の天津風と申すものです。なんか見切り発車で始めてしまった小説でちゃんと完結できるかわかりませんが頑張ります。
投稿は週一を目指していますが隔週になるかもしれません、また、早く出来た場合は前倒しで投稿するかもしれません。こんなありきたりな小説を読んでくださる人がいるとは思えませんがよろしくお願いします。