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週末限定レンタル勇者  作者: 暮先 冬夜
週末限定レンタル勇者 一章
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人間の国、見つからないアリア

 翌日早朝、酒場で朝食を済ませて急いで街を出る。離れた場所でノアールに乗って移動する。

 移動中にユレアから聞いた話だと、時々アリアの気配が強くなる事があって、必ずモディートグリーデンの方からだという。

 けれど近くに行くと消えてしまうから、自信はないらしい。何かの情報を掴んでやれたらと思う。

 同じように離れた場所から歩いて王都へ向かう。流石にここでは門番の兵士に止められた。

「待てお前達。王都へ何の用事だ?怪しいな…特にお前、目つきが悪いな」

 兵士は俺を値踏みするように眺めて、失礼な事を言う。…出掛ける時にユレアにオールバックにされたから、目つきが悪く見えるだろう自覚はあるが。


「すいませんね…こちらのお嬢さんがどうしても、王都の恋人に会いたいと言うので、俺達が護衛に付いてきたんですよ…」

 俺にだけ注目していた兵士に、剣吾がスッと近寄って話ながら、兵士の手を取る。銀貨を数枚握らせる。動揺する兵士に俺も近寄って、同じように銀貨を押しつける。

「…目つきが悪いのは、強そうに見せる為の演技ですよ。お嬢さんを守る為です…」

 兵士は咳払いをしながら、銀貨を自分の財布に入れた。俺達に向かって、あっちへ行けというように手を振る。

「よく見たら、そんなに目つきは悪くないな。通ってよし」

 俺達の世界でも金が有効な場合はあるらしいが、ここまでお約束通りだとは。


 ユレアを教会みたいな場所に残して、半日以上街を歩いて回った。表面上は平和で、エルフとも友好的に見える。

 だけど俺と剣吾が昼飯の為に店に入った時に、エルフに対する小さな差別を見掛けた。俺達よりも先に注文していたというエルフの頼んだ飲み物は、俺達が食事を食べ終わる頃に、やっと届けられていた。

 他には果物を売る店でも、順番を飛ばされたりしていた。どちらも忙しくて間違えたと言い訳をしていたが、本当だとは思えなかった。

「…気分悪い。地味にいじめだな、勇太はどう見た?」

「積極的じゃないから、やらされている感じがする…一応、ユレアに報告するか」

 ユレアと合流して、王都を離れて近くの森へ行く。


「…とまあ、俺達が見たのはこの位だったな。後は…」

 剣吾が横目で俺を見る。話しにくいのは分かるが、俺に押しつけなくてもいいのに…。ユレアと合流する前に、何人かの住民にアリアの事を聞いてみた。

 行方不明で皆心配している、それ以上の情報は何も手に入らなかった。

「ごめんな、ユレア…アリアの事、何も掴めなかったんだ」

「良いの、大丈夫。頑張って捜すわ…そろそろ送ろうか?」

 今回エルフと人の関係や、アリアの事では助けになれなかった。だからタレサビ村で出来る事を頑張ろうと思う。

 剣と金をユレアに預けて俺達は帰った。その日の反省会は少し暗かった。


 彼女が居ないからクリスマスもバレンタインも、一切関係なく過ぎ去っていき社会人として初めての年度末が来る。

 桜の話題で盛り上がる三月末。期末特有の案件や駆け込みのせいで、仕事が想像以上に大変だった。

 思い出してみると一年前は、毎日仕事に行く事が何よりも苦痛だった。面白くないし、怒られるから意義なんて見いだせなかった。

 途中からは妙な事に巻き込まれたせいで、あっという間に時間だけが過ぎた感じがする。次の一年は成長出来るのか、少しでも早く一人前になりたい。


 タレサビ、レタスタ、ソンノの三村では、二回目の稲刈りと次の田植えの用意も終わって、食べていくだけなら問題ない段階にきた。

 でも、よく話を聞いてみれば小さな希望があるようだ。俺達は長老に協力してもらい、タレサビ村の広場に意見箱を設置する事にした。

「それじゃ長老、次回までに俺達が手を貸した方がいいものと、皆で解決出来るものに仕分けを頼む」

「承知しましたぞ、それでは」

 帰ってからは恒例になった反省会だ。

「なあ剣吾。実際に発展途上にある村や国に技術面で支援をしたら、同じ結果になり得るかな?」

 剣吾は当たり前な感じで、冷蔵庫から色々出していた。商店街のくじ引きで当たった日本酒を選んでやがる。


「いいのがあるな、勇太。開けていいか?」

「だめって言ったって開けるんだろ?構わない。この後をどうするかな」

 俺にコップを渡してから剣吾が注いでくれる。互いに一口飲んで黙っていたが、剣吾が考えを教えてくれる。

「さっきの質問については難しいな。前提条件が違い過ぎる」

「前提条件?」

「ああ、まずは信仰はあっても直接目の前に神や魔なんて存在はいないだろ?」

「確かにそうだな。昔は神の怒り、今は雷って事だよな?」

「そういうこと。科学で解明されている事を、生身でやれるやつは聞いた事ねえよ」

 自分達にしても同じか。サンチョス達は俺達を異世界の人間だと知っている。だからある程度は、素直に聞き入れてくれるんだ。

 そう考えると剣吾が言うように、条件が違い過ぎだった。


「剣吾の今後に役立てるかな、俺」

「直接じゃなくても、ヒントにはなりそうだから気にすんな。矛盾をなくせばデータ作成出来そうな気がする」

 俺は内心でホッとした。おやじさん達との約束もあったけど、剣吾の助けになれているのか不安だったからだ。

「仕事に関しての今後の事は、長期間の宿題にして、飯食いに行こうぜ勇太」

「分かった」

 コップに残った酒を飲み干して、俺達は外出した。 

説明がだらだら続きそうな場所は端折っているので、ご容赦下さい。

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