真琴の章 1
はいはいはーい、読者の皆様~、おはよーございまーす!!
あ、この場ははじめましての方がいいですかね?
っつー訳で、はじめまして!!
金津園はソープランド『シェリー・キャッスル』のナンバー1(ワン)ソープ嬢の、真琴で御座います。通称まこっちゃんだ。よろしく頼むぜ諸君!!
まあ私はあれだ、乙原昭一の同級生でして、当然ながら歳は奴と同じく28ですよ。
しかしながら !
ね
ど
け
す
ま まあ女なんてこんなもん
て ですよ。
し
に
事
て 気にすんな
っ 気にすんな
・3
・2
は
で
前
の
客
えー、どこまで話したっけな……あ、そうそう。私がいつも通り出勤すると、なぜか乙原の野郎が店にいやがったんですよ。
お前、ここで何しとるんじゃー!?
ふむぅ、男性従業員を募集したら奴が来おったのか。なんてこった……乙原は、あたしの黒歴史を知る男。こいつぁー早急に釘を刺しておかねばなりませんな。五寸くらいの奴を……。
乙原はさておき、取り合えず仕事です。
「コバっち~、あたしって朝一は予約入ってたっけ?」
「お早うございます。真琴さんは朝一と、夜は8時半に予約を頂いてますね」
フロントの台帳をすばやく調べる店長小林。慣れたもんじゃのう。
「おっけー。今んとこ2人ね」
私は部屋に入り、身支度を整えます。
化粧を整え、下着をセクシーな仕事用ランジェリーに付け替え、店の制服である、スケスケのキャミソールに着替え、タバコに火をつけると、ちょうど携帯にメールが入ってきました。
From:常川さん
【やっほー。しばらく会えなくてごめんね。
今日は真琴ちゃんの好きなお菓子を持って遊びにきたよー。
ちなみに今、店に到着~
イエーイ☆】
常川……朝一の予約は、あのハゲたオッサンでしたか。半年振りだな……毎度。
さて、ちょうど今、店に到着したって事は、そろそろ扉の向こうに……
コンコン
「えぇと、真琴さん。スタンバイ願います!」
ビンゴ! 乙原の声です。台本通りのやり方で来店を知らせに来おった。
「あいよー、入ってらっしゃい」
乙原は【アイスペール】を手に部屋に入ってきました。ちなみにウチの店では中に氷を蓄えた容器【アイスペール】こそが、『客が付いたから支度してくれよ』、というサインです。接客中はこのアイスペールの氷を使ってお客さんのドリンクを作るんですよ。
「失礼しまーす。氷はここのテーブルの上に置いとくぞ?」
乙原がそう言い、アイスペールをテーブルに置いたその瞬間!
隙あり!
私は座ったままの体勢から乙原の胴を足で抱え込みます。これを『クローズドガード』のポジションといいます。
「……どうした? 客は常川様だが?」と怪訝な顔をする乙原に
「時に昭の字。お前さん、あたしの経歴をどれ位しゃべった?」
「経歴? 高校の同級生って事だけだが?」
「……そうか。
ちなみにそれ以上の情報を喋りやがった暁には……」
私はクローズドガードの体勢から乙原の腕を取り、私の足を奴の首に絡ませ、頚動脈を締めつけます。
「貴様を三途の川に送らざるを得なくなる。解ったか?
ちなみにこの技は『三角締め』と言う。覚えておけい!」
……ありょ? 乙原の返事が無いな……いけね、締めすぎたか。
それならば、と私は腕を取りつつ両足を緩めて首を開放し、体を横にずらし、腕の関節を極めにかかります。『腕ひしぎ十字固め』、通称『腕十字』って技です。
「さて昭の字、返答を聞こう」
「ぶはっ! お前、殺す気か!?」
「……返答を聞こう」
「痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!
ギブギブギブ!!
解った解った解った! 言わねぇよ、お前の経歴なんて!」
「うむ、ならば良し。それと昭の字よ」
私は腕十字の体勢のまま会話を続けます。
「常川さんにお茶を出したのは、お前さんか?」
「お茶? 出したけど別に余計な事は言ってないぞ!?」
「常川さんに限らず、すべての客に、あたしの年齢は23って事にしてるから、同級生って事を言うの禁止な?」
「はぁ!? お前、5歳もサバ読んでんのか? そりゃ詐欺ってもんd……」
「ナンバーワン嬢の太
モ
モ 「痛だだだだだだだだだだだ!
を ちょ! 折れる!
堪能しろ……」 腕折れるって!!」
その後10分ほど乙原の腕関節祭りを開催し、『どっちが強いのか』を解らせてやりたかった訳ですが、まあこの男にも仕事があるでしょうから、この辺で勘弁してやる事にします。
「痛っつー……って今の何だ?
いつの間にそんな格闘技を覚えやがった!?」
「東京にいた頃に、護身術として柔術道場に通ってたんだよ。
あたしを怒らせると怖いぜ!?」
「柔術? ブラジルの格闘技か!? また物騒なもん覚えやがったな」
乙原は腕をさすりながら部屋を後にしますが、扉の所で振り返り、
「あ、そうだ、常川様な、(ふっ……)『猫耳希望』との事なんで、ひとつよろしく。」
「お前……今、鼻で笑ったな!?」
「失礼しました!」
脱兎の如くフロントに逃げ帰りやがった。後でアキレス腱固めをお見舞いしてやらねばなるまい。
しかしあのオッサン、いい年こいて猫耳希望ときなすったか。猫耳ねぇ……
・・・・
さ
けど 引出しを開け、
あ る 件のアイテム『猫耳』を取り出し
ま て 鏡の前で装着します……
っ 私等、これで飯食ってんだよ。
持
そんな訳で戦闘態勢を整え、いざ出陣!
私の部屋は2階にあるので、廊下の扉の向こうにフロントがあるのですが、ここでいきなり開けてしまうのはド素人のする事で、ここは扉を薄く空けてフロントの様子を確認します。
「お時間までごゆっくり行ってらっしゃいませ~」
「行ってらっしゃいませ~」
見るとコバっちと乙原がエレベーターの前で客を案内しています。あれは早苗ちゃんか。一見の客を捕まえたとみえますな。やるじゃん。
2人を乗せたエレベーターのドアが閉まったのを確認してから私はフロントに入ります。
「(昭の字ー、まこっちゃん、準備完了したよー)」
客が来てる以上、フロントとはいえ、この場は舞台袖。スタッフは小声で会話を行い、客に舞台裏を見せずに段取りは進みます。
「(準備できたか? ちょ、ちょっと待ってて。次は翔子さんの案内をするから、えーと……)」
「(落ち着け昭の字。あたしは【談話室】で待ってるから、コバっちに指示を仰ぎな!)」
私は速やかにフロントの隣の談話室に姿を隠します。基本、自分以外に付いた客に対しては見ても駄目だし、姿を晒してもならないのがこの世界の掟!なぜなら、
「あー、○○さん! 次もあたしを指名してくれるって言ってたじゃん! 嘘つき!!」
「ちょっと××子! あんたも何!?
人の客を取ってんじゃないわよ!」
的などうでもいい修羅場になりかねませんからね、無駄なトラブルを避ける為の措置って訳です。
けどまあ、扉の影から覗いたりするけどな!
皆様も、案内の途中でちょっと横を向いて御覧なさい。その先に自分を見つめる眼があるかもよ?
「おはよー」
談話室ってのは、私達の待機所でしてね、この中では普通に喋ってもOKです。中に入ると翔子ちゃんが1人、全身鏡の前で髪をチェックしています。
「おはよう、真琴ちゃん。今日は猫耳なんだ?」
「ああこれ? お客さんのリクエストでさ。見てみ? 耳とセットで尻尾付き。キッツイわ~」
「(フッ……)いいんじゃない? かわいいわよ、それ。」
「え~、そうかな~?」
コンコン……ガチャ
「失礼します。翔子さん、お願いします」
ノックの主は乙原でした。額に汗がにじんでいます……相当テンパってやがるな。無理も無いか、初日だしな。
「はぁーい。じゃ、お先ー」
そう言い残すと髪をなびかせて翔子ちゃんは出撃して行きました。
……っつーか、あの女、私の猫耳を鼻で笑いやがったな……。
まあいいや。そんな事より自分の仕事だい! 気を取り直して鏡の前にて再度オプションパーツのチェックをしときましょうかね。
ついさっきまで翔子ちゃんの長い黒髪と見事な巨乳を映していた鏡は、今度は私の猫耳と尻尾を映しにかかります。
うむ、問題は無いな。
時間に余裕がありゃタバコの1本でも吸いたい所ですが、
コンコン……ガチャ
「失礼します。真琴さん、お願いします」
そうら、乙原が呼びにきやがった。しゃーねぇ、行くか!
「あいよー」
私はフロントに出て行き、店長コバっちからピンク色の小さな【客札】を受け取ります。この客札には客の名前、接客の開始と終了時間、指名情報(一見なのかリピーターなのか)などが簡潔に書かれており、1日の終わりに日銭を清算する際に必要になってきます。
「常川さんでしょ。メール届いてるよ」
「そうですか、本日は手土産をお持ちのようですよ」
客札を渡してくるコバっち。営業スマイルが様になってます。さすがは元商社マンって所でしょうか。かたや乙原は笑顔が妙に引きつってます。接客業の経験は無いのでしょう。そもそもこいつは高校卒業後、ずっと宮大工をやってたはずですからね……。何を血迷ってこの世界にきやがったのやら……。
コバっちが乙原に何か指示をしています。私の部屋はフロントと同じ2階だからエレベーターを使わないんですよ。だからボーイさんの案内方法も多少変わってくるのでしょう。そんな彼らを他所に、私は己の定位置である【廊下の扉】を開けてそこに座り、三つ指を付いて出迎える準備をします。
「こちら、2階廊下からの御案内となります」
コバっちの声。
「御指名ありがとうございます。
お時間までごゆっくり行ってらっしゃいませ~」
「行ってらっしゃいませ~」
うやうやしく頭を下げる乙原にコバっちが台詞をかぶせます。当店の接客マニュアル通りです。
三つ指を付いて頭を下げ、顔を上げたら、私も戦闘開始です。
【まこっちゃん@猫耳モード】起動!!
件の常川氏はスーツをカッチリと着込み、重そうなアタッシュケースを片手に歩調を崩さずこちらに歩いてきます。
パタン……
廊下の扉が閉まり、空間はフロントと縁が切れ、私と常川さんだけの世界になります。私の部屋は廊下の先の201号室です。
「おっはよー! 常ニャん、久しぶりだニャん☆」
「ん~……もう! 相変わらず可愛いね、子猫ちゃん」
廊下で軽くキスを済ませると、常ニャんは『敏腕ビジネスマン』の顔から一変して表情を変えます。これはこれで彼の戦闘形態の1つなのでしょう。
「今日はね、そんな子猫ちゃんに素敵なプレゼントだよ~」
「え~なになに何~!? 気になるニャん☆」
私は猫耳と尻尾を振り振り、接客モードを継続します。
「ふふっ。真琴ちゃんが好きだって言ってた有名店のチョコレートだよ~」
「うそ~!? 空けてみていい?」
「おっと、空けるのはお部屋の中で、ね?」
「うん! 常ニャん大好き~☆」
再度、部屋の前でキスを交わし、常ニャんを部屋の中に案内します。
か ぞ
と ぇ
しかし、あれだ き 無
好 は
が え
コ 覚
私は常川さんに ョ た
チ っ ……誰か他所の女と間違えて
言 やがんな……
まあいいか、取り合えず頂いておくことにしましょう。
私は常ニャんに続いて部屋に入り、部屋の扉をそっと閉めます。
「ニャっ!?ちょっと常ニャん、パンツ脱ぐの早ーやーいー!」
「ニャ~ん★ 今日の常ニャん、すっごい元気~!」
「くすぐったぁーい。も~、チョコ食べてからにしーよーうーよ~」
無人となった廊下に声のみが漏れ出します。これが本当の猫撫で声ってね。
……いや、すんません
なんでもないです。
☆ ☆ ☆
「常ニャん、そろそろお別れだよぅ……」
「え、もう!?」
常ニャんはそう言うと時計を確認し、火を付けたばかりのタバコを灰皿に押し付けます。
「シャワー浴びようか。頭は洗ってく?」
「いや、体だけにしとくよ。」
楽しい夢ほど覚めるのは早いものです。常ニャんは仕方なしに私と手を繋いでトコトコとバスルームに歩みを進めます。
ひととおり常ニャんの体と自分の体を洗い、体を拭いた後、常ニャんは服を着始めます。一時の夢は終わりを告げ、現実世界に帰る時がやってきました。
常ニャんが着終わった後、私も下着を付け髪を梳かし、スケスケの制服を身に纏い、
猫耳と尻尾の位置を再調整します。
家に帰るまでが遠足ですよ。
鏡の前でネクタイを整え、携帯のマナーモードを解除する常ニャん。すぐにポケットに入れるあたり、着信は無いようですな。
「真琴です。お客様、おあがりです」
部屋を出る前にフロントに内線で一報を入れておくのを忘れてはなりません。
「にゃ……ん……」
受話器を置いて、最後にもう1度キスを交わし、常ニャんを廊下に案内します。
「おあがりなさいませ~」
「おあがりなさいませ~、こちらの御部屋へどうぞ~」
フロントでは客を出迎えるべく、コバっちと乙原が所定の立ち位置で待機していました。私は最初と同じく、廊下の扉のところで三つ指を付いてお見送りです。
常ニャんがフロントの奥に消え、扉が閉まるのを確認してから私は立ち上がります。
任務完了。さらば常川氏。
「あ~どっこいしぇ(・)~っと。
んで、コバっち、この後の予約って入ってる?」
「先程の接客中に予約の電話を多数頂いてます。今日はフルで予約一杯ですね。」
嬉しそうだな店長。
しゃーねー! 今日もがっつり稼ぐとするか。
☆ ☆ ☆
「本日はありがとうございました~」
お客さんを三つ指でお見送り。その後の数名のお客さんは特にコスプレ希望も無く、まあ普通に忙しい日常ですよ。
しかし今までは昼の部。皆様ご存知の通り、色街が活気付くのは日が暮れてからのこの時間。夜のお客さんに備えて、ちょいと腹ごしらえでもしましょうかね。
「ふー、やれやれ……
コバっちー、まこっちゃん談話室にいるからねー」
「かしこまりました。お食事はそちらにお持ちしますね」
乙原が茶を持って行くのを見届けると、コバっちは私に営業スマイルを送ります。
「おりょ、あたしの貸しきりかい? レイ子さんは? いないか」
誰も居ない談話室で私は1人で呟きながらコタツに入ります。別に自分の部屋にいてもいいんですけどね、談話室にはこれがあるんですよ。そう、コタツが!
ビルの客間は当然ながらエアコン完備なんですが、コタツの有る無しで心の満足度が大きく変わってくるんですよ私ゃ。
1回、電気カーペット派の彼氏とコタツ談議でもめて喧嘩別れしたこともあるくらいの自称コタツ愛好家の私としては、夜の予約の前にコタツで暖を取りつつ出前のカレーでも食べて「さぁもうひと頑張りすっか!」的な段取りを組んでいたのですが、
あれ? なんかこのコタツおかしくね? 電気消えてね? コードが抜けたか? ちがうな……
コンコン……ガチャ
「失礼しまーす。
真琴さん、お食事をお持ちしましたぜ?」
ノックして出前のカレーを持って現れたのは乙原です。ボーイさんは基本、私達泡嬢には敬語を使います。けどこの野郎、なんか微妙に敬語じゃなかったよな今?
「むう……昭の字、ちょっと……」
「ん? どした?」
「コタツが壊れたらしい。ちょっと見てくんな。」
どれ……と呟き、カレーをコタツの上に置いてから中に潜り込み、電熱器を見る乙原。なんか時間がかかりそうな雰囲気です。
「カレーが冷めるな……昭の字、こん中にちょっとうつ伏せに寝てみ?」
……何故? と言いつつ、うつ伏せになる乙原。素直な奴だ。
しかし
隙あり!
乙原の片腕を布団の外に取り出し、私は片足でその腕を絡め取り、その足で腕を逆方向にねじります。『オモプラッタ』と呼ばれる、肩関節を極める技です。
「痛ででででで! お前、また関節技か!?」
「気の毒だが、あたしがカレーを食べ終わるまでお前さんには電熱器の役を演じてもらう」
これぞ炬燵ソムリエのまこっちゃんが開発した、名付けて『人間コタツ』! 良い子の諸君は真似すんなよ。
「ふざけんな! 俺にも仕事が……痛たたたたた!」
「ちょっとー、暴れたらルーがこぼれるじゃん!」
「うわ、こいつ本気でカレー食ってやがる! 信じらんねぇ!!」
コタツ布団の向こうから抗議の声が聞こえてきます。カレー超うめぇ。
「落ち着け昭の字。この金津園随一の萌えキャラの太股を触れるなんて、お前、三国一の果報者だぜ?」
「萌えキャラとか、どの口が言いやがるんだ!?」
「いやさ、日本の『三大萌え美人』っつったら
○○
××
まこっちゃん じゃね?」
「……その3人の中で
お 前 だ け 処 女 じ ゃ ね ぇ け ど な !」
おっと足が滑った。
「いだだだだだだだだだだ!」
「男ってのはどいつもこいつもー! 処女とかそんなん重大要素でもなくね?
『サザ絵ちゃん』見てご覧な! 人妻なのに国民的人気ヒロインじゃん!?」
「あれはそもそも【萌え】カテゴリーじゃねぇー!!」
☆ ☆ ☆
「今日はありがと~。またね★」
と、そんな訳で順調に夜の予約もこなし、本日の業務は終了でございます。
あ、あの後、乙原は何かコバっちに怒られてたみたいです。すまん。
さて、身支度を整え、フロントに日銭を貰いにいきましょうかね。
「乙~。今日の給料を頂戴な」
完全歩合の風呂屋稼業。給料は日払い制でございます。
「ほいこれ。客札ね」
ここで日銭の清算をするのに客札が必要になってきます。
三つ指を 付いて見送る 男の背
夢の跡に 残りし客札
真琴
なんてね。まあ、フロントはお客を管理してますから、台帳から勘定してあらかじめ封筒に現生を用意してるのですが、念の為の確認も兼ねてます。
「お疲れ様です。本日の御給金です。御確認ください」
コバっちは相変わらずの営業スマイルで店のマネージメント業務を行います。
「しかし、驚きましたよ。真琴さん、乙原君と同級生だったんですね」
……ピタ、と金を勘定する手が止まります。
「なんか昭の字から聞いてる?」
……背後で人が動く気配を感じます。
「いや、特には」
私は金の勘定を続けます。
「……まさか、高校卒業後のあたしの経歴とか聞いてないよね?」
背後の気配は通用口のドアの所で止まったようです。
「これといっては……そうですね、声優の学校の代々木ア……」
バタン!!
勢い良くドアを開け、階段をダッシュで逃げていく影を確認。
乙原だ!!
「昭の字いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「あの、真琴さん、僕は
『声優の学校の代々木ア』
でしか言ってなくてですね!?」
そんだけ聞けば十分じゃぁー!!