表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

二日目 前半


誰かに声をかけられた気がして、微かに目を開ける。一人暮らしの私を起こしにくる人なんて居ないはずなのに、誰だろう?

ぼんやりと見えたのは、灰色のワンピースに白いエプロンに帽子を着けた女性。

初めてみる人に驚いて私はベッドから飛び起きた。

「あなた誰! 人の家に勝手に入ってどういうつもり!」

 強盗? 強盗なら何で気づかれないように金品を持って行かないの? 金品以外に目的が在るってこと? 携帯はいつも枕元に置いているはず。さりげなく、枕元にある携帯に手を伸ばす。何か変な行動を起こされる前に、警察に電話だ。


 女性は深々と頭を下げる。

「ご無礼をお許しください。リュナ鳥の鳴く頃に御座います」

「……なに?」

「ユーデリの女神様、朝で御座います」

「え?」

 女性の言っている意味が理解できない。ユーデリの女神様? それってさっきまで見ていた夢の話でしょ。状況を判断する為に、まわりを見る。夢に出てきたベッド、それに自分の身体じゃなく、藍紫の軽くウエーブのかかった髪、額には石が埋まっている。

 冗談でしょ。

 でも、触る感覚は夢ではない。現実の物だ。


 ベッドから飛び降りて、部屋を見渡す。やはり昨日の夢で見たモノと同じ部屋。窓から見える風景は、森に囲まれた巨大な神殿に居るようなそんな風景。


「うそでしょ……」

 私は軽くめまいがして、窓に手を置きながら崩れるように床に座り込む。

 どういう事? 昨日のは夢だったはずでしょ。感覚もぼやけてたし……そういえば、寝る前かなりのお酒を飲んだ。お酒って飲むと感覚が鈍りぼやける時がある。まさかその感覚と夢を混合させてしまったってこと?

 

 漫画とか小説とかであるトリップって事? そんなことありえるの? いや、現実に起こっているのだから、ありえたのだ。

 なんで? 何で私が? いきなりこんな事に為るの?

 なんも身に覚えはない。……いや、ちょっと待てよ。私は額に手を当てる。

 この、額に埋まっている石、この石って私が自分の部屋で寝る前に額に当てていた石に良く似ている。今まで何の変哲もなく生活していた私に、唯一心当たりが在るとしたら、この石だ。ストレスを取ってくれるって言っていた石は、変な事態を呼び越してくれたって事?

 この身体は私のではない。昨日、女神が降臨するように祈りを捧げたと言っていた。何かしらの儀式が行われたとして、神様を下ろす時って巫女が必要になるはず。今でもしているかどうかは知らないけど、古代の日本だってそうしていたし、他の国でもシャーマンが居てそういう役目のはず。

じゃあ、もしかして本当に、昨日から知らない女性の体にあの石を媒体にして魂が入っているって事?

 いやだ。どうしよう。そう考えると、私の身体の方にはこの女性が入っているかも知らない。どうしたら、元に戻れるの? いくら美人だからって他の人の身体で生活なんて気持ち悪い!


「ユーデリの女神様? ご体調が宜しくないのでしょうか?」


 先ほどの女性に声をかけられて、私はある事に気が付いた。そうよ。誰かが石を媒体に魂の入れ替えをしたとしたら、それに関わったのはあの神官長と呼ばれた男だ。じゃなければ、宴の最中私の隣に立ってなど居られないはずだ。


 とにかく状況把握をしなければいけない。その為に神官長に会いに行こう。

 立ち上がった私は、女性に神官長の居場所を聞き出す。朝の支度を先にした方がいいと言われたが、事は一刻を争う。呼び出そうと言われたけど、教えてもらう側が呼びだすのは失礼だ。私が出向くのが普通だろう。朝早くから出向く失礼は、状況が状況だけに許してもらうしかない。


 寝間着のまま私は部屋を飛び出した。寝間着と言っても、シルクの長いロングドレスその下にも着ているから、動き回るのに恥ずかしい格好ではないはず。

 部屋の前に二人の男のガードマンの様な人がいた。私が出て来て軽く驚いていたが、神官長の部屋はどちらか聞くとあっさり教えてくれる。長い廊下を駆け足で走る。後ろに部屋の前に居た男二人も付いてくる。道に迷いそうになると、後ろから行き方を教えてくれるので助かった。

 私が居た部屋から階段を三つほど降りると、曲がり角で女の人の話しを聞こえた。

「―……でしょ? わたしも、まさかあのような方だとは思ってもみなかったわ!」

「神官長様がお可哀そうよ。十二神官の前であのような辱めを受けられるなんて」

「あたし、ユーデリの女神様を絶対許せないわ!」

「あぁ、あの場に居た俺も、なんて非道なって思ったよ。神官長様が耐えておられたので、止めに入る事が出来なかったが、命があればすぐに切り捨てていた」

「もしユーデリの女神じゃなかったら、粉々に砕いてやりたいわ!」

 数人の男女の会話からは私が昨日やった事に対する、怒りが感じられる。

 あぁぁぁぁぁ!!!! 昨日の私に会えるのなら、殴ってやって馬鹿な真似は止めろと怒鳴ってやるのに!

 そりゃ、皆が尊敬しているであろう神官長を人前で笑いものにしたんだから、憎まれるわよね。ムカつくよね。切り捨てるとか、粉々に砕くとか、私、殺される!

 今すぐ、土下座でも何でもして謝らなければ! 昨日の私は酔っていた所為で、夢だと思ったと正直に話して、とにかく誠心誠意謝らなければ!


「でもあの振舞いは、許せないけど、やっぱり女神の威厳を感じたわよ」

「まぁ、あの神官長様ですら逆らえない、威圧的な空気をお持ちだったな」

「そうね、非道であっても、やっぱりユーデリの女神様なんだわ……。許せないけど、あの空気で押されたら、逆らえないわね」

「私はあの威厳が無ければすぐにやり返してやりたいわ! 絶対粉々に砕いて、ザデスの谷にばらまいてやる!」


 顔を青くしながら聞いていると、昨日の態度じゃないと逆に仕返ししてやる系の言葉が飛んでくる。数人の会話は弾み、もしも普通の人の様な様子に為られたら、やってしまおうとか、俺だったら、馬の脚括って引きずりまわすとか、そんな恐ろしい言葉が聞こえてくる。

なんてことだ。昨日の様な態度を取らないといけないの?

 じゃないと余計に、身に危険が及ぶって事!? 無理だよ。無理。夢だと思ったからあんな女王様口調で話せたけど、普段は平凡なOLの私にそんな横柄で威圧的な態度をとれるわけがないじゃない! 現実じゃないと思ったから出来たんだよ!!

 あぁ。今すぐ泣き叫びたい気持ちになってきた。


「……無礼な奴らだ」

 後ろに居た二人のガードマンがいつの間にか剣を片手に持っていた。け、剣! 本物の剣だ。日本刀の様な鋭い刃をしている。そんなの持っていたの!? 私は思わず彼らと距離をとる。

「ちょ、ちょっと、その物騒なモノ、しまいませんか?」

「宜しいのですか?」

「宜しいも何もそんな、武器を持ち出すような事じゃないですよね……」

「あのような口のきき方、即刻、不敬罪で処刑すべきです」

 お、恐ろしい事言ってるよこの人。なんて事なの、ここってこんな暴力的な場所なの!? と、とにかく私が原因なのだから、何とか治めなければ!

 でも、ど、どうしたら? 

 頭の中が真っ白になる。ここで失敗したら、私の所為であそこの人たちは処刑されてしまう。それは何とか阻止しなきゃいけない。でも、私に何が出来る!?

 この、ガードマンたちに怪しまれずに止める方法は?

 昨日の行いが頭に浮かんだ。そうだ。これしか思いつかない。


「小賢しい。あのような者たちの戯言に目くじらをたてるでわない。剣をおさめよ」

 私は昨日の様に横柄に手を振り、威圧的に言う。

「はっ」

 ガードマン二人は剣をおさめて、胸に手を当て敬礼の様な事をする。なんとか言う事を聞いてくれてホッとする。で。問題は私の事を話していた人たち、ガードマンの手前、無視して通ることはできないよね……?

 あぁぁ、人に文句言うのって心臓に悪いし、なぜか文句を言うこっちが泣きたくなるのよね。嫌だな……、放って神官長の下に行きたいよ。

 ガードマンたちはなぜか、私に「さぁ、あいつらしめちゃってくださいよ」みたいな顔で見てくる。

 うぅ、胃が痛くなってきた……。

 私は嫌々、いまだに私を懲らしめる話で盛り上がっている人の方に向かう。


「そなたたち、楽しそうな話をしておるな」

 数人が一斉に悲鳴を飲み込んだような音を出す。顔が蒼くなっていき皆次々と平伏していく。あ、顔が見えなくなって良かった、引きつった笑顔だったから、あまり見られるとぼろが出そうだった。それに、私の事殺すとか言ってる人と目を合わせるのが恐かった。

 謝罪を一斉に口にする。本心じゃないとかなんとか言ってるけど、井戸端会議で言っていた言葉が本気じゃないって? そんなことありえないでしょ。さっきの口調本気でそう思っていたんでしょ。

 そう思われて、当然なことしたんだもの。謝らないでよ。悪いのは私なのに……

 ごめんなさい。

 でも、私は、保身のためにさらにあなた方に悪い事をする。許さなくていい、そのまま憎んでいいから、殺そうとはしないで。


「馬で引きずりまわす、粉々に砕く、切り裂く、なかなか面白いではないか。さて、誰からやってほしいのじゃ?」

 肩が震えてさらに謝る声が悲鳴のよう。足で近くにいた男の肩を踏みつける。

「やはり、男からやってみようか?」

「お許しください!!!」

 本当に恐いのだ。嫌な感覚だ。人の恐怖が足から自分に伝わってくる。さらに踏み男を足で転がす。顔を見せた男は顔が青白く、恐怖で目充血している。

 そんな顔にさせているのは私だと思うと、逆に泣きたくなってくる。あぁ、胃が痛い。


「そうさなぁ。今朝は気分が良い。特別に許してやってもいいだろう」

「あ、有難う御座います」

「今日一日、猫になりきって過ごすが良い。もちろん語尾は『にゃぁ』じゃぞ」

 猫のモノマネをして軽く笑う。

「……ネ、コで御座いますか?」

 首を傾ける男。

「なんじゃ、猫が嫌なら犬でもよい」

「それは、どのような生き物でしょうか?」

「え、居ないの?」

 お、素で答えてしまったよ。だって、居ないとは思わないじゃない。そうよね、でもここ同じ世界じゃないんだものね。生き物の生態が違ってもおかしくない。やらかした。


 軽く咳払い。

「では、そなたの好きな動物でよい。そなたたちも同じ様に動物の真似をして一日を過ごすが良い。仕事の支障をきす事のないよう、荷物を持った時のみ二足歩行を許可しよう。他は動物らしく地面をはいつくばるがよい。八匹もの動物がここをうろつくさまはさぞ愉快であろう」

 で、それらしく高笑い。


 颯爽とそこから逃げ、神官長の部屋に向かう。あぁ。絶対あの人たち今頃私に呪いの言葉をささやいているよ。藁人形とか、贈られてきたらどうしよう。あぁ。なんであんな言い方してしまったんだろう。もっと上手く、穏便にあの場をおさめられなかったんだろう、何でこんな機転の利かない頭しているんだろう。


 神官長の下にたどり着く前に胃が痛くて、胃酸を吐きそうになる。

 無理だ、やっぱり私にドS女神をやれる元気なんてない。情けなくて涙がこぼれそうになるのを必死に耐えた。


 神官長にあったらとにかく誤解を解いて、謝ろう。そうしたらきっとこの事態も変わるはず。

 でも、待てよ。昨日の出来事で一番腹を立てているのは神官長じゃない? あの人たちでさえあの言い分。もし私が平謝りしたら、向こうもこれ幸いと私を罰したりするかもしれない。どうしよう。謝るのは簡単だけど、その後の事を考えると恐ろしい。

 公開ストリップなんてさせなきゃよかった。あぁぁ。もうどうしよう。


 悩んでいるうちに神官長の部屋の前に到着する。執務室と言っていた。ドアの前にいた人に、後ろにいたガードマンが話しかける。取り次ぎを頼むとすぐに扉が開いた。

 後ろに付いて来た二人は扉の前までの様で、私だけ中に入る。どうしていいか、まだ決めてる最中だったのに……。

取り合えず挨拶から。


「お早う御座います。朝早くに連絡なしの訪問――……」

 まだ言っている途中だが、目の前に神官長の顔が腹に一物持った静かな笑みから、疑いの顔に変わる。昨日と様子の違いについていけないでいる。

 どうするべき。やっぱりあのドS女神様で通すべきなの?

 でも。あれは絶対身に持たない。胃がいくらあっても足りなくなる。素直に謝ってややこしい事態を解決すべき!

「如何されましたか? 身体の調子でも悪いのでしょうか? まさか、悪魔に取りつかれているのではありませんか」

「へ?」

「急に態度を変えるのは、悪魔に取りつかれ魂の一部を喰われたからだと申しましょう。ユーデリの女神様に取りつく様な凶悪な悪魔ならば、即刻首をはね葬らねばいけません。他の者に移れば一大事、ユーデリの女神の尊い犠牲により人々は救われるでしょう」

 神官長は、机の横に立てかけてあった剣を取り出し鞘から抜く。

え、あれ? なにこの展開。もしかして、もしかしてこれって!! 難癖つけて私を殺そうとしてない!?

 神官長は薄らと笑っている。実に楽しそうに見えるのは気のせいではないだろう。昨日の公開ストリップでやっぱり殺したいほど憎まれてたのね。これは、謝れば悪魔に取りつかれているとか訳のわからない理由で殺される。

 あぁぁぁぁ! 自分で招いた結果とはいえ、最悪だ! もう、こうなったら意地でもあのドS女神様演じてやる!


「戯言を申すな。妾はただ朝の挨拶をしただけであろう」

 神官長は残念そうに、剣をしまい一礼する。

「さようでありますか。あまりに雰囲気が静かでしたので、疑ってしまいました。お許しください」

「静かとは失礼な奴じゃ。まあよい。妾が来たのは、そちに聞きたい事がある。妾は何故ここにいるのじゃ?」

 神官長は静かに微笑む。

「ユーデリの女神様が一番よくおわかりでしょう」

 女神なんだから、分かっていて当然と言う態度。ほんとうは女神じゃないんだから分かる訳がないでしょ。でも、ここで無知である事を暴露してしまえば、間違いなく嬉々として神官長は私を殺そうとする。

どう言えば上手く聞き出せる? あまり動きの良くない頭をフル回転させて考える。


「分からぬのか。妾はそなたがどこまで理解しているか、試しておるのだ」

 机に腰掛けて脚を組み、手をあごに当てて言う。仕草はハッタリの重要な小道具になる。心臓がうるさくなっているのを無視して、手が震えそうになるのを必死に押さえて、余裕の笑みを浮かべる。


「まず、妾がどうしてここに居るのか説明して見せよ」

 神官長は静かに一礼する。

「ユーデリの女神様は私達の祈りにお答えくださったので御座います。シュラの月、ヂサの日にユーデリの書に従い、ユーデリの女神像に祈りを捧げました。天界におられるユーデリの女神様はユーデリの女神像に魂を御写しになられ、三日間私達の国に滞在したのち天界にお戻りになられます。私達は、三日間ユーデリの女神様が健やかにお過ごしできるように最善を尽くさせていただきます」

 女神像に魂を映し、三日間滞在する? と言う事は。今の身体の美女は元々女神像で、昨日で一日過ごしたから、あと今日入れて二日で元の世界に戻れるって事?

 よ、よかった……。じゃあ、後一日で帰れるなら二泊三日の異世界旅行とでも思えばいいわけね。仕事は丁度三連休に入ったし、困ることは無い。

 安心して息を付きそうになるけど、この神官長で気を抜いたら殺されそうなので、緩みそうになる顔を引き締め軽く頷く。

「して、この額の石について答えよ」

 元凶ともいえるこの石についても聞いておかないと。

「ユーデリの女神様の魂が宿る場所と呼ばれております」

 やっぱり、この石の所為で私はここに来ているのだ。

「具体的には、どのようにして天界に戻るのじゃ」

「ユーデリの間に同じ時刻までに入ればおのずと戻ると書されておりました」

「では、ユーデリの間に案内せよ」

 まずは、帰ると言う場所を確認しておかなきゃ。もし明日何かの妨害があった時、自力でも行けるようにする為だ。

「ユーデリの間はただ今清めの最中にて入ることはできません。明日私が案内させていただきますのでご安心ください」

 それが安心できないから、確認しておきたいのだ。

「もしも、時間までにユーデリの間に戻れなければどうなるのじゃ」

「そのまま、その場所で魂が戻るのでしょう。実際に時間に間に合わないと言う事は今までに在りませんでしたので記録に残されておりません」

 あれ、ということは。

「今までに、ユーデリの女神が降臨した事があるのじゃな」

「はい。ですが、それはユーデリの女神様の方がお詳しいのではないのでしょうか」

「妾はそなたの口から聞きたいのじゃ。今までに何回ユーデリの女神が降臨し、それは何年前なのか申すのじゃ」

「前回のご降臨は六百年前、ダラテ王の時代で御座います。その前は千三百年前、ジャヤ王の時代で御座います。さらにその前は二千年前、二千三百年前と記されております」

 結構頻繁に、女神が現れている。ならきっと性格についても書かれていたと思う。こんなドS女神とは書かれていなかったから驚いているかもしれない。色々やらかした。

「ご降臨の回数で御座いますが、その時代により違いがあります。ジャヤ王の元には五回、ダラテ王の元には四回ご降臨されました」

 げ、そんなに回数現れてるのか。嫌だな。元の世界に帰っても気が抜けない。まず帰ったら元凶の石を即刻何処かに投げてしまおう。そうすれば安心なはずだ。

「天界にて、ユーデリの女神は称号として力を継承された方であると聞き及んでおります。今回ご降臨されたユーデリの女神様は八代目と聞いておりますが、あっておりましょうか」

 継承されて八代目と言うことは、毎回違う人が現れてたってことね。なら、性格設定違っても大丈夫、よね?


「天界の事は話すわけにはいかぬ。妾が八代目かという問いは答えぬ事にしよう」

 神官長が言うだけで四人のユーデリの女神が居るけど、八代目と言うのは数が合わない。そうなると、もっと前のユーデリの女神がいたと言う事になる。確たることが分からないから下手に何か言って墓穴を掘りたくない。だから、答えない事にした。神官長はさようでありますかと、一言お辞儀して言う。



 気になる事を解決して少しホッとしていると、とりあえず着替えて食事をする様に勧められる。一度部屋に戻って、着替えて食事する。腹に一物持った男の言う事を素直に信用できるほどお人よしでも世間慣れしていないわけでもないので、メイドさんたちに神官長が言った事が本当か確認した。本当に三日限定だと教えてくれる。他にも、気になった事を聞いてみると、親切に教えてくれた。

今日入れて、後二日。それなら私でも何とかやっていける。鏡を見ながら私はドSユーデリの女神と自分に暗示をかけるように繰り返し思う。


 顔も、声も、身体も違う。ここにいるのは私ではない。


 ドSユーデリの女神だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ