小話 王様からの頼まれごと
それはオルフィスと王の謁見をしていたときであった。
「では、オルフィス。お主にダズと協力してまじかるすとーんを探す役目を申し渡す」
グラード王はそう言ってオルフィスに大切な役目を申しつけた。
「このオルフィス、陛下のために……いえ、この国の繁栄のために、微力ながらも役に立つのならば、その役目、喜んでお受けしましょう」
珍しくオルフィスはあのいつものオネエ口調ではなく、しっかりとした丁寧な口調でそう告げた。それに驚いたのは同じくオルフィスの隣にいるユレイアーナ・リバー。
それだけでも人が違ったように見えるのはちょっと変わったマジックを見ているようだった。
「して、ユレイアーナ。お主もオルフィスと共に協力して貰いたい。引き受けてくれるだろうか?」
「私で良ければ、謹んでお受けいたします」
ユレイアーナはそう言って頭を垂れた。
「詳しいことはダズに聞くといいだろう。二人とも頼んだぞ」
「はっ!」
二人は頷き、立ち上がる。
「そうだ、ユレイアーナ。少し話があるのだが」
「私は邪魔のようですね。お先に失礼させていただきます」
そう言ってオルフィスは王に一礼してから、早々に去っていった。
この場にはユレイアーナと王、そして司祭のみになった。とたんに自分の心音が高鳴るのが分かった。
「いやあ、オルフィスにも頼んでもよいのだが……あやつはちょっと先走る癖があるからな。お主だけに頼もうと思う」
王直々の頼みであった。
「へ、陛下……頼み事とは何でしょうか?」
初めてのことにユレイアーナの声が思わず上擦っていた。
「うむ。先程、大変なことが分かってな……その……私の愛する姫が一人行方不明になった」
「何とっ!」
ユレイアーナの目が丸くなる。
「我が愛する第三王女、アドリアーナ・エル・サンユーロだ。あの子は好奇心旺盛で……とにかく、アドリアーナを見つけだしたら、保護し、城へ連れてきて欲しいのだ。きっと男よりも女の方がアドリアーナの行動なども分かりやすいだろう。どうだ?」
「ど、どうだと言われましても……そんな大役、私めでよろしいのですか?」
「本当は騎士団長に頼むところであるが……今は休暇でここにはおらんのだよ。それに騒ぎを大きくして変な輩がアドリアーナを狙うとも限らない……。お主にやって貰いたいのだ……駄目だろうか?」
そう切なげに訴えるグラード王の様子を見かねて、ユレイアーナは。
「私でよろしいのでしたら、喜んで」
いつの間にか大役を引き受けてしまった。
「先程も言ったが変な輩がアドリアーナを狙わないよう、このことはオルフィスにも、誰にも言わず、内密に行って欲しい……。頼んだぞ……」
「はっ!」
こうしてえらい大役を引き受けることとなってしまった。
「い、胃が痛い……」
ユレイアーナの胃に穴が開くのは近い未来なのかもしれない。