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小話 王女様と不思議な石と不思議な薬

 ユレイアーナ・リバーは重要な情報を宿屋の食堂で手に入れた。

 一つは探している王女……かもしれない人物についての情報。

「セミロングの女の子なら見たことがあるわ。薬屋さんに入っていったけど」

 そうウェートレスに聞いた。まずはウェートレスさんから情報を聞き出そう。

「白衣を着た女の子みたいよ。ちょっとおどおどしているっていうか、大人しい感じだったみたい。何かを隠しているのかしら?」

 それ以上は聞けなかった。とにかく、大人しそうな白衣の少女らしい。何かを隠しているような素振りはもしかすると王女という身分を隠しているのだろうか? 後で薬屋に行こうと決め、次の情報を得るため、もう一度、ウェートレスに尋ねた。

「そうそう、それよりも聞いた? ジャパネに、あのまじかるすとーんがあるんですって!」

 ウェートレスはこうも言っていたのだ。

「それは本当よ。なんでも、ジャパネにあるまじかるすとーんを義賊が狙っているらしいのよ。一度でいいから本物のまじかるすとーんを見てみたいわよね」

 まじかるすとーんの話はこれくらいだった。ジャパネの何処にあるのか、どんな義賊がなんのために狙っているのか……よく分からないものだった。が、ないよりはましだろう。後でオルフィスに伝えて置いた方がいいとユレイアーナは思った。そして次の人物の前に出る。

「お、俺はアラビスに不老不死の薬があるって聞いたぜ?」

 カウンターに座っていた若者がそう言っていた。

「詳しいことを聞かせてくれませんか?」

「OK、OK~! 俺の聞いた話を言うぜ。えー、こほん。アラビスのクッルスに不老不死の薬があるらしいんだ。それを飲んだ者はどんな病気も怪我も治ってしまうらしい。でも、一つだけ……」

「でも?」

「水に選ばれた者でないと……飲んだ者はすぐにミイラになって死んでしまうらしいよ。きっと……呪われた水なんだよ、きっと。不老不死とかいうけどさ。だから見つけても飲まない方がいいぜ」

 その言葉にユレイアーナは苦笑した。

「あ、話してくれた礼です……これで何か食べたりして下さい」

 そういってユレイアーナは金貨を数枚手渡した。

「お、これはすまないね。じゃあ、もう一ついいことを教えてあげようかな?」

 にこりと笑って若者は続ける。

「アラビスのクッルスには気難しいおばあさんがいるんだよ。でもおばあさんはかなりの物知りだからね。何かあったら尋ねるといいよ。好物のアップルパイを持ってね」

「アップルパイ?」

「おばあさんが最愛の人と一緒に食べたらしいよ。その味とともに、そのときの思い出を楽しむんだってさ。長生きの秘訣だと教えてもらったけど、あんまり役立たないよな」

 若者は苦笑した。

 その後、ユレイアーナは宿屋を後にして、薬屋を訪れることにした。



「ああ、それならリッティちゃんだよ。サンユーロに住んでいる薬屋さんのお孫さんだよ」

 そう薬屋の主人が教えてくれた。どうやら人違いのようだ。

「ありがとう」

 礼を述べてユレイアーナは薬屋も後にする。

「さて……これからどうしましょうか……」

 今まで得た情報を活かすため、ユレイアーナは紙に書き出し、まとめながら、思案していたのだった。

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