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世界樹の世話役神官ですが、役立たずだと辺境に飛ばされました。開き直って辺境でスローライフをします。え、世界樹が枯れかけているって? そんなの知らんがな  作者: 江本マシメサ
第二章 世界樹を育ててみよう!

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これからの予定

 イグナート様はすでに食堂にいらっしゃった。

 不格好に見えないように、背中をしゃんと伸ばして入る。

 イグナート様と目が合ってしまった。

 黙ったまま何も言わないので、気まずく思って先に挨拶してしまう。


「おはようございます、イグナート様」


 固まったままだったので無視されると思いきや、少し間を置いて「おはよう」と返してくれた。


 ドレス姿について何か指摘されるかと思いきや、特に何も言われなかった。

 貴族社会では、朝からこういうふうにドレスを着るのも普通なのだろう。

 似合っていないとか、朝から着飾るなんてありえないとか、何か言われるかもしれないとドキドキしていたので、ひとまずホッとした。


 ミロンさんが椅子を引いてくれる。ここに座れということなのだろう。

 こういう扱いをされた覚えはないので、落ち着かない気持ちになる。

 腰を下ろしたら、少しだけドレスの圧迫感から解放された。


「昨晩は眠れたか?」

「はい、おかげさまで」


 世界樹も異変はなく、昨日より少し元気が出たようだと報告しておいた。


「わかった。必要な品があれば、なんでも言ってくるといい」


 それは世界樹関係の物だけでなく、私の私生活に必要な品も含まれるという。


「すぐに必要な品などあるだろうか?」

「鉢をいただけたらなと思っています」


 しばらくの間、世界樹を土に直接埋めずに鉢で育てる計画を伝えておく。


「鉢に植える期間はどれくらいだ?」

「まだわかりませんが、しばらくかかると思います」

「ならばその間に、温室辺りを整えておこう」


 そうだった、昨日の雹で温室のガラスはほとんど割れてしまったのだ。


「雹が当たった程度で割れないよう、ケット・シー特製の強固なガラスを発注しておこう」

「ケット・シーにアイテムの作成依頼ができるのですね!」


 大聖堂にもケット・シーが作ったアイテムがいくつかあったが、頑丈で使いやすく、この先百年は使えるだろうと神官長が話していた。


「ならば、これからケット・シー族の里に行って、世界樹の鉢も発注するか?」

「よろしいのですか?」

「ああ」


 猫みたいな妖精族だというケット・シーがどんな姿をしているのか、実は気になっていたのだ。

 そんなケット・シーの里はここからワイバーンに乗って十五分くらいの場所だという。


「へえ、ワイバーンに乗って十五分って、意外と近いんですねえ……って、ワイバーン!?」

「そうだ。馬は雪原を上手く走れないし、雪鹿は速度が遅い。ワイバーンがラヴィーナの中でもっとも早く移動できる生き物だ」

「なるほど!」


 たしかに雪深い地域では雪原を走るより、空を飛んだほうが早いのだろう。

 ちなみにワイバーンはイグナート様がラヴィーナの地で保護した個体だという。


「ワイバーンの子はよくいるのですか?」


 野良猫を保護するような口ぶりだったので、ついつい聞いてみた。


「いいや、ワイバーンが突然、執務室のガラス扉を破ってやってきたのだ」


 なんでも魔物に追われていたらしく、傷だらけだったという。


「傷口から推測するに、私が討伐した魔物に襲われたに違いなかった」


 魔物を倒したイグナート様ならば助けてくれるだろう。

 そう思って飛んできたのだろう、とイグナート様は判断したのだとか。

 当時、ワイバーンは子どもだったというが、大きさは四フィート十一インチ(※約一メートル五十センチ)ほどだったという。


「窓ガラスだけに留まらず、壁も突き破ってくれた」


 傷口も開いてしまいそうなくらいの、決死のダイブだったのだろう。


「ただワイバーンの傷を治す方法なんぞ知らないから、傷口を洗って餌を与えることしかできなかった」


 しかしながらワイバーンの回復力は高く、数日看病しただけで元気になったという。


「数日で駆け回るようになり、一ヶ月後には飛び回れるようになった」


 ついに全快し、自然に帰そうとしたようだが、ワイバーンは何度も何度も屋敷に帰ってきたという。


「このお屋敷を、自分のお家だと認識してしまったのですね」

「そのようだ」


 イグナート様はワイバーンに〝スノー・ハリケーン〟と名付け、使役することに決めたという。

 今ではイグナート様を背中に乗せ、ラヴィーナの空を元気いっぱいに飛んでいるようだ。


「私も乗せてくれるでしょうか?」

「わからない」


 スノー・ハリケーンは基本的に、イグナート様にしか懐いていないらしい。

 さらに、イグナート様以外の人を乗せようとしたこともないようだ。


「もしも難しい場合は――」

「お留守番ですね」

「いいや、貨物として乗せたらなんとかなるだろう」

「な、なるほど~」


 やり過ぎなくらい防寒をしっかりしたほうがよさそうだ。


「空の上は信じがたいほど冷えるからな」


 ニニとノンナさんに用意を頼むという。

 そんな話をしていたら、朝食が運ばれてきた。 

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