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第三話 夕暮れの模型店

第三話です。蒼太の前に、新しい人物が現れます。

美少女――ですが、ちょっと変わった子です。


次の日の放課後。


僕はまた模型店に来ていた。


昨日のレースのことが、ずっと頭に残っている。


コースアウト。


一瞬で終わったレース。


そして、あの少年の言葉。


『軽すぎる』


僕は店の奥の作業スペースに座った。


ミニ四駆を机の上に置く。


窓の外では、夕方の光が少しずつ柔らかくなっていた。


模型店の中は静かだ。


遠くでミニ四駆が走っている音だけが聞こえる。


ウィィィィィン――


僕はドライバーを回した。


前のパーツを外してみる。


祖父の言葉を思い出す。


『速さだけでは勝てぬ』


僕は小さくつぶやいた。


「でも、どうすればいいんだよ」


そのとき。


「それだと、また飛ぶよ」


後ろから声がした。


僕は振り返る。


知らない女の子が立っていた。


黒髪。


少し長い髪。


夕方の光が、髪に少しだけかかっている。


たぶん、同い年くらい。


僕は言った。


「え?」


女の子は机の上のミニ四駆を見ている。


「重心が前すぎる」


「え?」


「このままだとカーブで飛ぶ」


僕はミニ四駆を見た。


それから女の子を見る。


「わかるの?」


女の子は少し笑った。


「ミニ四駆好きだから」


そう言ってマシンを持ち上げる。


軽く指でバランスを見ている。


「ここ」


前のローラーを指さす。


「少し軽くして」


「その代わり後ろを重くする」


「そうすると安定する」


僕は少し驚いた。


「そんなこと考えたことなかった」


女の子は少し恥ずかしそうに笑った。


「ごめん」


「勝手に言って」


僕は首を振る。


「いや」


「すごいよ」


女の子は少し照れた顔をした。


そして手を差し出した。


「葵」


「私の名前」


僕も言う。


「蒼太」


握手する。


葵の手は少しだけ冷たかった。


葵は言った。


「昨日のレース見てた」


「え?」


「コースアウトしたでしょ」


僕は苦笑した。


「見られてたか」


葵は首を振った。


「でも」


少し間をおく。


「惜しかったと思う」


僕はミニ四駆を見た。


「本当に?」


葵はうなずく。


「ちゃんと直せば速くなる」


そして、少し楽しそうに言った。


「ミニ四駆って面白いんだ」


「少し変えるだけで」


「走りが全然変わる」


僕は思った。


この子、本当にミニ四駆好きなんだな。


葵が言った。


「もう一回走らせてみる?」


僕はうなずく。


「うん」


窓の外では、空が少しずつ暗くなっていた。


このとき僕はまだ知らなかった。


この出会いが。


僕のミニ四駆の世界を、大きく変えることになるなんて。

第三話を読んでいただきありがとうございます!


蒼太の前に現れた、ミニ四駆に詳しい女の子「葵」。彼女はどんな人物なのでしょうか。


次回は「祖父と葵、まさかの遭遇」です。


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