第二話 はじめてのレース
第二話です。
蒼太、はじめてのミニ四駆レースに挑戦します。
しかし、現実はそう甘くありません。
模型屋の扉を開けると、音がした。
ウィィィィィン――
モーターの音。
思っていたより大きい。
店の奥にはミニ四駆のコースがあった。
青と赤のコースが重なっている。
まるで小さなジェットコースターみたいだ。
その上を、マシンが走っている。
ウィィィィィン!!
速い。
家で走らせていたミニ四駆とは、まるで別物だった。
「すげーだろ」
健太が言う。
僕はうなずいた。
「うん」
コースの周りには、同じくらいの年の子が集まっていた。
みんな自分のミニ四駆を持っている。
少しだけ、緊張する。
ポケットの中のミニ四駆を触った。
祖父の言葉が浮かぶ。
『速さだけでは勝てぬ』
僕は小さく笑った。
「さすがにそれはないよな」
「初心者レース、始めます!」
店員さんの声。
僕はコースの前に立った。
マシンを置く。
手のひらが少し汗ばんでいる。
健太が言う。
「緊張してる?」
「ちょっと」
店員さんが手を上げた。
「レディー……」
一瞬、店の中が静かになる。
「ゴー!」
僕はミニ四駆をコースに置いた。
ウィィィィィン!!
マシンが走り出す。
ストレート。
思ったより速い。
(いけるかも)
そう思った瞬間。
ガンッ!!
カーブでマシンが弾かれた。
次の瞬間。
コースの外に落ちていた。
「……あ」
レースは終わっていた。
一瞬だった。
僕はミニ四駆を拾い上げた。
少しだけ、恥ずかしい。
コースではレースが続いている。
その中で一台。
黒いマシンが走っていた。
ウィィィィィン!!
他のマシンより、明らかに速い。
そのままゴールする。
「また一位か」
誰かが言った。
僕はマシンの持ち主を見た。
少し背の高い少年。
腕を組んで、コースを見ている。
健太が小さな声で言った。
「あいつ速いんだ」
「静岡の大会でも勝ってる」
少年は僕の方を見た。
そして僕のミニ四駆を見る。
少しだけ笑った。
「初心者?」
僕はうなずいた。
「うん」
少年は言った。
「そのセッティングじゃ勝てない」
「え?」
「軽すぎる」
僕は少し驚いた。
祖父と同じことを言った。
少年は続けた。
「ミニ四駆は速いだけじゃダメなんだ」
少し間をおく。
「バランス」
それだけ言って、コースの方を見た。
僕はミニ四駆を見つめた。
軽い。
確かに軽い。
店を出ると、夕方の風が吹いていた。
少し涼しい。
僕はミニ四駆をポケットに入れた。
祖父の言葉が浮かぶ。
『兵を知れ』
僕はつぶやいた。
「もう一回、作ってみるか」
空は、少しずつ暗くなっていた。
第二話を読んでいただきありがとうございます!
蒼太の初レースはまさかのコースアウト。
そして強そうなライバルが登場しました。
次回は
「祖父の兵法セッティング」です。
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