第2話「放課後と金の鶴。」
放課後の教室って、ちょっとだけ特別だ。
誰もいない教室に、夕日が差し込んで、机の影が長く伸びる。
さっきまでのざわめきが嘘みたいに静かで、チョークの粉の匂いだけが残ってる。
僕は宿題のプリントをするため、ひとり残っていた。
……のはずだった。
「……あれ?」
隣の席に、まだ人がいた。
朝、消しゴムで塔を建築してた女子だ。
静かに座って、かばんを開けて、何かを取り出している。 消しゴムか?
いや、違う。今回は違う。
……え、折り紙?しかも金色?
なんか、めっちゃ光ってる。
「……それ、何してるの?」
「折ってる」
「いや、それは見ればわかる!何を!?目的は!?金色の折り紙って何!?」
「……鶴」
「鶴!?なんで放課後に!?しかも金!?縁起よすぎない!?」
彼女は、無言で折り続ける。
机の上にはすでに3羽の金の鶴。
しかも、めちゃくちゃ精巧。プロか?
「……なんで鶴?」
「なんとなく」
「なんとなくで金の鶴折れる人、初めて見たよ!?」
彼女は、4羽目を完成させて、そっと並べた。
机の上に、金の鶴が4羽。
その並びが、妙に整っていて、なんか神々しい。
僕は、プリントを開いたまま、ペンを持つ手を止めた。
気づけば、真剣に鶴を折る彼女のことを目で追っていた。
「……木戸くん」
「はいっ」
「さっきから、ずっと見てる」
「いや、それは……その……鶴が神々しくて……」
「私の顔に何か憑いてる?」
「憑いてない!たぶん!いや、憑いてたら金の鶴が浄化してくれる気がする!」
彼女は、ふふっと笑った。
その笑顔は、金の鶴よりもまぶしかった。
いや、比喩じゃなくて、夕日が反射してほんとにまぶしかった。
「ふふ、木戸くんって面白い事言う人だね」
あなたがそれを言う!?
「そ、そうかな?」
「佐々木」
「え?」
「名前、まだ言ってなかったよね。よろしくね、木戸くん」
そう言って佐々木さんは、もう一度ふふっと笑った。
その笑顔に、僕はいっぱつで持ってかれたんだ。
その瞬間、僕は思った。
あれ。これって、もしかして――
……いや、まさか。
でも、たぶん。
いや、やっぱり。
この日から僕は、佐々木さんのことが気になってしょうがない。




