第5話 やったね! な推しとの会話。
ついに、悪役令嬢様の登場です!
「聖女様、殿下らが無理にご昼食にお誘いしましたために、御身がめまいを起こされたと伺いました。ご血色はよさそうですね。学院常駐の医師殿が、王子殿下たちが聖女様のおそばから離れないと、私のもとに直接伝えにいらしてくれたのです。婚約者として、平にお詫びを申し上げます」
常駐医師さん、ナイス配慮。ありがとう!
それにしても、アントラサイト様。
ご尊顔が、お声が。麗しい。
「アントラサイト様、恐れ多いことでございます。体調はおかげで落ち着いております。私に、様、などは必要ございませんし、むしろ、御身のご婚約者様、ご友人様たちとの不適切な距離につきまして、この聖女コーパル、伏してお詫びを申し上げます」
お詫びは真摯に。聖女も社会人も、みな同じ。
そう思ったら、噛みそうな言葉がしぜんに出てきた。
聖女ちゃんの記憶、便利。
私の語彙力の高さ、これも、聖女ちゃんのおかげだね。
ほんとうに伏そうとしたのだけれど、美しい手で遮られた。
いい香りがする。
練り香水とかなのかな。まさか、天然もの?
「聖女様のお心を煩わせましたこと、誠に申し訳ないことでございます。むしろ、婚約者たちを止めることができませぬ私共の不調法。婚約者全員を代表してお詫びを申し上げます。聖女様は聖教会からの聖女認定をお受けになられて、未だ半年ほど。にも拘わらず、勉学と聖教会のご講義にも務められ、素晴らしきご姿勢に存じます」
……感激。
アントラサイト様、聖女ちゃんのこと、こんなに分かってくれてたんだ。
ああ、我が友、スレ民。
私、今すごく、書き込みをしたい気分だよ。
異世界に届け、私の思いよ。受け取って、コーパルちゃん。
『公爵令嬢よ。其方の気高き意思、聖女が聖獣たる我が認める。どうか、その気高き心根のまま、聖女のよき友であってほしい』
「せ、聖獣様! 守護聖獣様のご存在に気付けませぬこの不肖の身、お許しくださいませ!」
おんおん、最高のタイミング! 気配に気づくアントラサイト様もすごい!
『我は、聖魔力を控えておった。感知せし、其方の聖霊王様への深き敬意。むしろ、褒めてつかわす』
「誠にありがたきお言葉、受け堪りましてございます」
『すごい……おんおん、聖獣様っぽいじゃん!』
『やればできるんだおん』
フワフワもふもふ、かわいいのに威厳あり、ってすごい。
おんおん、なんだか、毛づやもよくなってない?
『聖女であるあなたが、喜んでるからだおん。聖魔力が高まっていて、それがおんおんの更なる力にもなるんだおん』
そうなんだ。なんか、ほんとに守護聖獣って感じだね!
『ほんものだおん』
『だね』
そう、おんおんは、ほんとにほんもの。
「恐悦至極に存じます」
そして、恥ずかしがっている悪役令嬢アントラサイト様は……ひたすらに、尊い。